先月、大好きなティラノサウルス・レックス(Tレックス)に関する学術記事がロイター通信(ワシントン、5月17日)で紹介された。
私らの分野にも関連する内容を含むためご紹介。


元ネタは、科学誌サイエンティフィック・リポーツ。
原題は「The Biomechanics Behind Extreme Osteophagy in Tyrannosaurus rex(Paul M. Gignac とGregory M. Erickson 著)」。


直訳すれば『ティラノサウルス・レックスにおける生体力学的背景に基づくオステオファジー(Osteophagy)』。

 

 

下記サイトで、英文ながら全文読むことができる。

https://www.nature.com/articles/s41598-017-02161-w

 

 


ここで見慣れない単語、オステオファジーOsteophagy)について。

オステオファジー(Osteophagy)とは、動物、特に草食動物が骨を摂取する習慣のことをいう。
世界中のほぼすべての植生には栄養素としてみた場合の十分な量のリン酸が欠如している。リン酸は、骨格系の形成に重要な役割を果たし、エネルギー代謝、タンパク質合成、細胞シグナル伝達、授乳を含む多くの生物学的プロセスに必要であるため、必須の鉱物とされる。このため、草食動物では生体の恒常性を保つために不足がちになるリン酸を得るため、これを多く含む骨を摂食することがあるとされる。


Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Osteophagy

)に示されていた挿絵
かなりインパクトがある。


今回の報告は、
Tレックスが捕食の際に選択的に骨を咬み砕いて飲み込み、骨や骨髄中のミネラル、栄養素等を摂取していたのでは?という仮説を生体力学的に解析したものである。



*画像は、フィールド自然史博物館HPより引用

(https://www.fieldmuseum.org/at-the-field/exhibitions/jurassic-world-exhibition)



(Tレックスは肉食であるものの歯をみてもわかるとおり、食物を細かく磨りつぶす役目をはたす臼歯がなく、顎の開閉も単純な直線的な運動のため、栄養分が摂取できるほどに硬い骨を小さく咬み砕くことは困難であると思われるため)



以前、拙ブログ(『T・レックス 噛む1』)でTレックスの咬む力に関する学術記事をとり上げたことがあるが、
本報告でも仮説の検証のため、咬みしめ時の力(咬む時に発揮される筋活動に基づく顎の力。以下、咬みしめ力)およびその際に加わる歯の表面圧力(以下、歯の圧力)をまず求めている。


算出には、Tレックスの化石標本からCTスキャンによって得られる3Dデータを用い、独自の筋力規定条件を設定してコンピュータ解析を行った。

下図表が今回算出されたTレックスの咬みしめ力および歯の圧力の算出結果である。




表中、向かって左の各セル中の英数字表記は、個体の異なるTレックスの標本番号である。ちなみに一番最上位に記されている標本番号”FMNHPR 2081”は、通称スー(Sue)、発掘史上最大の大きさを誇る化石骨格である(上の骨格画像)。

今回の分析結果から、各骨格標本から得られたTレックスの咬みしめ力は8526-34522 (N)の範囲にありし、キログラム表示に換算した場合、最大咬みしめ力はおよそ3400㎏、3.4トンと推定された。

これまでの報告(上記、拙ブログで紹介した記事)、英リバプール大(University of Liverpool)古生物学者チームが同様な手法によって割り出したTレックスの咬みしめ力は約6トンと推定されたことから、今回の結果はその約半分と小さなものになっていた。

 

しかしながら、

日本人が食いしばった時に加わる歯の力(成人男子20-30歳代。第一大臼歯に加わる力)は、およそ60㎏といわれていることから、約3トンという数字は驚異的であることに間違いはない。

 

今日はここまで。

 

 

 

 

 


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