星屑のロビンソン <9> | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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「治りそう?」
ザジは問いかけました。隣にはもうひとりのアンドロイド、ココがいます。
ココはイヌ型のザジとは違い、GT400と同じヒト型のアンドロイドです。
彼女は頭部に耳のようなかたちのセンサーを2つ、姿勢を制御するためにつけられた尾を持っていて、その姿はどこかウサギのようにも見えます。

「大丈夫。ほとんど故障していないもの。充電さえすれば、また起動できるわ」
「じゃあ、右の眼は?」
ザジはGT400が「故障したみたい」だと言っていた右の眼のことをたずねました。
「右の眼は……故障じゃないみたい。レンズをこじ開けて中をムリに取り外したみたい……」
「……え?」
「彼は記憶をなくしてるのよね? プログラムされた何か……それとも別に何かの機能を持ってたのかもしれない。ザジ、彼はわたしやあなたとは役割が違うアンドロイドだってことは間違いないわ」
「役割?」
「機能とか、そもそものプログラム、造られた……意味のようなもの……」
「ひょっとして……GT400は『あいつら』と……」
「……たぶん。でも、機能がそうだったとしても、プログラムがどうなのかは再起動してみないと分からない……」

あいつら、じゃないのよ、ザジ。
その言葉をココは口にしないままでした。
あいつら、じゃないの。あいつ、なのよ……。
なぜ再起動してしまったの、ロビンソン……。

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“ハロー、ハロー、聞こえる? ……聞こえる、じゃ違うのかな……見えてる? 私のことは覚えてるかなぁ?”

センサーを通じて、音声と画像がGT400の頭のなかに流れてきました。

“これを見てるのなら、きみは無事に未来を切り拓こうとしてるわけよね? 久しぶりね、ロビンソン。いま、どこにいるのかな? 私はいま、きみたちを乗せた宇宙船を見送ったばかりよ。大気圏を越えて軌道に乗った方舟をモニタリングしてる。
きみたちはどんな星にたどり着いたのかな、なんて考えながら……”

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“ロビンソン、私は君のお母さんなんだよ。私が設計して、プログラムしたの。だからきみには私の意思が宿ってる。ロビンソンって名付けたのも私。君が見てる私はずっと昔の私、きっともう生きていないわ。ううん、私だけじゃない、私たちの住む星……太陽系第三惑星、地球はもうきっと無人の星になってるでしょう。私たちヒトの推測が正しければ、地球は数十年のうちに命が生きられない氷の星になってるはずなの。
私たちヒトは……人類を存続させるために、冷凍睡眠させたヒトのサンプル、それから、遺伝情報をアンプルした細胞を塩基配列に沿ってカプセルに閉じ込め、宇宙船に乗せたのよ。そして、それを守り、新たなる星で再生させるの。
私たちはその行程すべてを君たちアンドロイドに託したの。
移住ができる星を探して、そこでヒトが生まれ変わるように……”

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illustration and story by Billy.


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<つづく>