今日は、前記事(「歯を失ったら…、インプラントが第一選択?」)の補足、欧州の例として英国をとりあげてみる。

 

英国の歯科診療は、あくまでも制度として見た場合であるが、日本のそれと似ているところがある。
それは診療費の一部を公費負担できる点である(ただし、歯科医院へのアクセス、制限等、実情はかなり違う)。
まずはこのあたりから簡単に説明を。

 

英国では、1948 年より包括的な保健医療サービスを提供する National Health Service (NHS 制度)を導入している。
これによりNHS加盟者(英国本国および外国人(要滞在認定)も含め)は、健康リスクや経済的な支払い能力にかかわらず、臨床的必要性に応じて利用可能であり、自己負担は殆ど少ないか無料である。


歯科は、診療にかかる費用の一部(約2割)がNHSによる公費で支払われ、残りは患者が負担することになっている。この制度を利用しない場合には自費診療を選ぶことになる。


治療費はBand別(治療のレベル別)に決定されている(下記、参照)。

これによれば、Band1の治療(口の中の診査(X線診査を含む)と治療計画の説明、簡単なスケーリング(歯石除去)、歯面研磨、ならびにフッ素塗布やシーラント(予防充填))が20英ポンド、 日本円2,749円で受けられる。

 

 

 

*NHS HPよりhttp://www.nhs.uk/NHSEngland/AboutNHSservices/dentists/Pages/nhs-dental-charges.aspx


この制度を利用する場合、NHS加入者はHPなどで最寄りの歯科医院(NHS契約歯科医院)を探し出して治療してもらうことになるが、軒数が非常に限られ、予約が数日先になったり、当日訪れても自費患者が優先されたりということが少なくないという。さらに、治療内容にも制限が加えられている。

 

ホワイトニング等の審美関連、インプラント治療はNHS対象外で自費診療として扱われる。

インプラント治療については、専門科はなく、個人診療所もしくは専門科(口腔外科、歯周病、補綴)の連携で行われている。

 

欧州インプラント学会(EAO)の2015年に報告されたニュースによれば、英国では近年インプラント治療に対する賠償請求が著しく増加しているという。

 

 

 

2004年から2013年までの間、311件のインプラント関連の訴訟があり、2004年から2008年と、2009年から2013年との訴訟件数を比較すると、41%の増加になったという(Dental Defence Union報告)。

 

Dental Defence Unionでは、訴訟リスク回避のために下記のような提言をしている。

 

1)病歴の詳細な採取、インプラント治療の禁忌症(未治療の歯周病、喫煙、免疫抑制剤の使用)の認識
2)インプラント治療のベネフィットとリスク、代替案(治療しない選択肢も含め)を説明し、これを記録すること
3)患者に意思決定のためのクーリングオフ期間を与える
4)歯科医のスキル限界を認識すること。経験、トレーニングが不足している場合、難症例については専門医(口腔外科医、歯周病、補綴)に紹介
5)インプラント患者の治療記録をとり、適切なリコール間隔で来院していることを確認

 

また、

下図は英国インプラント学会が発行している歯科医向けインプラント治療ガイドの冊子である。

 

この中の「Consent for Treatment(治療についての同意)」のチャプターにおいて、次のような説明が記されている。

 

”For consent to be valid, the competent adult patient must fully understand the nature purpose risks cost and alternatives to the treatment proposed. ”

 

(十分な治療の同意を得るために、リスク、コスト、治療の代替案を説明し十分な理解を得ていることが必要である)

 

 

欧州、少なくとも英国では、欠損治療のオプションにおいてインプラント治療が第一選択ではないことがお判りいただけると思う。

 

 

 

 


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