そんなことを言って、絵本を買っていったお客さんがいました。
わたしは、週に何日かニジノ絵本屋の店舗に立っています。
このコラムを書くにあたりいろいろとネタを探しているということもありますが、店舗に立っているとたくさんの興味をひかれる体験をします。
「かたちが衝撃的すぎて」と言って、絵本を買っていったお客さんと出会ったのも、そんな体験の一つです。
そのお客さんが買っていった絵本は、ブロンズ新社さんより今年の5月に発売になったばかりの「あかちゃん」という絵本です。
作者は、tupera tuperaさんです。
さまざまな賞を受賞した「しろくまのパンツ」は、多くの方も知っているのではないでしょうか。
その「しろくまのパンツ」を生み出したtupera tuperaさんの最新作が「あかちゃん」です。
tupera tuperaさんは、亀山達也さんと中川敦子さんによるユニットです。
絵本にとどまらず、工作、ワークショップ、舞台美術などでも活躍しているとっても素敵なお二人です。ニジノ絵本屋に遊びにきてくださったこともあります。
さて、この度の新作「あかちゃん」は、かたちが衝撃的というのもうなずけるまん丸な絵本になっています。
長方形や正方形があたりまえの本のなかで、「丸」というのは「衝撃的」ですね。これは絵本だからできる遊び心です。
絵本というのは、絵と文だけで訴えるものではないと、再三このコラムでも書いてきました。
有名なところだと、「はらぺこあおむし」の小さな穴があいている絵本を思い浮かべてもらえるとわかりやすいです。
このように絵本は、どのジャンルにも属さない「絵本」というジャンルを確立しています。
「絵」と「文」そして「かたち」。
さらには、「しかけ」や「音楽」。
あらゆるものを融合することができ、いつも新しい表現方法でわたしたちを楽しませてくれます。
ニジノ絵本屋は、「あかちゃん」の発売にともない、ブロンズ新社さんと一緒にフェアを開催しました。
そこで、「あかちゃん」の原画をおかりして、店舗で展示することになったのですが、この原画、よく見てみるとコラージュなんです。
つまり、一枚の紙に描かれた絵ではないということです。
紙に色付けしたものを他の紙に貼って、絵を完成させているのです。これは原画を見てわかったことで、印刷された状態の絵本では、コラージュであるとは想像もしませんでした。
別のスタッフにきくと、tupera tuperaさんの作品の多くがコラージュによって製作されていると言います。
そう思って再度、鑑賞してみると、なるほど。これはわたしにとっての「衝撃的」な発見でした。
tupera tuperaさんの絵がかもしだすあの柔らかい雰囲気は、これが正体だったのかと納得しました。
印刷されたとしても、コラージュのよさというものは失われてはいなかったのです。
絵本の表現というのは、本当に奥が深いものです。
「絵」「文」「形」「しかけ」だけが絵本の面白みではないのです。
あくまでも印刷され出版されることを前提とした絵本であっても、その製作方法は作家さんたちの個性があふれています。
目に見えるものだけが、作家さんたちの個性ではないのです。
目に見えないけど、わたしたちが感じる「何か」も作家さんたちの個性であり、そして絵本だからできる表現方法なのかもしれません。
これから多くの「衝撃的」な絵本と出会えることと思います。
それは色彩ゆたかな「絵」からくるものかもしれません。
それはリズミカルな「文」からくるものかもしれません。
それは不思議な「かたち」からくるものかもしれません。
そしてそれは、目に見えない「何か」からくるものかもしれません。
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