書評 「憚りながら」

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憚(はばか)りながら/後藤 忠政
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売れている話題の本を読む。

父が購入。
後藤組組長の半生記である。

引退し得度した後藤組長の名前は知っていた。

本を読んで、しびれた。

誰にも媚びず、
信念を曲げない姿勢。

昭和を彩る政商やフィクサーに可愛がられたのも、よく解る。

若い者の面倒はしっかり見る。
こんな人の下で働ければ、様々なことが学べると思う。

一番好きなのは、第六章 「生涯の友・野村秋介」。

野村秋介の自決の後の場面で泣いた。

野村秋介の辞世の句、前から好きだったけど、この章を読むと、

なお深みを増す。


「俺に是非を説くな 激しき雪が好き」

そして、後藤組長はこの辞世の句を背中に刺青として彫っている住職のもとで、

得度する。


野村秋介が惚れ込んだ住職、
野村秋介の句を自らの躰に残す住職。

真の友達って凄まじい。

わたしも薄っぺらい人間関係なんて必要ないけど、より必要ないと思えた。

生涯の友と言える人がわたしには二人いるし、掛け替えなく大事だから。

読み終えて本を閉じようとした刹那、

「本書の印税は、その全額が高齢者福祉及び児童福祉のために寄付されます。」と

小さな細い字で記されていた。

唸った。

筋が通った生き方に。

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先日、図書館で買おうとしていた本があった。
瀬戸内寂聴さんの評伝。齋藤愼爾作。
最近、瀬戸内さんは、御年八十六歳でケータイ小説に挑戦したらしい。

瀬戸内さんの評伝は、
「瀬戸内寂聴にとって、生きることは、すなわち書くこと、愛することであった」と始まる。

瀬戸内さんの小説の中では、出家する前の瀬戸内晴美時代の「夏の終わり」が好き。
高校生の頃に読んで、作家の愛人である女主人公が、若い恋人に逢いにいくの。作家が部屋に来ているから、銭湯に行く嘘をつき若い恋人の部屋に走る。つかのまの逢瀬。髪をぬらして銭湯に行ったふりをしてまで、逢いにいく。
わたしは大人ってすごいなと思った。
そして何で愛人と別れてから、若い男と付き合わないんだろうと。素朴な高校生の疑問。
そして、この小説が瀬戸内さん自身の話に近いことを聞き、またびっくり。
のちの作品にも、女主人公を軸に、愛人の作家、若い恋人のトライアングルが描かれる。

瀬戸内さんの作品で、評伝ものも好きである。「かの子攪乱」では芸術家の岡本太郎のお母さんの岡本かの子の人生を、「美は乱調にあり」では、関東大地震のさなか殺されたという説がある大杉栄の妻の伊藤野枝の人生を教えてくれた。

もう一度、今の年で瀬戸内作品を読み返したくなった。
高校生のわたしとは違う感想だろうな。そして、一回は岩手のお寺で開催している瀬戸内寂聴尼の法話を聞きたい。


寂聴伝―良夜玲瓏/齋藤 愼爾
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わたしは本が好きだ。壁に当たると本の海に溺れる。本の神様は、いつもわたしに合う本を与えてくれる。ずしりずしり、恋という名の熱病にとらわれたわたしは、煙草を一服するかのごとく、一呼吸する。煙草は今の社会では問題かもしれないが、わたしのため息のかわりだ。ため息ばかりつくと、重いから煙草で、カモフラージュする。したり顔してるくせに、どっかぎりぎりだから。こぼれ落ちてしまう。花のように、鳥のように、歌じゃないが、やや揺れる。

久しぶりに江國香織の「ウエハースの椅子」を再読。例えば人には好きな小説だけど、逆立ちしても書けない世界ある。わたしには高村薫のような社会派ミステリーは到底、創作できない。だけど、本を読み終わり、ああこんな世界を構築してみたいと思ったのは、この「ウエハースの椅子」かな、今は。

この本は三十八歳の独身の主人公が、家庭ある優しい恋人の訪問や一緒の甘いバカンスを過ごし、あとは、ただ待ちわびる話だ。平気がる主人公に、ふいに「絶望」がやってくる。「絶望」は主人公に話しかけて、おびやかす。

好きな箇所は主人公の彼女の独白。本を読む理由について。

「私もたくさん本を読むが、いい読者とはいえない。読む本がなかったら、恋人のいない時間をどうやって過ごしていいかわからないから読むだけだ。だから、夜、恋人が帰ったあとに、読書する。あるいは恋人の現れない昼に」

何となくわかるような、わからないような。まあ、わたしは寝る前と移動中に本を読むのが習慣だ。
まるで本の海に沈んでいくように。底なし沼みたいに。
何も考えたくない刹那☆せつな☆。わたしの趣味の登山や旅も、
次の行き先やご飯をまず考える。
頭がとてもシンプルに変換する。
まあ、空き時間に課題みたいな考えごとを転がすと、日常にはない発想が浮かんできたりする。そこが醍醐味☆だいごみ☆かな。がんじがらめの日常から想いから逸脱できるから。わたしは休憩する。逃げるんじゃなく小休止。容赦なく時は流れ、人の気持ちが思い通りにならないことを知っているから、羽休みかもしれない。これから、少し本の海へ。

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聞きたくもない噂というものは、
世の中にある。
ここは狭い街だ。

一昨日、わたしの好きな人は他の人とデートしているよ、と教えてくれたお客さんがいた。

まあ、これで、どうしようもなくなって、わたしは冒険にでるんだが。

今日はお店のスタッフから、好きな人の相手の具体的な名前ある噂聞く。まあ、噂。火のないところに煙は立たないと申しますが。だけど、その具体的な名前の女の方は、何度かうちの店に飲みにきた。知っているし、接客したこともある。その時は、彼女はご機嫌うるわしくなく、いきなり自分のグラスの酒をわざと倒したのである。これはリアル。

だけど、今はわたしの一方的な想いであり、付き合ったわけでもない。わたしだって、お客さんと飲みに行くから。それについては、別にいいが。
二十代、三角関係の恋愛で、最初は若いし勢いあったから良かったが、あとで苦しんだ。もがいた。最初は彼女いるなんて知らなかった。夜に電話できないとか、土日会えないとか、もう無理だ。昼間の逢い引きばかりで。まあ、好きな想いが越えたけど。その三角関係の一つの矢の女の人も知り合いだった。
もつれてくるのかな。久しぶりに人を好きになり、自分の求愛のパターンが、十代の初恋の時から、変わってないことに苦笑い。駆け引きできない、待てない、たまにピストルの暴発みたいに、溢れ出す。性急なんだ。だけど、好きな人に口説かれていると感じたわたしは、錯覚だったのか。

川上弘美の名著「センセイの鞄☆かばん☆」(文春文庫)をそんな中たまたま再読。主人公のツキ子さん、三十代後半、未婚。なじみの居酒屋で高校の恩師で妻に蒸発されたセンセイに再会。二人は居酒屋で行き会えば、一緒に飲む。この居酒屋で飲む会話、つまみ、空気が大好きで、晩酌しながら、読むと最高な一冊。
本の中のツキ子さんはセンセイにひかれていく。だけど、センセイはなかなか自分の思い通りになってくれない。だんだんツキ子さんは、酔いつつ、たまらなくなる。どっかの恋と似てますね。
酔って溢れる思いを伝えたいツキ子さんは、

「だだっ子ですから、わたし。そう言いながら、わたしはセンセイの皿の上にのっている鮎の骨をさわった。やわらかく骨はたわんだ。センセイはわたしの肩から手をはずし、ゆっくり杯を口に運んだ。わたしは一瞬センセイにもたれかかった。それからすぐに離れた」

本より引用。わたしももたれかかりたい。噂を教えてくれたお客さんはわたしに言った。確かに。「あの人はもてるからやめなよ」と。三角関係の昔の男ももてる方でした。繰り返しはいやだ。落ち着きたい、まったりゆっくりしたい。人の想いってもつれるね、そんな初夏。切ないな。どうしようもないな。静観しよう。おとなしく。少しは。冷水浴びた夜でした。

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