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写真セイヨウオオマルハナバチ(写真提供:国立環境研究所)
セイヨウオオマルハナバチ(写真提供:国立環境研究所)

 ペットや輸入品に付着し、検疫をくぐり抜けて侵入してくる日本に存在しないはずの外来種が、様々な問題を引き起こしていることを紹介してきました。一方で、人間の生活や経済・生産活動に役立つようにと、人為的に導入された外来種も存在しています。私たちの都合で、連れて来られた外来種の現状と問題点について国立環境研究所・侵入生物研究チームの五箇公一さんが解説します。


愛らしい姿のハナバチはじつはヨーロッパ原産

 春から夏にかけて野山に行くと、体中が毛むくじゃらの可愛らしいハチが花に訪れて、一生懸命花粉を集めている姿をよく見かけることができます。毛の色と模様のパタンも様々で、全身黒づくめでお尻が茶色いものや、トラ柄のもの、鮮やかな朱色のもの……などなど、多様な衣装を身にまとったこのハチたちはマルハナバチと呼ばれるハナバチの仲間です。

 マルハナバチの仲間は世界中の冷温帯に生息し、日本では北海道から九州まで広く分布します。とくに北海道では、短い夏に一斉に咲き乱れる花をめざして多様な種のマルハナバチが飛び回ります。そんな中で、黄色と黒のストライプの毛皮を身にまとい、お尻が真っ白な、ひと際鮮やかな色彩のマルハナバチが目立って飛んでいます。実はこれはヨーロッパから日本に持ち込まれたセイヨウオオマルハナバチという外来種なのです。なぜ外来種のマルハナバチが北海道の平原に住んでいるのか? もちろん、持ち込んだのは人間であり、我々日本人自身です。


トマトの授粉に大活躍

 セイヨウオオマルハナバチはヨーロッパ原産で、1980年代から、主にハウス栽培トマトの花粉媒介昆虫として利用されています。オランダやベルギーにある、天敵農薬などの農業用生物資材を製造する会社が、人工増殖したセイヨウオオマルハナバチの巣を販売しています。巣の入った段ボール箱を、トマトが栽培されているビニルハウスやガラス室の中に置いて、箱についているハチの出入り口を開けてやれば、働きバチがハウス内に飛び回り、トマトの花から花へと花粉を運んでくれます。

 農作物の花粉媒介用昆虫で有名なのは、セイヨウミツバチですが、トマトの花は、蜜を出さないうえに、葯(おしべの先の花粉が作られる器官)を振動させないと花粉が集められないため、セイヨウミツバチは使えませんでした。農業現場では、マルハナバチが導入されるまでは、自分の手で花粉を運ぶか、「植物成長ホルモン剤」という化学物質を花にかけて、授粉なしで花に実を作らせなくてはなりませんでした。この作業は重労働であり、農業従事者にとっても大きな負担となっていました。

 マルハナバチは、蜜を出さない花でも、花粉を集めに来て、大きな体を震わせながら、花粉を集めて運んでくれるので、トマトの花粉媒介昆虫としてとても優れています。セイヨウオオマルハナバチを導入したことで、農家さんたちは面倒なホルモン剤散布の手間から開放され、省力化された分、生産力をあげることができました。さらに自然授粉したトマトは甘くてジューシーで、ホルモン結果トマトよりも品質が高い。また、生きたハチをハウス内に飛翔させるため、必然的に農薬の使用回数を減らすこととなり、減農薬・省農薬の生産物として、トマトの商品価値の向上にもつながる。まさにトマト生産の救世主と言っていい存在なのです。

 日本でも、1992年よりセイヨウオオマルハナバチの商品コロニーの導入が開始されました。輸入当初は年間の流通量が4,000コロニー程度でしたが、年々その数は増えて、2007年には年間流通量は6万コロニーを超えました。いまや、トマト生産には欠かせないアイテムとして農業現場に受け入れられています。


逃げ出したセイヨウオオマルハナバチが在来種を駆逐

 しかし、本種は導入時より、外来種としてのリスクが生態学者の間で議論されていました。大陸で進化したセイヨウオオマルハナバチが日本列島で野生化した場合、日本の生態系に重大な影響を及ぼすのではないかと懸念されたのです。とくに、日本にも在来のマルハナバチ種が生息しており、セイヨウオオマルハナバチは、それら在来種を駆逐する恐れが高いと考えられました。

 そして、その懸念は、かなり早い段階で現実のものとなりました。北海道でハウスから逃げ出したセイヨウオオマルハナバチが定着している、すなわち、野外で巣を作り、繁殖していることが1996年に初めて報告されたのです。そしてその分布は年々拡大を続け、日本在来のマルハナバチの栄養場所を奪うなどして、その生息域を圧迫するようになってしまったのです。

 その後、国立環境研究所を中心とする農林水産省予算の研究プロジェクトにより在来種に悪影響を及ぼすという調査結果がまとめられ、2006年にセイヨウオオマルハナバチは環境省の外来生物法によって特定外来生物という規制対象種にリストされました。これにより、現在では、環境大臣の飼養許可を受けた上で、ハチが逃げ出さないように規定の網を張ったハウス内でしか本種は使用できなくなっています。農業現場の救世主は、いまや「牢獄」に閉じ込められた有害外来生物という烙印を押されたことになります……。

 


 一方、輸入と使用の段階で許可制という規制がかけられたものの、すでに野生化したセイヨウオオマルハナバチ個体群はいまでも繁殖を続けており、その分布域は知床半島や大雪山など貴重な自然が残るエリアにまで拡大しつつあります。次の課題は、野生化したセイヨウオオマルハナバチの駆除となります。本来ならばポリネーターとして保護されるべき昆虫の駆除作業など、ほかの国でも例を見ません。

 北海道庁は、2007年よりボランティアを募って、マルハナバチバスターズと命名し、全道的にセイヨウオオマルハナバチの網による捕獲活動を展開しています。毎年数万にのぼるセイヨウオオマルハナバチが捕獲され続けていますが、その捕獲数は減ることはなく、効果の見えない捕獲作業の連続にバスターズの皆さんのモチベーションも低下して来ており、とにかく効率的な防除手法の開発が求められています。

 飼育および野生の巣の調査から、セイヨウオオマルハナバチは、その増殖率が在来種以上に高いため、網で捕獲してもほとんど間引き効果ぐらいしか期待できないことが考えられました。そもそも網を振って害虫退治ができるなら昔から農薬業界なんて不要のはずです。


人間のために導入された外来種が、野生化すると駆逐対象に

 国立環境研究所では、現在、この課題に対して、有効かつ安全に殺虫剤を活用できないかと考え、化学的防除手法の開発を進めています。考えてみれば、同じハチ目昆虫のアリ類については、アルゼンチンアリという外来アリ個体群に対して有効な薬剤防除手法が開発されています。アリの場合は、ベイト剤という殺虫成分を含む餌を働き蟻に巣に持ち帰らせて巣内の幼虫や女王に給餌することで増殖を停止させて最終的に巣を崩壊させるという手法をとります。

 同様の社会性コロニーをつくるハチに対してもアリと同じメカニズムで防除することができるかもしれません。ただし、北海道という自然エリアで防除を実行するには、セイヨウオオマルハナバチだけに標的を絞った薬剤や処理方法を選定する必要があります。技術開発はいまも続けられています。

 セイヨウオオマルハナバチのように意図的に導入された外来生物は、ほかにもたくさんいます。北米原産のオオクチバスは食用目的で、アジア原産のマングースは沖縄・奄美のハブ退治目的で、北米原産のアライグマは、ペット目的で輸入されました。

 いずれも「人間の役に立つ」という名目で導入された生物でしたが、いまや一級の有害外来生物として、外来生物法で特定外来生物に指定されており、彼らもまた野生化した個体については駆除対象となっています。
 
 外来生物の彼らに非がある訳ではなく、導入してしまった人間に非がある……。しかし、外来生物の被害を被る相手が生物多様性だと、人間もその「非」を実感できないのか、いまでも新たな外国産の動植物が観賞用・産業用として大量に導入され続けています。

(国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)


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今後、こういう事は増えていくと思うんですよね。




やっぱり、いろいろ移動手段がありますからね。



勿論、人に役に立つ虫も沢山います。



自分も虫の力を借りて農作業していますし。




だから、虫たちとも仲良くやっていきたいですねぇ。





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