8月7日。日曜日。巡礼二日目。


朝起きて準備。ボカディージョ(サンドイッチ)を買いにバルへ。

4ユーロのハムチーズ。


まだ二日目だから当たり前だけど足にダメージは無い。あるのは筋肉痛くらい。


周りを見渡すと早くも足から血が吹き出している人、皮が剥けている人などなどアクシデント発生中の人がちらほら。


道自体は昨日のピレネー越えほどキツくはないけれど極度の筋肉痛を伴なってのアップダウンはそれなりに大変だ。


昨日もそうだったけれど「腹がへって動けない」という状態になる。


ギャグじゃなくてリアルに動けないからビックリした。人間ってお腹が減ると本当に動けない。


お昼は果物で済ませた。パンやら肉やらは昼間の日差しの中だとなかなか喉を通らない。


水分たっぷりのオレンジとかがすごく美味しい。価格もリーズナブルだ。


こっちは何でもかんでも量り売り。お菓子だってなんだって重さに比例した値段を提示される。なんだかすごく得をしている気分になる。


ズビリのアルベルゲで大半の巡礼者は泊まるようだったけれど僕らはもう少し頑張って次のララソアーニャまで行くことにした。

今日は土曜日。


町にはこれといって、というか町ではない。


教会とアルベルゲと小さなバル(スペインにはどこにでもあるとされる食事ができてお酒が飲める社交場)があるのみ。


土曜日で結婚式にぶち当たってしまったため町に二つしかないバルが激混みでゴハンが食べれないという緊急事態。


と、そこへ日本人の家族が。この辺の地理について尋ねると「スーパーは歩いて一時間」とのことで冗談じゃなかった。


足が棒。


夜はホットドッグみたいなのを買って食べる。腹が減りすぎていたので美味すぎてビックリした。


この時のホットドッグの味は一生忘れられないと思う。


アルベルゲは二段ベッドで全部で200人くらいは止まれた気がする。


ロンセス


ここは洗濯機がおいてあったので疲れていた僕らは洗濯機で洗ってしまった。これが最後の洗濯機だった。


一緒に待っていたフランス語を話すおじいちゃん。彼とはブルゴスまで一緒だった。言葉は通じなかったが、これから先よく洗濯場で一緒になるたびに服を絞りながら笑いあった。【白ひげ】と呼ぶことにする。





洗濯をして服を木につるして休憩。


一日目にしてなぜここに来てしまったのか。なぜこんなにつらい思いをしているのか。という考えをおこす。


意味が曖昧なのだ。


この日もなんとなぁくピレネーを越えてしまった気がする。


自分は敬虔なクリスチャンではない。かといってスペイン語を専攻しているわけでもない。


二ヶ月間、日本を空けてまでするこの旅とは。


ただ歩くだけなら四国にだって何処にだってあるのだ。


これはしばらくの間、脳内ディスカッションのメインテーマだった。





19時から教会で行われるというミサに3人で出席。


足が痛くて立っているのが辛かったけどパイプオルガンの音色が一瞬全てを忘れさせてくれるぐらいキレイだったのを覚えている。


音がずれてたのだけれど教会に響く音色はとてもキレイだった。




夜。

200人が奏でるイビキという未知のハーモニー。

30日以上イビキとの戦いは続く。


耳栓もってきといてよかった。

大事なのは自分のペース。

一日目でこの大切さを身を持って知る。


途中、イタリア人の三人家族に会う。あいさつ。

「おいて行かれたの?」と聞かれる。たぶん2人に会ったんだな。


僕はもちろん、彼らも英語はあまり得意ではないらしくお互いに身振り手振りで。


「日本の女子高生はすごいパワフルね。」と彼らの娘がいった。


日本に来たことがあるらしく、その時目にした女子高生の挙動がとても新鮮だったらしい。


今でこそ慣れてしまっているが、あぁいった行動は世界基準ではないということだろう。



山頂付近で3人で休憩。


ピレネ5


至る所に黄色の矢印があって迷うことはまずない。


ピレネ6


そしてついに山頂に到着。


快感。


思わず倒れこんで空を見上げる。


雲ひとつ無い。


来る前に奥多摩の山登りをしてきたけどチャンチャラ甘かった。


山登りの醍醐味を始めて理解できた気がする。


くだりは驚くほど楽。


でもくだりのほうがキツかったかもしれない。


足がガクガクで思ったように下りれない。


それでも上りよりは断然ラクですいすいおりていった。


しばらくすると森が徐々にひらけて町らしき雰囲気の建造物が!



長かった。


ロンセスバジェスに到着だ。

8月6日(土)


6時頃に目が覚めていそいそと準備を始める。早い巡礼者は5時ごろ出発してしまうらしい。


昨日のおばちゃんがっていうかこのおばちゃんホスピタレーロだったのか。が朝ゴハンを食べさしてくれた。


濃いコーヒーで一発ハードにしゃきっとキメた。


7時、出発。



いよいよだ。敬虔なクリスチャンでもない。スペイン語を専攻しているわけでもない。ただ、今しか出来ないと思ったからここに来た。



いくぞ!


うぉい。いきなり上り坂。


ピレネ3


でもまだまだ歩き始めは楽勝。


Wと一緒に飛ばしまくる。





で、著しく減速。





後ろで歩いていたHに抜かれる。これぞ調子に乗ったウサギ。


日が出てくるとさらに体力を吸われる。そしてここはピレネー。上り坂が延々と続く。

山を越えるとまた山。それを越えるとまた次の山というように上りが続く。


最初はペチャクチャ喋っていた僕らも喋らなくなってくる。


まだここはフランス圏だったので他の巡礼者との挨拶は「ボンジュー」

でも、その「ボンジュー」も威力を失う。



9時頃に休憩をとる。なにしろ腹の減り方が尋常じゃない。パンにグアッとがっつく。



しばしの休憩の後、また上へと登っていく。


うわぁ羊だ!

ピレネ1


馬だ!


ピレネ2


近すぎちゃってどぉしよっ♪

かわいくって、どっおしよおっ♪


しかしここは富士サファリパークではない。ピレネー山脈なのだ。


歩いているとピレネーにいること事態が信じられなくなってくる。


つい昨日のパリ観光も遠い昔のようだ。


きっとこの永遠に続く上り坂が脳みそに現実逃避命令を出しているのだろう。


ピレネ4


登るにつれてだんだんとすばらしい景色が広がってきた。

で、俺だけ水だったことが判明。普通にお湯が出るそうな。


外は暑いのだけれど、ここはピレネーの麓。そこそこの標高をほこるため水が冷たい。


それからは夜までみんな別々に時間を過ごす。


昨日までとは違って今日はなんだか時間がゆっくり流れている。


sanjan


町の中を流れる川。


町の真ん中らへんに行くと小山がある。登っていくと望遠鏡や、お城が。


いい眺めだ。


sannjan


明日はいよいよピレネー越え。ドキドキ。


やはりここはもう巡礼路。かなり雰囲気のある人達が増えてきた。


ここで僕も明日への不安と期待に思いをはせながら、小一時間ぼーっとしてしまった。


この旅で待ち受けているものはなんだろう。3人そろってゴールできるのか。途中で誰かケガしちゃったらどうしよう。ケンカとかやだなぁ。そして自分はいったい何を得るのだろう。


いろいろなことを考えていた。


といってもこの頃はまだまだ目の前のことばかり心配して、自分のことばかりだった。それに気付くまで相当な時間がかかってしまったのですが。


この巡礼の旅は、3人で旅をしているものの、1人の時間というのが驚くほど長い。そういう時間が最初はとても不毛に感じられたのだけど、今思うと自分はなんて贅沢な時間を過ごしていたのだろうと思う。数多くのことを大自然の中でジッと考える。ジッと待つ。ジッと感じる。



まさに「自分」と向きあう。


こんな経験、日本にいたらまずできなかった。




その大切さに気付くのもまだまだ先だったのですが。




さぁいよいよ明日は最初の一歩。

バイヨンヌで15時発の電車に乗り【サンジャンピエドポー】へ。


カップルで歩きにいく人。


聖書を読んでいる人。


様々だ。


一時間くらい電車に揺られサンジャンに着。

さんじゃん1


どこにいけばいいのか。


巡礼者オフィスなるものがあるらしいのは知っていたのが勝手がわからないので3人で電車を降りる人の流

れに身を任せる。


途中、街の雑貨屋で水を買う。


そういえば水が安い。パリよりダントツに安い。これからビックリするのだが50セント以下で1.5リットル買えるようになってくる。タダでさえパリで水の安さにビックリ(コントレックス1.5リットルが80円程度)してたのにスペインに入ってからはどんどん物価が安くなっていった。あたりまえだけどEU内でもそれぞれのお国事情がありますからね。



巡礼者オフィスに着く。


中はガヤガヤと賑やかで混雑している。そしてなんだこのハエの多さは。


巡礼中はハエとの共存を余儀なくされて参ったのだがじきに慣れてしまった。


このころはまだまだハエのうるささに我慢ができなかった。


旅の目的や予定期間など簡単な質問に答え、太っちょのオジサンにクレデンシャル(スタンプを押してもらう台紙のような証明書のようなもの)を発行してもらいアルベルゲ(巡礼宿)のベッドを確保してもらう。


さんじゃん2


オフィスに飾ってある巡礼ルートマップ。右上の点がサンジャン。一番左が目的地のサンティアゴ・デ・コンポステーラ。




そして初めてのアルベルゲ。(公営)


これから先、公営と私営のアルベルゲが現れ選択を迫られる機会が間々あったが公営を選ぶことが多かった。私営はどうしても宿泊費が割高になってしまうので。州ごとに巡礼路や巡礼者に対するチカラの入れように違いがあってアルベルゲの状態にそういったものが反映されているといっても過言ではない。とにかくここ、サンジャンのアルベルゲはステキなほうだった。


さんじゃん3


アルベルゲで記念写真↑


僕らがベッドを確保してからずっとアルベルゲのリビングでは3人組のオバちゃんたちがなにやら話していて賑やかだった。シャワーの位置を聞くと唯一英語がわかるオバサンが教えてくれた。


とりあえずシャワーを浴びにいく。










まさかの水。





Ops!






巡礼の旅はキツイぜ。でもワクワクしてきた。

8月5日(金)-移動日


今日はいよいよ移動日。パリをあとにする日。


よって5時起き。


相部屋だったイギリス人の人はまだまだ寝ている。カリマーの80リッターのバックパックでパンパン。


何が入っていたのだろう。



6時ちょっとすぎにモンテパルナスへ到着。再びTGVに乗りこむ。


モンサンミシェルの時とは違って今日は5時間も乗らないといけない。


それにしてもTGVは重力がかかるなぁ。普段は絶対に乗り物酔いとかしないけど途中ちょっとムカムカした。


でもそんなことはお構いなしに爆睡。



5時間かけてバイヨンヌに到着。


例のごとくお祭り騒ぎ。

バイヨンヌ1


街の楽団↑


この頃は物珍しさでキャイキャイいったけど、どこでもしょっちゅうやっているので最後のほうはプレミア感が皆無だった。

bayonu


デケェ着ぐるみ。


bayonuuu


そして美しい街並み。


徐々にデカイ荷物もってカエルみたいな足をした人達が増えてきた。

パンツを3枚もっている。


しかしだ。


白はどうだろう。


白ってどうなんだろう。


お得な3枚セットで買ったボクサーパンツたちの色までは見ていなかった。


白だ。


白はまずいよね。


パンツを買いにパリのアディダスへ。


ない。


スポーツオーソリティーみたいなとこへ。


ない。



なぜ?

パンツごときが見つからない。




結局「celio」とかいうユニクロくらい色んなところにあるお店で購入。


この時は感覚が麻痺していたけど、2,000円くらいするパンツだった。


上質な肌触りはとても心地よく、巡礼中の「勝負パンツ」となる。

8月4日(木)

朝7時に起床。


今日はルーブル美術館。


とりあえず2時間を見積もるがとてもとても。

館内の広さは噂どおり。


モナリザを見に行く。モナリザの前には大多数の中国人観光客。

あ、カメラのフラッシュは炊いたらいけないんですよ。


モナリザ

モナリザはかなり特殊そうなガラスで完全ガード。1ランク上を行くセキュリティーシステム。


これも有名なミロのビーナス。


miro


踊り場に堂々と展示されているサモトラケのニケ。


nike


とにかく広くてどうしようもない。

本気で見たら1週間かかるという意味がよ~くわかりました。


人気のある作品の前はごった返していてすぐわかる。


人ごみ


こんなん↑


ナポレオン三世の食卓。


食卓


ひたすら2時間歩き続けた。



もう限界。



外に出て昼食。


ガラスピラミッド


地下から入ったからわからなかったけど、これがいわゆるガラスのピラミッド。


あの下がルーブル美術館の中央ホールになっていて、リシュリュウ翼(向かって左)、シュリー翼(正面)、デュノン翼(右)という3つの棟につながっている。


昼食にはホットドッグを買う。


こっちのホットドッグは自分の腕の肘から手のひらくらいまであって完食するのは至難の業。


ましてはパン嫌いの僕にとっては果てなき道のり。


食べ終わる頃にはアゴがガクガクブルブルしだしてゲンナリ。


これから1ヶ月以上もパンの生活が続くから早いところ慣れないと。


ルーブルの凄さを体感した後、明後日から始まる巡礼の旅に備えて最終的な装備の買出しに出かけた。

モンサンミシェルだ。


モンサンミシェル4


すげぇ~。


とにかく上へ昇ろう。


大評判の「オムレツ・デ・モンサンミシェル」も食さなきゃいけない。


修道院の道はゲキ混み。


京都清水寺の参道をもっと細くして人口密度高くして、全体的にリッチにした感じ。


道の両側にはおみやげ屋さんとホテルが軒を連ねる。


☆☆☆表示のレストランがあったので、とりあえずオムレツを食べる。


店内ゲキ混み。オムレツ3つというと、この時間(11時)からオムレツ!?みたいなリアクション。


でもオムレツちゃんと出てきて、早速食べてみると




う~ん。




なにごとも経験ですから。


食後、修道院まで行く。


もちろんお金とられます。


中はゴシック様式の最高傑作というだけあって凄い。こんなのどうやって作るんでしょ?


広間ではフランスで2回目のミサにも遭遇。荘厳。このあとの巡礼の旅がうまくいきますように。

モンサンミシェル2

上からだとこんな感じ。


ここはさすがに日本人の観光客がちらほら。シーズン入ったらすごいんだろうな。


中よりも外から眺めた方が感動なんじゃないかということで降りる。


降りれない。


凄い人ごみ。


参道


動けない。


チョコチョコ歩きでやっと降りて少し離れてみる。


やっぱりこの眺めですよね。


モンサンミシェル3


ゼッケイ。


干潟を一周する。観光開発で今や水が浸食しこなくなってしまったらしい。本来は潮が満ちると完璧な「孤島」となる。


現在は工事中で、いずれは本来ののモンサンミシェルの姿を取り戻す予定らしい。


途中、一時間くらい3人で今後の巡礼路の話しをする。何が待ち受けているのでしょう。3日後の今頃はピレネーを越えているのでしょう。


夕飯はリパブリックで。野菜を食べてない気がしたので【サラダMIX】を3ユーロで注文。りーずなぼー。


明日も観光。