レッツゴー!元日本洋楽研究会

洋楽団塊オヤジが日常をタラタラと書いていくブログ


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良質な推理小説のように引き込まれ、一気に読み終えた。
今年巡り合った本の中で間違いなく断トツだ。


レッツゴー!洋楽研究会


1963年6月15日から3週連続で
アメリカのビルボード誌NO1を記録した
坂本九の「SUKIYAKI=上を向いて歩こう」。
この本は何故あの歌が世界中でヒットしたのか
その謎をきめ細かい検証によって解き明かす。


歌を成立させている作詞の永六輔、作曲の中村八大、

歌手の坂本九、いわゆる「六八九トリオ」それぞれの生まれ、

育ち、性格、家庭環境、社会状況、人間関係、思想、仕事等を

大量の文献と証言、インタビューで紡ぎながら、
3人を組ませたプロデューサー渡辺晋初め関係者たちの

当時の立ち位置と日本音楽業界が置かれていた「時代」を背景に、

時には世界を俯瞰し、時にはミクロとも思える小さな真実も

クローズアップしつつ、「ヒットの謎」の核心に迫って行く。


貴重な「上を向いて歩こう」初演時の楽譜を解析するなど
ほとんど「学究の徒」とさえ思えるような筆者の、
執念にも似た≪研究論文≫と言うこともできるだろう。


大作なのにソリッドな文章で独断を恐れずに断言していく。

余計な装飾語は削ぎ落とし、わき目もふれず
一直線に突き進んでいる、そんな爽快感のある本だ。


しかしそれだけならまだよくある「ヒットの裏側」かもしれないが
私にとって目からうろこだったのは、ここにビートルズと
アメリカのキャピトルレコードのインターナショナルのA&R

デイヴ・デクスター・ジュニアを登場させていることにある。


そうだよ、その視点は今まで私に全くなかった。

坂本九もジョン・レノンもプレスリーに一番のショックを受けて

音楽をやっていたんだから言語は違っても同類だったのだ。


1963年5月と言えば、
ビートルズがイギリスで大爆発しているまさにその時。
アメリカで発売の責任者だったデイヴ・デクスター・ジュニアは
ビートルズのアメリカ発売を断ってインディーズに譲り、

坂本九をピックアップし、全米NO1のミリオンヒットに押し上げた。
この半年後に彼は「抱きしめたい」でやっと重い腰をあげ
狂乱の1964年を迎えることになる。


現代人からしたら、あのビートルズの発売権を他社に2度も渡して

マーケットの様子を見ていたこのA&Rは馬鹿かと思うだろうが

デイヴ・デクスター・ジュニアは優秀なA&Rだったようだし、

何より後理屈でなく、リアルタイムで歴史が動いていたのが

よくわかって面白い。

そうか「上を向いて歩こう」は「シー・ラヴズ・ユー」よりも

1963年の段階では楽曲として評価が高かったわけかー。



ところで、この本の筆者は佐藤剛さん
そう、ザ・ブームの事務所社長だったあの佐藤剛さん。
昨年9月に藤沢葦夫さんと一緒に会ったことは日記に書いている。

http://ameblo.jp/nihonyogaku/entry-10640658412.html


3年がかりの労作がこうして完成した。
「人の縁によってできた円」など個人的にも興味深い記述もあり
これは洋邦問わず、音楽業界人たるもの必読の本であると断言する。

そして、「上を向いて歩こう」に正当な歴史的再評価をもたらした

剛さんに拍手。素晴らしい!


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