∞イケメン・ジョニーはスーパースター? #62 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

〝JACKPOT DAYS〟-image


〝JACKPOT DAYS〟-image


「ジョニーの四月いっぱつめ」



 四月某日、ツアーという名のドサ回り中のバンドは都内の某マンション前に集合していた。
「え、ここ……? このあたりライヴハウスなんてあるのかな……」
 ウグイスが跳ねるように歌い、近くにはサクラ咲く公園が見える。閑静な住宅地だった、瀟洒なマンションのエントランスにて男たちは首をひねる。
「こんな……こんなところでライヴやっていいのかな……」
「……や、ここはマンションだろ……。ライヴなんてしちゃダメだよ……」
「なぜここが集合場所……?」
 高級マンションにはあまりに不釣り合いなパンクスたちは周囲に「?」を点滅させていた。

「まどかさん……ひょっとして俺たちをここに住まわせてくれるんじゃ……?」
 ジョニーは見上げる。上階までが吹き抜ける螺旋の階段、奥にはエレベーターまで搭載してある。防音設備も整っているらしく静謐な古城を思わせた。
「……それはないだろ……こんな高そうなマンション……」
「……悲しいかな、俺ら、そんな売れてないしね……」
「うーんうーん……じゃあ、個人宅の演奏サービス……?」
 天野くんは精一杯に頭脳を回転させる。
「そんな……そんな上品な音楽やれないだろ、俺たちは……」
 そしてヒラサワくんが冷静に返す。
「ロック・スターって住むところも大事なんだね!」
 ジョニーは勘違いを続けている。

〝JACKPOT DAYS〟-image



「よっ、バカどもっ!」
 襟ぐりの大きく空いたカットソーに鍵編みの長いカーディガン、カットオフしたデニムから長く白い脚が伸びている。
 彼らのマネージャー、まどかさんの登場である。
「まどかさん……ここ……マンションだよ……」
「いいの、今日はここでいいの。それよりあんたたち、これに着替えて」
 紺のブルゾンに同色のワークパンツ。まどかさんが抱えていた荷物の中身はそれだった。
「今日のライヴは引っ越し! あんたらアタマはイマイチだけど……いやイマニかイマサンかな、なんでもいいけどさ、体力はあるでしょ。日程に空きが出来たときは日銭を稼ぐ! 今日のTHE CIGARETTESは引っ越し屋さん、名づけて『パンク運送』よ!」
「それはつまり……日雇い派遣とか……そーゆーこと……?」
「察しがいいわね、ヒラサワくん。その通りよ。売れないなら稼ぎなさい!」
 もはや何も言うまい。無言で作業にとりかかるモヒカンとリーゼントがいた。

「よーし!」
 突然、ジョニーが気合の一声をあげた。
「みんな、頑張ろう! 納屋からこんなすごいお城に引っ越しだよ! やっぱりロックンロール・スターなんだね、俺たち!!」
 ジョニーは勘違いを続けていた、訂正しようにも、尋常ならざる速度で階段を駆け上がってゆく。
「やる気みたいだからほっておきなさい。終わってから話せばいいわよ」
 
 腕組みをしてさらりと言い放つ。当然ながら、まどかさんは引っ越し作業に加わらなかった。
 おそらくは現場責任者なのだろう。



<様々な経験を経て、ロックンロールは続いてゆく……>

━━━━━━━━━━━━━━━
〝JACKPOT DAYS〟-image


空前絶後におバカなパンクスたちの物語



━━━━━━━━━━━━━━━

〝JACKPOT DAYS〟-image

〝JACKPOT DAYS〟-image

あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)



〝JACKPOT DAYS〟-image

あの人への想いに綴るうた

〝JACKPOT DAYS〟-image