岩瀬昇のエネルギーブログ ♯275 削減合意はOPEC終焉の始まりだ | 岩瀬昇のエネルギーブログ

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 我らがニック・バトラーがFTに極めて刺激的なタイトルの投稿をしている。“An accord that spells the beginning of the end for OPEC” と題する記事だ(Dec 2, 2016 around 1:00am Tokyo time)。これは、彼が「石油需要ピークは皆が思っているより早くやってくる」(弊ブログ#255「石油需要は5年以内にピークを迎えるのか」2016114日付参照)と考えていることを前提に読まないと理解しにくいものだ。なお、サブタイトルは “The cartel enforce this pact. The oil price will probably fall

 まずは、要点を次のとおり紹介しよう。

 

OPEC加盟国による今週の削減合意は、過去50年間価格決定力を保持してきた、世界で最も有力なカルテルだったOPECの終焉を象徴しているものになろう。このDealは、自らの無能さを認めたものだ。

1月から120BD減産するという合意は、世界の原油価格を約10%上昇させたが、まだ2年前の半分だ。

・投資家と消費者は何をなすべきか?

・まずは、値上がりが控えめであったことを考えるべきだ。このDealは、OPECが目指していると思われる6070ドルにまで価格を上昇させられるものではない。市場は、実行できるかどうかに疑問を持っている。イランは収入が必要になったとき、生産を制限できるだろうか? ロシアは、実際に30%生産削減を行うだろうか? 最後にロシアがOPECの生産枠に参加したのはいつだっただろうか?答えは、Neverだ。

・次に、在庫だ。IEAや他の独立系機関はこぞって、在庫が解消するには少なくとも1年、あるいはそれ以上かかると見ている。もしOPECの減産だけを考えるなら、在庫過剰は解消するかもしれない。だが、向こう1年の間に、ブラジル、カナダ、カザフスタンなどで新規の生産が始まり、世界合計の生産量は2016年より多くなる可能性がある。

・第3に、この価格上昇を生産維持および増産に結びつけようとして米いる米シェールがある。不吉な予言者(Prophet of doom)にも関わらずシェールは過去2年間強靭で、崩壊することもなく、コストは大幅に下がった。技術革新や生産性向上は世界中に広がり、生産量は増加するだろう。

・最後にリヤド(サウジアラビア)の見方がある。市場に原油をあふれさせ、競争相手を追い出し、サウジのシェアを維持するという戦略は失敗したのだ。

・次に何が来るか? 以上の理由から、今回のDealは不十分で、失敗することになろう。1月に行うことになっている減産は実行されないだろう。非OPEC産油国からなされた約束は、あまりにも曖昧で、ズルをするincentiveが大きい。OPECには、協定違反に対する強制力がない。価格は下落する、それもおそらくすぐに、だ。

・そうして、前任者よりははるかに現実的なファーリハにとって、真の選択肢(choice)が登場する。価格を70ドル近くに上げるために、サウジが、サウジのみが、100150BDの減産を1年か1年半以上続けなければならないのだ。

・カルテルには、痛みに耐え、市場をコントロールするために十分なほど生産を変化させる能力を持つスイング・プロデューサーが必要だ。

・(サウジが)過去になるべきだったが、今では経的、政治的に不可能かも知れない。弱体化している安全保障と経済の多様化に失敗しているサウジは、もはやそのような犠牲に耐えられない。

・もしそうだとすれば、現在の50ドルが天井になる。

・カルテルとしてのOPECは終わった。誰もがこの新しい現実に慣れなければならないだろう。

 

 ううむ。

 若干異論がある。詳細を書くスペースがないが、ニックは数年後には石油需要は減少すると見ているんだな。

 やはりポイントは石油需要ピークがいつ来るか、ということになるのかな。