2007-05-29 16:25:02

悩 迷

テーマ:短編小説
カナダ人女性、店のトイレで出産後赤子を遺棄
 カナダ警察は、サスカチュワン州の草原地帯にあるウォルマートストアの店舗トイレ内に新生児を遺棄した女性を探しており、救急医療師はその状況に困惑している.......... ≪続きを読む≫



身重の体で、やっとここまできたものの。

私は未だに迷っていた。



来月には、生まれる。



でも、育てる事ができるほど蓄えはなく

支えてくれる人は誰もいない。



もう、中絶はできない。



一時は自力でなんとかできないかと情報を漁った。

自己分娩について、一応の知識は備えたつもりだ。




けれど、そのあとは?




彼……あるいは彼女が私の手を離れるまでの十数年。

私に耐えることができるだろうか。




場所を確認する。

ただそれだけのつもりで、私は例のポストの前に来て。

いつまでも動けずにいた。


2007-05-24 02:55:34

キラキラ

テーマ:短編小説

おまえさ、一体いつまでフラフラしてんてだよ。

俺らもう学生じゃないんだぜ?

いい年して夢ばっか追っていないで、早く定職に就けよ。

お前だけだぜ、同期でまだ車も持っていない奴。



ばかじゃねえの。

俺らもう立派な大人だって分かってるんじゃん、お前らだって。

けど現実しか見えてなくて、そんな人生のドコが楽しいんだよ。

俺だって現実見えてるよ。

でもお前らだっていい年して夢すら持ってねぇじゃん。

俺だけだぜ、同期の中で毎日夢を叶えるために目をキラキラさせて生きてる奴。



……



お前ら、本当に自分の人生生きてる?

生きる事=働く事と勘違いしてないか?



……それは、



俺は俺の生き方で生くよ。

お前らはお前らの生き方で生けばいいさ。

どっちが正しいか知らないが、

10年後も目をキラキラさせていそうなのは、さあどっちよ。



                                           了



2006-01-20 00:02:59

『さよならから始まる手紙』 ⑧

テーマ:短編小説

「『いるかも知れない』って程度じゃ、あてにするワケにはいかないね」

「……」

「いるかどうかあやふやな存在に祈るのは、確固と存在しているこの現実でできることを全て尽くした後にやるものだよ。『天は自ら助くるものを助く』――聖書の一説らしいが、まさにその通りだと私はは思う。自助努力もしないくせにただ祈ってタダで救ってもらおうなんて、図々しいと思わないかい? 特に、私たちのような医療関係者が神頼みかい?」

「……でも」

「キミが言わんとすることは、良くわかるよ。例えば大災害なんかで人間の力ではどうしようもない事態に陥った時、神様仏様と祈るのをたしなめることは私だってしないよ。毎日熱心に神様に祈りを捧げることが無駄だとも思わない。あの頃伸子さんが、毎日神社にお参りに行っていたことを意味が無いことだったなんて露とも思わないさ。でも、ソレとこれとはちょっと違うよね」

「……はい」

「ああ、別に責めているわけじゃない。私自身試験前には何度ヤマを張っては神様に祈ったことかわからないし、初詣は毎年行っているしね。でも、医者になって以来医療関係ではキッパリそういうことはしなくなった。難しい手術に臨むにあたって、1パーセントの可能性を信じることだってあるし、その1パーセントを5パーセントに増やすためにあらゆる手を尽くす。けれど、いるかいないかハッキリしない神様が起こしてくれるかどうかわからない奇跡は期待しないし、してもいけないと私は考えているんだ」

「……そうですね」

 口では同意しながらも、私の断定した意見は彼女の望んだものとは異なっていたのだろう。水島さんの瞳に僅かに不満の色が現れて、消えた。

しかし、それもまた仕方ない。彼女は私とは別の人間なのだから、私と全く同じ意見を持つことはない。私の意見など糧とすればよろしい。いずれは自分の確固たる何かを掴むことができるのであれば。

 水島さんは午後の準備があるからと、診察室を出て行った。

 ひとりになって温いお茶を啜りながら、彼女に語ることなかったもう一つの考えをぼんやりと思い浮かべる。それは医学とはまた別の次元での考えだ。

 キリスト教において、自殺は許されざる罪である。神に与えられた命は同時に尊き試練でもある。それに勝手に幕を下ろすことは大罪だからだ。当然、自殺者は天国に行くことはできない。

 だが、神様はそこまで器量の狭いものでもないだろう。何せ、幼子を迎える役を、早くに亡くなった父親に任せるくらいだから。

 だったら愛する家族を求めて、両親と弟を残してでも自らもあちらを目指した哀れな女性の一人くらい、天国に受け容れてくれたっていいではないか。か弱き人間にとっては、辛すぎる現実に包まれて生きるよりも死を望んだほうがマシな場合というのもあるかもしれないのだ。医者にあるまじき意見かも知れないが、私はそう考える。

 いずれにしたって、当の小山伸子は既に他界してしまった。だったら私が彼女にしてやれることなどもうない。

 だが、私は医者で、この世にまだ生きていて、神様も仏様も当てにはできないのだ。死にたくないのに死に瀕している人間がいて、私の元へと運ばれてくる。だから私は全力で精進し全力で患者に向き合う。

 それ以外のことはできないし、あの世のコトなんか守備範囲外だ。美都子ちゃんの後にも何人もの患者を診て、力及ばなかったこともあれば、救えた者もいた。その全てを糧として、私は次の患者へと向かうのだ。

救うために。

 院内に、昼休み終了を告げるチャイムが鳴り響いた。ほとんど同時に水島さんが戻ってくる。明日手術予定の青年は、奇しくも美都子ちゃんと同じ症例だ。進行もそれほどではないし、あれから私だって腕を増した。油断も慢心もしないけれど、彼は間違いなく私の手で救ってみせる。

私は例の手紙を机の引き出しに仕舞うと、一言だけここにはいない伸子さんに、さようなら、と呟き――

私を待つ患者の許へと歩き出した。

 

 

                                    了
2006-01-17 00:17:38

『さよならから始まる手紙』 ⑦

テーマ:短編小説

  告別式から戻った翌日、私は通常通り病院に出勤し、いつものように外来の患者を診ていた。午後からは手術を明日に控えている青年のもとに顔を出して話をする予定だ。

 休憩時間になって私はお茶を啜りながら、水島さんに先日の告別式で聞いた伸子さんの話をしてみた。すると彼女は、しばらく黙った後にこんなことを聞いてきた。

「末森先生は、神様っていると思いますか? 仏様でも、天国の存在でもいいんですけど……そういうのって、存在すると思いますか」

 思わず微笑んだ。私もまた駆け出しであった頃、関わったことのある患者が亡くなるたびに似たようなことを考えていたからだ。

「わ、笑わないでくださいよぅ」

「笑わないさ。私もそんなことを考えていた時期があったなって思ってね」

「え……そ、それで結論は出たんですか」

「神様も仏様も、もちろん天国も地獄も存在するだろう……と私は考えている。根拠はないけどね。魂も存在しているし、生まれ変わりもアリだよ、私にとっては。ただ……」

「ただ?」

「『いるかも知れない』って程度じゃ、あてにするワケにはいかないね」

「……」


2006-01-12 19:18:03

『さよならから始まる手紙』 ⑥

テーマ:短編小説

医者は自惚れてはいけないし、自らの力の無さを悔やむことさえ許されない。風邪でだって人は死ぬこともあるし、どう見ても助からないだろうという大怪我から生還する人もいる。私たちにできることは常に全力を尽くすことだけだ。

 美都子ちゃんが、いよいよという晩のことだった。

 尽くせる手は全て尽くした私たちは、部屋の隅でただ美都子ちゃんを見守ることしかできなかった。見守ることしかできないのは、駆けつけた親戚や伸子さんも同様だったが。

「眠っちゃダメよ、美都子。しっかりしなさい」

 他の誰もが沈黙を守る中で母親だけが奇跡を祈って娘に呼びかけていた。部屋に響く心電図と脳波計の電子音は無機質過ぎて、いっそのこと電源を切ってしまおうかと思うほどだった。灯りは煌々と点いていたはずなのに、思い返してみるとどうしても薄暗い部屋であったように思える。

 必至に娘に呼びかける伸子さんの背中は正直見るに耐えないほど辛いものであった。だが、私はせめて最後まで、目を逸らすまいとしていた。隣では新人であった水島さんが瞳に涙を貯めて必至に堪えていた。

 やがて美智子ちゃんの意識がほとんどなくなり、心電図の電子音が途切れがちになってきて間もなくか、と皆が覚悟した時。

 突然、弱々しかった電子音が力強く定期的なものへと回復した。何事か、と思った瞬間、意識がほとんど残っていないはずの美都子ちゃんが、手を握る伸子さんに向って笑って、言った。

「お母さん、ほら、そこ」

「美、美都子?」

「お父さんが帰ってきた……よ」

 伸子さんは思わず娘の視線の先を追った。だが、目にしたのは病室の天井であって、亡くなった夫の姿など見えるはずもない。それは私たちも同様だった。ただひとり、美都子ちゃんを除いて。

「おか……あさん。お父さんと、あ、遊んでくるね……」

 次の瞬間、脳波計と心電図の波形が両方ともフラットになった。無機質極まりない電子音が響き渡る。僅かな間を置いて、悲痛な絶叫が部屋に木霊した。

 私は伸子さんの隣に立ち、無駄と悟りつつ心臓マッサージをしようと美都子ちゃんの胸に手をのばす。すると伸子さんは私の手を掴んで、首を振った。

「遊んでいる二人の邪魔をしないで下さい」

 私は無言で引き下がるしかなかった。しばらくの間、泣き続ける伸子さんに、声をかけることなど誰もできはしなかった。

2006-01-09 23:19:09

『さよならから始まる手紙』 ⑤

テーマ:短編小説

 美都子ちゃんは、自分の父親が死んだことを知らなかった。入院中いつも、いつか父親が見舞いに来てくれるのだと思っていた。

「お父さん、早く来てくれないかなぁ」

 そう無邪気に呟くたびに、伸子さんは痛む心を押し隠しながら淋しそうに娘をたしなめるのである。

「お父さんは大事なお仕事で忙しいのだから、滅多にこっちに戻って来れないのよ。せっかく戻ってきた時に一緒に遊べないんじゃお父さん淋しいでしょう? だから美都子、早く病気を治してしまうために、きちんとお昼寝しましょうね」

「うん、わかった!」

 そして伸子さんは、美都子ちゃんが寝静まった後病室を抜け出して、独り泣いているのであった。

 小山氏、つまり伸子さんの旦那さんにして美智子ちゃんのお父さんは、美智子ちゃんがまだ三歳にもならない頃、仕事中の交通事故で亡くなってしまった。幼い美智子ちゃんは死というものを理解できず、葬儀場に横たわる父を見て、疲れて寝ているものだと思ったという。

「お父さん寝ているから、みんな静かにしているんだよね」

 その無邪気で罪の無い間違いを正すことを、母親は終ぞできなかった。少女の中で父親は、遠い街へと単身赴任したことになったのである。伸子さんの吐いた嘘を、誰が責められようはずも無い。

 美都子ちゃんの病気は早期であれば外科治療と投薬によって根治できる類のものではあったが、症状の進行しすぎていた彼女の場合は、最早手遅れであった。父親のいない生活に歯を食い縛って耐えている母親を気遣い、平気を装った娘の招いた悲劇だ。

 なんて、残酷な。

 事情を知った私や水島さんは、そう呟くしかなかった。

2006-01-07 21:50:46

『さよならから始まる手紙』 ④

テーマ:短編小説

 一昨日届いた手紙を取り出し、昨日のニュースの事を説明すると、伸司くんはそうでしたか、と淋しげな顔をした。

「実は姉は、先生を含めて数人の知人友人に、似たような手紙を出していたようです。僕や両親宛のものも、姉の部屋に遺されていました」

 彼が懐から取り出した封筒は、私が受け取ったものと色違いではあったが同じ種類のものだった。綴られた内容は伸司くんと過ごしたこどもの頃の思い出や感謝の気持ちが記されていたが、最後を括る言葉はやはり、『さよなら』であった。両親にあてた二通も、伸子さんの友人が持ち寄ったものも同様であるという。

「姉は」

 と、静かに彼は語り出した。

「姉は、美都子が亡くなって以来、塞ぎこむようになりました。いや、無理もない話ではあると思います。僕や両親が気にかけているのも、却ってプレッシャーであったのかも知れません。いつからか姉はお酒ばかり飲むようになりました」

「……」

「いつだったか、酔いつぶれた姉が寝言に美都子と義兄さんの名前を呼んで笑ったことがありました。耐え切れない現実から酒に逃げて、幸せだったころの夢を見ている姉さんを、僕らは責めることもできませんでしたし、そんなことをする権利も無かったのではないかと思います。あちら側に行きたがっていた姉を無理に辛いこちら側に引き止めていたとして、それが良かったと思えることがいつか必ず来るのでしたら、そうしていたかも知れませんが……」

 そんな日が確実にやってくるのかどうかなど、万能ならぬ人の身では判るはずもない。

 しばらく雑談を続けた後に、私は高島家を後にした。

帰りの電車の中で、流れる景色を見るとなしに眺めながら、一つのことに気が付いた。『小山』とは、美都子ちゃんより数年早く交通事故で亡くなられた伸子さんの旦那さんの姓だ。伸子さんは、旦那さんを亡くし美都子ちゃんを亡くし、実家に帰ってもなお、旧姓に改めなおすことはしなかったのである。

2006-01-06 00:53:32

『さよならから始まる手紙』 ③

テーマ:短編小説

 翌日。

 急遽仕事を休んだ私は、手紙に記されていた住所を頼りに、小山伸子の告別式へと参列した。住所は隣の県の少し山間に入った小さな町で、ちょっと離れれば畑や田んぼが見える。緑が豊かで過ごしやすそうな場所であった。その一角に、彼女の実家はあった。

 嫌味なくらい青い空だった。吹き抜ける風が夏は終わったのだと告げる。まだまだ暑い日もあるだろうが既に朝夕の冷え込み方は少し前のそれとは違っている。

 参列者に混じって私が彼女の前に出て、手を合わせる。死衣装に包まれ棺の中に横たわる小山伸子の顔から私は何も読み取ることはできなかった。ただ、冥福を祈る以外のことは、私を含めてこの世の誰ももう彼女にしてやれることはない。

 ここに来たのはほとんど気まぐれのようなものだ。長居する気も無いので遺族への挨拶もそこそこに、私は彼女の実家を後にしようとした時背後から呼び止められた。

「先生」

 振り返ったそこに居た若い青年は、小山伸子の弟で、高島伸司と名乗った。どこかで会った気がしたが、なんてことは無い。彼にとっては姪にあたる美都子ちゃんが亡くなるその場に、彼も駆けつけていたのだ。だから私のことも気が付いたのだという。

 参列客のいない居間へ私は通された。冷たい麦茶を出されて問われれば、どうして私がここへ来たのか隠し立てする意味も無い。一昨日届いた手紙を取り出し、昨日のニュースの事を説明すると、伸司くんはそうでしたか、と淋しげな顔をした。
2006-01-05 01:21:10

『さよならから始まる手紙』 ②

テーマ:短編小説

  私はカッターナイフで封筒を開いて、便箋を取り出した。

 書かれている文章は、時候の挨拶からあの頃の話、美都子ちゃんの病気に対し尽力を尽くした私やスタッフたちに対する礼で埋められていた。

 はっきり言ってしまえば、礼を言われる筋合いなど私たちには無いのではないのかと思う。美都子ちゃんの症例は既に手の施しようも無いほど酷いもので、できたことといえば精々半年足らずの延命であったに過ぎない。むしろ未熟な腕を恥じて小山さんに頭を下げるべきなのだ。

 医者は万能ではない。

 医学もまた万能ではない。

 映画のような奇跡もまた起こることはなかった。

 結局美都子ちゃんは九年という短い生涯を閉じることとなった。それが、たしかちょうど今の季節であった。

「そういえば、今度私が手術するのも、美都子ちゃんと同じ症例であったか……ん」

「どうかされましたか」

「いや、これなんだけどね」

 違和感に首を傾げながら私は手紙の文末のところを指した。覗き込んだ水島さんもその辺りを読んで、不思議そうに首を傾げた。

「普通、こういった畏まった手紙の締めの言葉に、あまり『さよなら』なんて使いませんよね」

「ああ」

 そこには確かに、こうあった。

 

『……美都子のこと、本当にありがとうございました。それでは、さようなら、末森先生』

 

 便箋を眺めているうちに昼休みの時間は終わり、外来の患者の診察時間が始まった。私が感じた違和感も封筒と一緒に机の書類入れの中に放ってしまう。余計なことを考えながら診察を疎かにするわけにもいくまい。

 私がその違和感の正体に気が付いたのは、翌朝病院へ出勤する直前のことだった。朝のニュース番組の中で、昨晩ひとりの女性が自殺しているのを同居する両親が発見した……というアナウンスを耳にした時だった。

 自殺した女性は名前を小山伸子という。美都子ちゃんの母親だ。

 ああ、そうか。ようやく思い至った。あの違和感の正体。

 あの手紙は感謝状などではない。

 『さよなら』より先、書かれていなかった部分こそ本当に伝えたかった遺志。

あれは、さよならから始まる遺書だったのだ。

私はしばらく、食い入るようにテレビ画面を見詰めていて目を逸らすことが出来ずにいた。

2006-01-04 00:04:17

『さよならから始まる手紙』 ①

テーマ:短編小説

その手紙が私の元に届いたのは、ようやっと猛暑がおさまり、空が高く高くなって秋の気配を見せ始めた頃のことだった。私は午後の診察を前に、自分で淹れたお茶を啜っている最中であった。いつも私の助手を務めてくれている看護士の水島さんが、私宛の手紙やら封書やらを持ってきてくれた中に混じっていたのだ。

送り主の名前は、小山伸子とある。数年前、私が救うこととのできなかったある少女の母親の名前であった。

水島さんにその手紙を見せると、彼女もまた沈痛な面持ちを見せた。

「覚えているかい」

 問うと、瞳に悲しみを宿しながら彼女は答えた。

「……はい。私が、最初に担当した患者さんでしたから」

そういえば、そうだったかもしれない。なら、特に印象深く覚えていることだろう。

「美都子ちゃんが亡くなられた後、泣いていた私に先生はおっしゃってくださいました。手を合わせるのも墓に参るのも、ご遺族の送り方だと。医療に携わるものはそれだけではいけない。涙を流しながら精進しなければ供養にはならないのだと」

 確かにそんなことを言った気がする。その言葉は、私がまだ研修医であった頃先輩に言われたものでもあった。

以来水島さんからは新人特有の、どこか浮ついた雰囲気も無くなった。それから担当した患者全てを最も良い形で見送ることはできなかったが、彼女は正しく私の教えの通り、前に進んでいたということだろう。

 私はカッターナイフで封筒を開いて、便箋を取り出した。

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