岩瀬昇のエネルギーブログ

エネルギー関連のトピックス等の解説を通じ、エネルギー問題の理解に役立つ情報を提供します。


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 来年後半に5%のIPOを予定しているサウジアラムコの社長Amin Nasser(ナセール)は、414日(金)ニューヨークにおけるコロンビア大学エネルギーサミットで講演を行い、近い将来石油の供給不足が発生するリスクがあると警告した。

 2014年からの価格下落により投資が約1兆ドル減少しているため、近い将来、必要とされる2,000BDの新規原油生産能力を追加できず、結果として、時期は読みにくいが、供給不足が発生する可能性がある、と指摘しているのだ。

この見方に筆者はほぼ異論がない。

ようやく回復の兆しを見せている石油ガス事業における資本投資は、小規模、短期サイクルの米国シェールに集中しており、中長期的な供給を支えるには不十分と考えられるのだ。在来型プロジェクトへの本格投資には、弊著『石油暴落の謎を解く』(文春新書、20166月)で指摘したように、価格水準がもう少し高いところで落ち着く様相を見せなければならないのだろう。

ナセールは「(石油市場の)方向は疑いもなく上昇傾向にある」と指摘している。

 

 Bloombergの記事(“Aramco CEO sees oil market close to balance despite US boom”)を読み、いま再びFT”Saudi Aramco chief warns of looming oil shortage” around 2:00am on Apr 15, 2015)を読んで、筆者はもう一つのことに考え込んでいる。

 サウジアラムコの国内外の精製販売能力をほぼ倍増し、現在の原油生産量にほぼ匹敵する1,000BDにまで拡大する方針だ、とナセールは語っているのだ。

 もし、世界中のNOC(国営石油会社)が自国の原油生産量に相当する精製販売能力を持つことになったら、彼らは再び価格支配権を握ることになるのだろうか。

セブンシスターズと称された大手国際石油会社が、1928年のアクナキャリー秘密協定締結以降、1970年代のオイルショック直前まで価格支配権を保持できた理由は、需要予測に基づき生産量をコントロールできたことにある、と筆者は見ている。

産油国は同じ方策と取ろうとしているのだろうか、いや、出来るのだろうか?

検討しなければならないポイントがたくさんあるので即断はできないが、考えてみなければいけない問題だろうな。

 

さて、と。

読者の皆さんには、当該FTの記事の要点を次のとおり紹介しておこう。

 

・これから何年間のあいだに(in the coming years)増加する需要と自然減退による能力減を補うために、新たに2,000BDの新規生産能力が必要だが「いま戻り始めている投資は、多くのものが小規模の、短期サイクルのもので、(2,000BDを)カバーするには不十分だ」。

・リバランスは進んでいるが、米国の稼働リグ数の増加およびシェールオイルの生産回復が始まっており、短期的に市場は供給過剰となっている。だが在来型の石油発見は、それ以前の4年間と比べると、この4年間には半減以下でしかない。大手石油会社が巨大プロジェクトに投資をするだろうとみなしてはいけない、「大型の新規生産能力(の追加)と投資は現実に遅れている」。その結果「いつごろになるかは予測困難だが」、あるタイムラグを置いて供給不足が発生するだろう、と彼は指摘している。

・さらにナセールは、価格はvolatile(変動しやすく不安定)だろうが、「(石油市場の)方向は疑いもなく上昇傾向にある」という。

・また彼は、これから何十年ものあいだ石油はエネルギーの中心的役割を果たす、として、予測しうる将来に(in the foreseeable future)石油需要がピークを迎えるという指摘は却下した。

・逆にサウジアラムコは、原油生産能力を増強するとともに、将来の国内外の精製販売能力を倍増し、1,000BDとすべく大型投資を行っている。

・また、シェルと米国におけるJVMotiva)関係を解消したあとも米国における投資を増強していくと語った。今年半ばには手続きがすべて完了する予定だが、サウジアラムコは米国最大の、テキサス州ポートアーサーのMotiva製油所を完全に傘下に収めることになる。

・さらに、同社は需要増加が見込まれる東南アジアにおいて、いくつかのJV協議を進めている、と語った。

・また、IPO関連作業は順調に進んでいる、と述べた。

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