脱税・申告漏れ日記

大阪の若手税理士が巷に流れる脱税・申告漏れ報道の裏側を分かりやすく解説します!


テーマ:
『神戸製鋼9億円所得隠し 大阪国税指摘 申告漏れ総額は17億円』
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110715/crm11071519480031-n1.htm
MSN産経ニュース 2011.7.15 19:44

『神鋼9億所得隠し、売り上げ過少計上…国税指摘』
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110716-OYT1T00080.htm
読売新聞 2011年7月16日00時43分

『神戸製鋼:9億円所得隠し 大阪国税局指摘』
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110716k0000e020014000c.html
毎日新聞 2011年7月16日 10時50分


売上高の計上方法の変更をせず、意図的に売上高の計上を低く抑える等して、法人税を脱税したとされる事案。
・大阪国税局の税務調査を受け、2010年3月期までの5年間で計約16億9000万円の申告漏れを指摘されたのは、大手鉄鋼メーカー「神戸製鋼所」(神戸市)。
・同社によると、完成まで複数年かかる輸出用プラント機器の製造をめぐり、法人税法に従い各年度ごとに売上高を分割計上。
・途中でコストダウンが予想され、売上高の分割計上額の見直しをしなければならなかったが、変更しないまま通常より低い金額の計上を続け、本来の金額との差額約8億円が売上高の過少計上となった。
・また、約1億円の所得について海外の子会社に移転して隠したとし、合わせて約9億1千万円が仮装隠蔽を伴う所得隠しとして重加算税の対象となった。
・この他、納入後にクレームがあった産業機械への対応費用約1億9000万円をめぐり、解決していない段階で経費計上するなど、軽微な経理ミスも約7億8千万円分あり、いずれも申告漏れの対象となった(過少申告加算税)。
・更正処分に伴う追徴税額は申告漏れ金額の大半が、赤字と相殺されたため重加算税を含め約1億6000万円にとどまった。→神鋼は指摘に従って7月中に全額納税するという。


子会社への所得付け替え、費用計上時期の誤り等もありますが、一番大きいのは工事進行基準による売上計算方法の誤りです。

工事の請負(製造及びソフトウエアの開発を含む。)については、法人税法上

1)着工から引渡しまでの期間が1年以上
2)請負金額(受注金額)が10億円以上
3)受注金額の1/2以上が引渡しから1年以内にに支払われるものであること

の要件に当てはまると工事進行基準が強制適用されます。


工事進行基準による工事期間中の各事業年度の収益・費用の計上金額の計算方法ですが、引渡し事業年度の直前事業年度までは、

<収益の額>
請負金額×(その事業年度末までに発生した工事原価の額÷その工事全体にかかる見積工事原価の額)-前事業年度までに収益計上済みの金額


<費用の額>
その工事全体にかかる見積工事原価の額×(その事業年度末までに発生した工事原価の額÷その工事全体にかかる見積工事原価の額)-前事業年度までに費用計上済みの金額

と計算し、引渡し事業年度は総額である請負金額・見積原価でまだ収益・費用が見計上の金額を計上します。


要するに発生工事原価を見積工事原価で割って工事の進捗率を算出して、それを全体の請負金額等に乗じることで進捗率に見合った収益・費用計上をしていこうという趣旨です。


例えば、100億円で受注し、必要な費用が80億円と見積もられていた工事(工期3年)があったとします。

で、工期3年の間に、それぞれ1年目:10億、2年目:50億、3年目:20億の原価が実際に生じたとしましょう。

この場合の収益・費用の計算は以下のようになります。

<収益の額>
1年目
100億×(10億/80億)=12億5000万
2年目
100億×(60億/80億)-12億5000万=62億5000万
3年目(引渡し事業年度)
100億-(12億5000万+62億5000万)=25億

<費用の額>
1年目
80億×(10億/80億)=10億
2年目
80億×(60億/80億)-10億=50億
3年目(引渡し事業年度)
80億-(10億+50億)=20億

費用に関しては結局、その事業年度に発生した工事原価がそのまま費用計上額になりますね。


で、この計算をするときの請負金額や見積工事原価の額はそれぞれの事業年度終了時点での金額を基に計算するため、契約交渉で請負金額が変わったとか、今回の事案のようにコスト削減によって当初の予定より見積工事原価が少なくなった場合等は工事期間途中の期からでもその変更後の請負金額・見積工事原価を使って計算をしないといけなかったんですね。

上記の例で例えば、2年目終了時で見積工事原価が80億円から70億円に下がった場合は、計上すべき収益・費用の計算は以下のとおりとなります。

<収益の額>
1年目
100億×(10億/80億)=12億5000万
2年目
100億×(60億/70億)-12億5000万=73億2142万
3年目(引渡し事業年度)
100億-(12億5000万+73億2142万)=14億2857万

<費用の額>
1年目
80億×(10億/80億)=10億
2年目
70億×(60億/70億)-10億=50億
3年目(引渡し事業年度)
70億-(10億+50億)=10億

結果的に2年目終了時点での工事進捗率が上昇しますので、2年目の損益状況だけを見ると、

当初は62億5000万(収益の額)-50億(費用の額)=12億5000万が
変更後は73億2142万(収益の額)-50億(費用の額)=23億2142万

10億円以上法人所得が増加することになります。

このように今回の事案でも変更しなければいけない見積工事原価を変更しないまま申告したため、申告漏れとなったということです。


ただ単なる計算間違いなら重加算税は厳しすぎると思うのですが、何か意図的に変更しなかった証拠の文書でも出てきたのでしょうか・・?



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<参考条文>
(工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)
第六十四条  内国法人が、長期大規模工事(工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この条において同じ。)のうち、その着手の日から当該工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が一年以上であること、政令で定める大規模な工事であることその他政令で定める要件に該当するものをいう。以下この条において同じ。)の請負をしたときは、その着手の日の属する事業年度からその目的物の引渡しの日の属する事業年度の前事業年度までの各事業年度の所得の金額の計算上、その長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額のうち、当該各事業年度の収益の額及び費用の額として政令で定める工事進行基準の方法により計算した金額を、益金の額及び損金の額に算入する。

(工事の請負)
第百二十九条  法第六十四条第一項 (工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で定める大規模な工事は、その請負の対価の額(その支払が外国通貨で行われるべきこととされている工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。以下この目において同じ。)については、その工事に係る契約の時における外国為替の売買相場による円換算額とする。)が十億円以上の工事とする。
2  法第六十四条第一項 に規定する政令で定める要件は、当該工事に係る契約において、その請負の対価の額の二分の一以上が当該工事の目的物の引渡しの期日から一年を経過する日後に支払われることが定められていないものであることとする。
3  法第六十四条第一項 及び第二項 に規定する政令で定める工事進行基準の方法は、工事の請負の対価の額及びその工事原価の額(当該事業年度終了の時(適格分割又は適格現物出資によりその請負をした同条第一項 に規定する長期大規模工事に係る契約又は同条第二項 に規定する工事に係る契約を分割承継法人又は被現物出資法人に移転する場合における当該適格分割又は適格現物出資の日の属する事業年度においては、当該適格分割又は適格現物出資の直前の時。以下この条において同じ。)の現況によりその工事につき見積もられる工事の原価の額をいう。以下この項において同じ。)に当該事業年度終了の時におけるその工事に係る進行割合(工事原価の額のうちにその工事のために既に要した原材料費、労務費その他の経費の額の合計額の占める割合その他の工事の進行の度合を示すものとして合理的と認められるものに基づいて計算した割合をいう。)を乗じて計算した金額から、それぞれ当該事業年度前の各事業年度の収益の額とされた金額及び費用の額とされた金額を控除した金額を当該事業年度の収益の額及び費用の額とする方法とする。



会計と税務のズレ!


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