著者: 角田 光代
タイトル: All Small Things

面白い本ですね。これ。

ごく短い短編がたくさんはいってます。

「彼氏はできたものの、全然ときめかない。こんなんでいいわけ?

みんなどんな恋愛してるの?どんなデートしてるの?」と

主人公のカヤノが思うところから始まり。

その質問が少しずつ形を変えながらいろんな人に伝わっていく。


恋愛って誰もが経験することだけど。

これが普通とか、常識とか、当たり前のことは何一つない

その二人が、どんな気持ちで行動したか、何を話したか。それだけだって

人の数の何億倍もパターンがある

だから、どんなシーンでもどんな言葉でも、本人にしかわからない

幸せな気持ちや、愛しい瞬間があるのだ。


その伝言ゲームのように少しずつ形を変えながらたずねられる

どんなデートだった?にまつわる話は。

片思いだったり、片思いすら気づかれてなかったり、不倫だったり。

ほんと様々。

でも、どの話も共感できる

自分が同じ体験をしたことはなくても、似たような体験だったり

似たような心境になったことがあるものばかり。


私は明太フランスの話がよかったな。


私は、天気のいい日にデートの約束があると

かなりの確率で相手に、公園でお昼を買って食べようと誘うのだ(笑)

なので、その話を読んだ時に、わたしか?!なんて思っちゃった。

彼女は、たまたま公園でパンを食べたわけだけど

「大好きな人と天気のイイ日に公園でパンを食べる」というシチュエーション

が、私にとって幸せな図式の定番みたいになってるのかも?


勿論、いつもウキウキしながらパンとビールを持って

公園にいって食べてみると、思ったより風が冷たかったり

周りで遊んでる子供がトタバタうるさかったり、思いのほかパンが

固かったり・・・。

だいたい盛り上がりにかけて、「もういこっか。」となるんだけどね(笑)


真夏の暑い日に化粧なんかドロドロにおちて、「暑いね」しか

会話しなかったようなデートも、今思い出すと楽しかったように

思える。

なんでもない一日でも、絶対に何かはしてる、何かは感じてる。


最後にカヤノの彼へと、その質問がまわっていくのだ。


彼は彼女が不満に思ってる、何もドラマティックでない、ときめきもない

そういう日常をとてもイトオシク思っている。

そこがよかった。

そんな大切なことをわかってる彼と付き合えてるカヤノは

幸せ者じゃないか。

自分を全面的に肯定してくれる人。こんな貴重な存在はいない。