- さようなら、と君は手を振った (Holly NOVELS) (Holly NOVELS)/木原 音瀬
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「さようなら、と君は手を振った」 木原音瀬
去年、一番最後に読んだか、今年一番最初に読んだかも?記憶が無いがそのあたりに読んで、感想をUPしないままであったはず。
なんでか?つーと、実はよく読み返していて主人公「啓介」に感情移入しすぎちゃっていたからなのさ。
★田舎から上京してきた同じ歳の従兄弟「啓介」。
なし崩しに面倒を見ることになった「誠一」は、気まずい思いで一杯だった。
10年前の夏、好奇心から抱いた「啓介」に夢中になり、「必ず迎えに来る」と云いながら、その約束を破ったからだ。
けれどそんなことは子供の頃のちょっとした遊び、気まずかったが悪いとも思っていなかった。
昔と変わらないイケてない「啓介」にうんざりしながらも、酔ったはずみでまたも悪戯のように「啓介」を抱く「誠一」。
身体だけの一方的で理不尽な関係を続けながら、優しく微笑むだけで何も云わない「啓介」に「誠一」はますます増長し・・・。
この話の登場人物はアタリマエな人だよね。
仕事も遊びもテキトーにの「誠一」もそうだし、「誠一」を翻弄する高慢女「マリ」もアタリマエ。
「誠一」は「啓介」と関係を持ちながら本命「マリ」と付き合うのに必死。
バカというか、阿呆というか、でも、オトコというイキモノ、いや人間というものはそうだよね。
「本命」以外には、冷たいというかけっこうそっけないものだ。
むしろ誰にでも優しい方がタチが悪い(苦笑)
献身的というよりも、ただただ受身である「啓介」が一番理解し難いと思う。
そうなんだ。「啓介」という男。
そうさ。はたして「男」というイキモノが、これほどまでに受身な心情でいられるのか?と疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えたんだが、ハタ!と気がついた。
「ああ『BL』というものは別に『男』を書いているわけじゃないんだった!」
こんなことを云えば「野暮」だってことはわかっているんだが、ワタシは「野暮天」なので、言わせてもらえば「BL」はけして「男」を描いているわけじゃなく、「恋愛」を書いているんだった!と。
そうだよね?
今更ながら思い当たった。
とくに「木原」はいろんな「恋愛のカタチ」を書いているので、「こういう恋愛をする人物はこういう感じの人じゃない?」ということなんだと思うんだがのう。
(もちろん「いろんな恋愛」を書いているとはいえ、彼女の好みの「恋愛のカタチ」は歴然とあるが)
ということで、「啓介」の心情もアリか・・・。
となんとなく納得。
読んでいる間中、妙に「啓介」にシンクロしちゃうのになぜだか拭えない違和感があって、もし「啓介」が「女」で書かれていたらこれほどの違和感は覚えなかったんだと思うんだよね。
まあ「女」という「イキモノ」が「受身」かどうかは一概には云えないが、「何も求めない与えるのみの愛情」を持ちやすい「イキモノ」ではあると思うしそれはちいと「母性」にも通じる感覚かもしれんのう、とも思ったのね。
まあ素直に感想を云えば。
「与えるだけの愛情に殉じようとした『啓介』のイジラシサに泣いた」
ちゅうことでしょうか?
うん。