「全国三千八百万、駐車場ファンのみなさまコンニチハ。今日も、全国駐車場ウォッチの時間がやってまいりました。いつものように、世界の駐車場の極楽と地獄をつぶさに見聞された、おなじみパーク・イーハンさんとご一緒にお伝えしてまいります。さてさて、実は実は、今週もまた長崎からなんですが、さっそくですが、イーハンさん長崎にこだわりがありますねえ」

「ここ、長崎市は、日本の駐車場事情の縮図とも言えると思うんです。坂の街長崎といいますが、本当に入り組んだ細い細い道が、バイクがやっとという幅の小道が、葉脈のようにからみあっていますからね。車をどこに停めるか、どこに駐車するか、マイカーをふだんどこに置いておくかは、大きな難題のようですね」

「なるほどね。ところで、今日はこのところ急激に増えてきたコインパークにやってまいりました。このコインパークもいくつかタイプがあるようですが」

「はい、数種類のタイプがあります。ですが、長崎では、このところ車体の下のプレートの片方が斜めにあがるタイプのものが多いようですね」

「現在、私たちの目の前にあるのが、そのタイプの駐車場です。おやっ、イーハンさん。どこかで猫が鳴いてませんか」

「たまに、まぬけな猫が、運悪く、上がるプレートと車体の間にはさまれることがあるんです。どこかに、いるんじゃないですか、日陰を幸いに、駐車したばかりの車の下を抜けようとした猫が」

「おお、イーハンさん、あの白い軽ワゴン車の下で、猫が暴れています」

「まったく、長崎は車より猫が多いんだから。ちょっと助けてきます。引きずりだせるでしょう」

「ああ、なんて心優しい方なんでしょうか、イーハンさんは、車のしたにもぐりこんでしまいました。でも、よく考えてみると、駐車番号が地面に書いてあるんだから、幾らかお金を払えは゛、プレートはざがるはずですね。さっそく、やってみましょう」

「さて、お聞きのみなさん、わずか三百円でした。今、領収書がでます。あれっ、イーハンさんの叫び声がします。どうしたんでしょう。ああ、ああ、なんてことだ。イーハンさんが、下がったプレートに手を挟まれています。しかも、顔から血が・・・。ああ、どうやら、猫に、ひっかかれたようです。ちょ、ちょっと待ってください、すぐにプレートを上げますから。えーとえーと。おお、なんという幸運。このワゴン車の持ち主は、コインパークなら大丈夫だろうと、キーをさしこんだままです。一回駐車スペースから出して、もう一度入れれば、プレートが上がるはずです。われながら、このとっさの機敏さ。」

「エンジンをかけて、さあ出しますよ・・・。あああっ、イーハンさんの恐ろしい叫び声が、再び周囲に響きました。どうしたんでしょうか。あれっ、ああ、そうか、イーハンさんの手がプレートの下に挟まったまま、車が、乗り越えてしまったってことですか。申しほわけありません。本当に、なんとお詫びしたいいやら。すぐに、救急車を呼びますから。えっ、なんですか、ああ、もうすでに自分の携帯で、呼んでるというんですね。それでは・・・と、この車、早く元に戻さないと・・・。えっ、何か、言いましたか。よく聞こえません。イーハンさんの声が、かすれています。気が遠くなっているんでしょうか。何か・・・私に言ってます。行けってですか、行ってしまえと言ってるんですか・・・。えっ、違うっ、ああそうですか、死んでしまえですか・・・」


国際昆虫会議①

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 ある夏の夕暮れ時、わしがリビングの窓ぎわで、ビールを飲んでいたら、間抜けなコガネムシが、すごい勢いで飛んできて、天井と壁に衝突したあげくに、ビアグラスの中に、自分からドボン。その奇跡的だなダイビングに感動したが、おぼれるのを見たくなくて、人差し指を入れると、爪のさきにしがみついてきた。

 じっとそいつの動きを、眺めていると、指を這いのぼってきて、手の甲にあがってきた。そこで、羽根を広げたので、また飛んでいくのかと思った。そして、助けてもらったんだから、礼ぐらいは言ってゆけよな、と思ったら、コガネムシが「アリガトヨ」と、言った。

 おおっ、わしは虫の言葉が分かるのだ。わしは、稀有な能力をある日突然、神さまにさずけられたらしい。ひょっとすると、鳥類や、哺乳類とも、話ができるかもな。

 すると、コガネムシが、「おいっ、おっさん、何か誤解してないか。あんたが、おれの言葉がわかるんじゃないぞ。おれが、人間の言葉が話せるんだ」

 腰をぬかすほど驚いた。わしが犬語を話せる日がくることがあっても、こんな虫ごときに、人間の言葉が分かる日がくるとは、夢にも思わなかったからな。

 わしは、このちっぽけな虫けらにむかって、「どうしてだ、どうしてお前なんかに」と、つぶやいてしまった。

 前足を、すりすりしながら、その虫けらは答えててくれた。

 「努力はしてるんだよ、おれだってな。なにしろ一年ちかく日本語学校に通ったんだから。すこしは話せるさ」

 わしの目玉は、二センチくらい飛び出していたろうな。これは悪夢に違いない。特売品のビールは、わしには合わないらしい。わしは、悪夢の塊にしか見えなかった、金色のコガネムシを、ひと吹きで窓の外へ、飛ばそうと、   手を外へのばして、頬を膨らませた。

 そのとき、かれが、こう言うのが、はっきりと聞こえたのだ。

 「乱暴はやめなよ。脅かして悪かったな。あんたの気持ちも分かるからよ。まあ、おれの話も聞け。お礼といっちゃあなんだが、とびきりの極秘情報を教えてやるから、今夜のとこは、かんべんしてくれ」

 わしはも手をひっこめた。

 かれは、こう言うのだった。「よく聞けよ。イエ蚊族とヤブ蚊族が手をむすんだんだ。つい最近のことだ。これは、大戦争の狼煙があがったことを意味してるんだ。なにしろ連中のメスは、過激だからな。いいか、覚悟しろよ。近いうちに、世界中の昆虫が団結して人間に襲いかかる計画があるんだ。そのための会議が近いうちに開かれることになったんだ。エライコッチャデ」

余命三日

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ある男が風邪ぎみで、町医者に行った。

診察室にいたのは、顔色の悪いふつうの医者。かれのふつうの診察、念のためのレントゲン、目を診て、舌を診て、それからふつうにこう言った。「あなたの余命は三日です」

「そんなことあっかよ。こんなに元気じゃないか。早く風邪薬だせよ」

こんなヤブ医者、聞いたこともないぞ。さっさと帰るにかぎる。診察室を出るとき、医者がおれに声をかけた。「三日したら、また来なさい」

暗示ってあるのかもな。三日めの朝、妙に気分が悪いので、一応、あのヤブ医者のところへでかけた。

めまいをおさえて、ようやくたどりついた、あの病院。病院の玄関に休診の貼り紙。出てきた中年おばさん看護師にきいてみた。「どうしたんだ、ここの医者」

「あら、患者さんだったんですか。ここの先生、とうとう昨日の晩に亡くなりました」

「そうか、おれに余命三日だなんていうから、気分が悪くなっちまったよ」

「ああら、たいへんだわ、あなた、よっぽど運がわるい人ね」

「なんだよ、それ」

「先生は、世界的に有名な、シケダ症候群の発見者だったのよ。潜伏期間が十年で、発症したら、一週間で死んじゃうっていう、恐ろしい病気らしいわよ。じつは先生自身が研究中に感染してたみたいで、その特効薬を、もうすぐ完成するはずだったのよ。でも自分にも間に合わなかったようで、本当にかわいそうに」

「で、おれとどう関係があるんだ」

「あら、だ゜から、あなたも感染していたのよ、そしてすでに症状が出ていたんじゃないの。そして先生は自分の余命が三日だと知っていたから、あなたも、たぶん、それくらいだろうって、診断したんじゃないかしら。先生らしい冷静な診断だわね」

「お、おれはどうなる」

「今夜あたりが峠ね。どうしますか。ここのベッドにしますか。それとも自宅?」

                                                        (シケダ=蝉)