サイゼリヤ株 ストップ安 -ゴロゴロ- | にっけいしんぶん新聞

サイゼリヤ株 ストップ安 -ゴロゴロ-

デリバティブで損失140億円 -18面-

25日、イタリア料理店チェーンのサイゼリヤの株価が急落しました。前週末、為替リスク回避のためにBNPパリバ証券と結んだデリバティブ契約で08年9-11月期に損失約140億円が発生する見通しと発表したのが嫌気され、売りが殺到しました。
「円高で仕入れ価格が下がると期待されただけに失望売りが広がった」といいます。
デリバティブ契約は2つ。1つは豪ドルの市中価格が1豪ドルあたり78円、もう1つは69円90銭を超えて円高になれば、市中価格を大きく上回る価格で豪ドルを購入しなければならないものです。1豪ドル=65円と仮定し評価損を見積もっていますが、為替次第でさらに膨らむ可能性もあります。


為替ヘッジのデリバティブで140億円の損てどんな契約やねん!?

発表された金曜日の夕方、記者の勤務先のフロアでも大騒ぎになったものです。
そこで発表されたリリースを見たところ・・・


主なデリバティブ契約の内容
(契約先 BNPパリバ証券)
①FX参照型豪ドルクーポンスワップ
(見込まれる評価損 71.3億)想定レート 65.00
・約定日:2007年10月22日
・約定月末日:(2007年10月末)仲値=105.83円/豪ドル(参考)
・支払日 : 2008年12月1日から2010年11月1日まで、毎月1日
・豪ドル約定金額 : AUD 1,000,000
・約定レート : 第一回約定レート 78.0円/豪ドル
  ただし、FXが78.00円以下の円高になった場合、それ以降の約定レートは以下の式で計算される。
  【前回約定レート】×【78.00/FX】円/豪ドル
  下限=78.00円、上限=600.00円
(以下略)

な、なにこれ・・・

えっと、これがこうで、約定レートはこれをこうかけて・・・


雪だるまじゃん!


いや、記者もぱっと見て仕組みが分かったわけじゃなくて、まわりの詳しそうなやつに訊いて理解したんですけどね。
理解したなりにわかりやすく書きますと、

今年の12月から2年間、毎月1回サイゼリヤさんが1,000,000オーストラリアドルを購入する契約なんですが、その為替レートは第1回目(08年12月)が78円。
契約当時(07年10月)のレートがざっくり105円ですから、それを78円で買えるなんて、「これはないだろー、めっちゃ得じゃん」と思えるレートですね。
ところがリーマンショックもあって円高が進んで、今のレートは65円を下回っちゃったわけです。

65円の豪ドルを78円で購入する。
一見かなりきつい話ですが、オーストラリアに食品工場を持ち、豪ドル決済も少なくないサイゼリヤさんにとって為替ヘッジとしては仕方のないものでしょう。

ところが。
第2回以降の約定レートは・・・

【前回約定レート】×【78.00/FX】円/豪ドル

えっと、現在のレート(FX)を65円とした場合、
前回のレート78円×(78円/65円)って、えーと・・・

え?

93.6円?

65円の豪ドルを93円で買わされんの?
じゃ、じゃあ第3回は?
為替は横ばいで65円としたら、93.6円×78/65=・・・

112.32円??

4回目は134円、5回目は161円、6回目は194円・・・って、1年後の第12回には579円だよ!!
65円の豪ドルを579円で買わされる・・・地獄だ・・・。

こ、このペースでいくと、為替65円の横ばいとして、第15回が1001円、第20回が2491円、最終回の第24回には・・・ご、5167円!?

65円の豪ドルを5,167円で買わされるって、いったい何商法だよ!!

と、さすがにそんなことのないように「上限=600円」ってルールがついてるわけで、あーよかった。
って素直に喜べねえよ。
65円で買える豪ドルを600円払って買わされてんだよ。

ていうか65円で想定してるから上限突破が13回だけど、もし現状の63円程度なら11回だし、60円なら9回目には上限600円に到達だよ。
なんだよ、この鬼のような契約はよう。。。

いやまあ、去年10月の約定時に105円だった豪ドルが、まさか1年やそこらで78円を大きく割り込むことになるとは思わないでしょうから、深く考えなかったってのは分かるんですけどね。
もしかしたらこんなことになるリスクなんて、ほとんど誰も考えなかったかもしれませんよね。
サイゼリヤさんにはもう1本の同じような契約、約定レート69.9円、第1回決済期日が今年の9月1日、第2回が11月1日・・・となっているのがあるんですけど、為替が動いて期日がやってきて支払いが始まって、11月に2回目がやってきて、ん?こりゃおかしいぞ?ちょっと待て、次回の支払いレートは・・・次々回は・・・げっ!?このままじゃえらいことになるぞ!!
ていうか12月から始まるレート78円のやつがあったよな!!
おい、あれしゃれにならんのちゃうか!!??

と、こんな感じで関係者は慌てふためいたんじゃないかと思えたりする(そこまでリスク管理ができてないとは思いませんが)わけですが、そんな「知らないうちにやられちゃったんじゃないか?」感を不必要にかもし出しているのが、あえて記事でも言及された相手方の証券会社です。
BNPパリバ証券。

普通なら報道されないことも多い相手方証券会社ですが、破綻したアーバンコーポレーションのCBを引き受けてデリバティブ契約を結んでそれを公表させないで投資家を欺いておまけにぼろもうけして・・・という前科(?)イメージのある業者だけに、なんだかただの損失以上に証券会社にしてやられた感、投資家としても騙された感が増してしまうような気がするのは、記者だけでしょうか。

それにしても先日メラミンピザで大騒ぎしたサイゼリヤさんにとっては一難去ってまた一難ですね。
そいういえばたまたま記者のおかんも絶妙のドンピシャなタイミングでオバチャン友達と出かけた先のサイゼリヤで件のピザを食べていたらしく、メラミン混入が発表されたあと、オバチャン友達同士で返金請求に行くかどうかでまたひとしきり盛り上がったそうです。
けっきょく食べたお店までまた出かけて何百円かの返金じゃ割に合わないわよーということで落ち着いたらしいのですが、そんな顛末を出かける前のくだりから延々聞かされた記者もある意味被害者かもしれません。

って、そんな返金騒ぎとかオバチャン騒ぎの問題じゃないよ。
140億円って、2年分くらいの利益が吹っ飛ぶんだから・・・。