すごい講演会 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



(熱弁ふるうアブエライシュさん)



(左手は、国連パレスチナ難民救済事業機関の清田明宏医師)

(右手は、2人を招へいした鎌田實さん)




こんなすごい講演会、聞いたことがない。

ガツーンと頭をなぐられたような迫力ある講演会。

鬼気迫るものがあった。

すべて実際にあったことだから説得力がある。

パレスチナ人の医師、イゼルディン・アブエライシュさんの講演会。

(2月19日 中野ゼロホール)


アブエライシュさんは、イスラエルの病院で、

パレスチナ・イスラエル双方の人の診察に当たってきた産婦人科医だ。

「新しい命の誕生は希望だ。

 赤ん坊の泣き声に国の区別はない」と語る。

仕事にも家庭にも恵まれていたアブエライシュさんを悲劇が襲う。


2008年9月16日、妻を白血病で亡くした。

「この世は終わったと思った」
そのわずか4ケ月後の2009年1月16日、

イスラエル軍のガザ侵攻によって自宅が爆撃され、

3人の娘と1人の姪を一度に失った。

娘は、20歳、15歳、14歳。

見分けもつかない遺体をこの目で見た。

「妻と娘を奪われた『16』という数字を忘れることが出来ない」

アブエライシュさんは、

これだけの悲劇に直面しながらも、

「憎まない生き方」を貫く信念の人だ。

アブエライシュさんは、医師らしい例えでこう話した。

「憎しみは毒だ。健康であるには、憎しみを近寄せてはいけない。

 憎しみは、人を麻痺させてしまう。

 憎しみは、慢性的に自分を壊すガンのようなものだ」

こういう心境になれるのは、強い意志がなければならない。

「これは神が与えた試練だ。何か意味のあることだ」

「加害者を憎み続けていても何も生まれない」

「憎しみに溺れそうなときも、前に進む努力をしなければならない」

「亡くなった娘たちに問われている気がする。

 お父さんは、私たちのために何をしてくれているの?」

「世界がより良い場所になるよう尽力しよう」

そう考えたアブエライシュさんの結論は

「アイ シャル ノット ヘイト」

このフレーズを彼は何度も何度も繰り返した。

このフレーズは、会場の聴衆の胸にストンと入ってきた。

ことばの壁など存在しなかった。

想いの強さは、すべてを超越する。


この日、鎌田實さんに頼まれて開演前の前座を務めた。

TBSラジオ「土曜ワイド」の永六輔さん、外山恵里アナウンサー。

文化放送「日曜はがんばらない」の鎌田實さん、ムラカミ。

この4人で、長蛇の列を抜け出て、会場に入ってきたお客さんに

サービストークをした。

その後、客席で、アブエライシュさんの講演を聞いた。

講演を終えたアブエライシュさんと握手をした。

それは、大きくがっちりした手で、とても力強いものだった。

メッセージをきちんと受け止めてくれたかという確認を求めるような

感じだった。バトンを渡されたような気がした。




(車いすで颯爽と登場 永六輔さん)

(前座4人衆)