表題の「張りつめた弦(つる)は切れやすい」というのは、吉野太夫(たゆう)が宮本武蔵をさとす有名な言葉ですが、





実は、これ、漫画家の梁山泊「トキワ荘」の通勤組の漫画家の“つのだじろう”先生を説得するためにも用いたとされているそうです。





確かに「張りつめた弦(つる)」は切れやすいです。


真面目は大切だけど、四角四面に物事を考え、柔軟性のない人間ってアートには向かないですよね。


またそういう先生に習っているってのも悲惨ですよね。





ひょっとしたら、どんな世界でも実際そうなのかもしれないけど…。





当時、つのだじろう先生は、超が何個もつく位の真面目人間で、もっというと、くそ真面目だったんです。


それは、育ちなのか、師事していた先生の影響かはわかりませんが…。





当時トキワ荘ではトキワ荘の人間を中心に新漫画党というグループを結成していまた。


つのだ先生もその一員でした。





ところが、その新漫画党の月例会では、ちっとも建設的な話をせず、馬鹿話が中心で、もっぱら、真面目?な話と言ったら映画の話くらいで、くそ真面目だった、つのだ先生は、作品の品評会やデッサン会をやろうと提案したのですが、誰も相手にしてくれず、党費で当時、出始めたテープレコーダーをまともな値段では買えないので、半額で買って、何をするかと言えば、くだらない放送劇を吹き込んだりして、ついに、つのだ先生も年下という立場だったけど堪忍袋の緒が切れて、





有名な「巻紙事件」に発展します。





巻紙に毛筆で書いた、まるで果たし状のようなものだったそうです。


主旨はこういう無意味な集会ばかりなら脱党するというもので、怒り、怒りの文面だったそうです。





そして、こういう時に、一番役に立つ人間がなんと当時、あまり社交的とはいえなかった藤子・F・不二雄(藤本弘)先生だったそうなんです。





何かでちらっと小耳にはさんだ事があるのですが、新漫画党の集会でも先生がボソっと一言、問題の本質をおっしゃるとその場がまとまるというか、そういう能力に長けていたそうです。僕としては、何となく納得できます。


特にSF短編集なんかを読んでいるとまたある意味、別な藤子・F・不二雄先生を見ることが出来ます。だけど、「ドラえもん」と全く違うというわけではなく、SFというところでは共通です。


歳を重ねると「ドラえもん」の見方も変わってきますよね。「こういう深い意味があったのか!!」とか新たに読み返すと深いんですよね。


とにかく、仲間内の信頼は絶大で、トキワ荘、随一の理論派だったそうです。だけど当時、編集者の対応は藤子不二雄A(安孫子素雄)先生に任せていたんですよね(笑)。





そんなわけで、つのだ先生への返事として、理論派の藤本先生に白羽の矢が当たります。


藤本先生曰く、無駄の効用」を書かれたんだそうです。


主旨としては、無駄にみえても、それが結局、血肉になっている。





当時、『宮本武蔵』にこっていた、つのだ先生は、「張りつめた弦(つる)は切れやすい」に感銘を受け、またそう自発的に感じたのか、みんながやっている、一見馬鹿げたことに見えることも、じつは漫画の勉強になっているんだと突如、改心?して、謝りにいったそうです。





しかし、藤本先生はその謝りにきたつのだ先生に対して、いよいよ乗り込んできたのか?と勘違いしてたそうです。まさかあんな手紙で改心?するとは思わなかったそうです。





その後、つのだ先生は、その反動形成なのか、一番、面白い人間になったそうです。





アートの世界でくそ真面目は敵ですね(笑)





(参考文献:トキワ荘青春日記 光文社 カッパノベルズ カッパドキュメントシリーズ)(絶版)





「無駄の効用」





僕は、これで思い出したのが、コメディアンの萩本欽一さんの発見による「世の中から間(ま)が無くなった。」という言葉を思い出しました。


「お茶の間」というのも現在にいたってはあるのかないのか…?





本来、商業施設の中で空間としての効用を発揮していた、場所に所狭しとお店が出来たり…。





また、スポーツも間のあるスポーツは敬遠されてきました(長すぎる間と言うのも問題ですけど…)。





えぇ、まぁ、ともかく、


人生は一度きりですから怠けるのではなく、楽しまなきゃ損だなぁと思いました。


メリハリってやつですかね?





あと「勉強」って言葉がありますが、あの言葉には無理を強いるという意味があるんです。


よく、お店とかで「勉強してよ」ってのがありますよね。あれがそうなんだそうです。





本来は学ぶという事においては、「学問をする」というのが正しい使い方なんです。


「学問する」の方が本質ですよね。「学問」といった方が楽しいですよね。





藤本先生と安孫子先生がお2人でトキワ荘の仲間にインタビューしにいった方の「トキワ荘青春日記」が絶版なんですよね。


是非、出版してほしいです。




トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…/藤子不二雄A



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