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I'm a Black Metal Man. I love a place full of Black Metal...


テーマ:
hitsugiです。

前回の更新から2週間が経ちました。色々とやらなければいけない事が多々あり、
ブログを執筆する時間が確保出来なかったのです。また、毎週月曜深夜に更新致します。

今回も下手糞ながらも自分なりの文章で、読書感想を書いてみようと思います。



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「虐殺器官 / 伊藤計劃」
(2015年 完全読破)

【内容】
9・11以降の"テロとの戦い"は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行して
テロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、
ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……
彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす"虐殺の器官"とは?
ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化!

感想・考察に入る前に、まずは登場人物とあらすじを紹介しよう。


【登場人物】
クラヴィス・シェパード:アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊大尉
ジョン・ポール:元MITの言語学者
ルツィア・シュクロウプ:ジョン・ポールの愛人とされる女性
ウィリアムズ:クラヴィスの相棒であるi分遣隊隊員
アレックス、リーランド:i分遣隊隊員
ルーシャス:ジョン・ポールに協力する団体「計数されざる者」のメンバー
ロックウェル:アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊指揮官

【あらすじ】
サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、
アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。
十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれた一方、後進国では内戦と民族対立により
虐殺が横行する様になっていた。事態を重く見たアメリカは新たに情報軍を創設し、
各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行う様になった。

アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされる
アメリカ人ジョン・ポールの暗殺を命令され、相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共に
ジョン・ポールの目撃情報のあるチェコ・プラハに潜入する。プラハに潜入したクラヴィスは、
ジョン・ポールと交際関係にあったルツィア・シュクロウプの監視を行うが、
次第に彼女に好意を抱く様になる。ある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、
そこで政府の情報管理から外れた生活を送るルーシャスたちと出会った。
その帰路で、クラヴィスはジョン・ポールに協力するルーシャスら「計数されざる者」に
襲撃され拘束されてしまう。拘束されたクラヴィスはジョン・ポールと対面し、彼から
「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在する」と聞かされる。
ルツィアを監視していた事を暴露されたクラヴィスは、ルーシャスに殺されそうになるが、
ウィリアムズら特殊検索群i分遣隊の奇襲によって救出されるも、
ジョン・ポールとルツィアは行方不明になってしまう。

プラハでの遭遇後、核戦争で荒廃したインドで虐殺を行っている武装勢力
「ヒンドゥー・インディア共和国暫定陸軍」にジョン・ポールが関わっている事を知った
アメリカ情報軍は再びクラヴィスらに出撃を命令するが、「虐殺文法」の話をクラヴィスから
聞かされたロックウェル大佐は、ジョン・ポールを生かしたままアメリカに連行するように命令。
「ヒンドゥー・インディア共和国暫定陸軍」の本拠地に潜入したクラヴィスらはジョン・ポールの
拘束に成功しアメリカに連行しようとするが、ジョン・ポールに情報を漏らしていた
上院院内総務の派遣した部隊に護送列車を襲撃され、リーランドら多くの隊員を喪った挙句、
再びジョン・ポールに逃げられてしまう。

情報軍との取引により院内総務が政界を引退した後、アフリカの「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」
政府にジョン・ポールが招待されたという情報を得たアメリカ情報軍は、クラヴィスらに
ジョン・ポール暗殺指令を出し、クラヴィスはルツィアに会う為「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」
領内に潜入する。「ヴィクトリア湖沿岸産業者連盟」軍の攻撃を受けた特殊検索群i分遣隊は
散り散りになり、クラヴィスは単身ジョン・ポールの住む邸宅に向かい、彼と再会する。そこで
ジョン・ポールは、クラヴィスに「個人情報管理はテロ撲滅に何の意味も成さなかった」と語り、
「アメリカを守る為に後進国で“虐殺文法”を活用して内戦を引き起こし、アメリカに憎悪が
向かないようにしていた」と真意を伝えた。ジョン・ポールの真意を聞いたルツィアは
「アメリカの法廷で“虐殺文法”の事を公開し、犠牲者の生命を全ての人々が背負うべき」と訴え、
ジョン・ポールは投降を決意する。しかし、そこにウィリアムズが現れてルツィアを射殺し、
「個人情報管理によって得た“平和”を失うべきではない」としてジョン・ポールの暗殺を強行。
クラヴィスはウィリアムズを爆殺してジョン・ポールと共に邸宅を脱出し、
合流地点のタンザニア国境に到着するが、直後にジョン・ポールは射殺され、作戦は終了する。

3カ月後、何者かによって情報軍の行った暗殺作戦がリークされ、クラヴィスや情報軍関係者は
公聴会に召喚される。公聴会の場で、クラヴィスはジョン・ポールに渡された「虐殺文法」を使用し、
アメリカ人の「虐殺器官」を活性化させ、アメリカ全土で内戦を引き起こす。



【感想・考察】
まず第一印象を一言で表すと、作品全体に漂い流れる「死」のリアリティが半端無かった。
同時に、近未来のテクノロジーや社会システムとその中で生きる人間との対比が否応も無く
現代社会を端正に映し出している。現代人が過去から脈々と受け継いできた幾つかの
根深い矛盾や葛藤、不平等の上に成り立っている社会を守る為に誰かを見殺しにする。
この我々が住む現代社会の延長線上の近い未来が非常に鮮明に映し出されているのである。
そして我々の住む時間軸よりも進んだ科学や、テロと向き合う為に変化してきた世界の有り様。
それを読者という第三者が傍観する事で、現代的なテーマを浮き彫りにしているのである。

一貫して描かれているのは、理性と感情、リアリティとファンタジー、復讐と罰、
加害と被害といった対概念が徹底的に個人的具体的な戦闘の中で、結局のところ
対抗の概念が足りない境界不鮮明なアマルガムとして同時に立ち現れてくる諸相だ。
著者・伊藤計劃は、主要な語り手であるクラヴィスを戦わせるたびに彼に張り付いてくる。

犯罪者予備軍は法や倫理という拘束条件から解放された瞬間、犯罪者となる。
味を知らないなら、誰も蜂蜜を盗もうとはしない。きっかけさえあれば狂犬に変わる。
「犯罪者の存在さえ許さない社会は不健全」である。何を言っているのだと思うだろう。
しかし、完璧に殺菌された世界で育った人間こそ、ある意味どんな病人よりも弱いのである。
クラヴィスは人を殺しつつも自分が罰せられる事を切望している。不安定な人間である。
先進諸国の徹底された管理運営によって殺菌された社会で生きてきた弱い人間である。
そう遠くない未来に実現するだろうと予想する事が可能な程度の電子装備を身に纏い、
巧みに任務を遂行しながら、クラヴィスはまたしても生残してしまったことに臍をかむ。
ひたすら贖罪を求め続けるクラヴィスであるが、結末は誰も罪を認めてくれない世界だった。
兵士が人を殺す事、息子が母の延命を止める事、その罪を誰かに認めて弾劾してほしいと
望んだ彼はしかし、結局のところその罪を露わにされる事は叶わなかったのである。
そして最後はたった1つの言葉でアメリカを混沌に落とし込む道を選ぶ事となった。
その罪を自ら背負う事に決めたからであろうか?クラヴィスの内面が見て取れる。
特殊検索群i分遣隊大尉というある1人の戦闘員の話なのだから当然と言ってしまえば
当然で、それで終わってしまうのだが、本作の至る所から死の匂いが立ち昇っている。

しかしそれは実のところ、戦闘の描写に由来するだけでは無い。—最大の死の匂い。
それは著者・伊藤計劃の早すぎる晩年における熾烈な闘病の日々が作品に与えた陰翳の深さだ。
それを無視して「虐殺器官」の死の匂いを堪能する事は出来ない。避けてはならない。
著者・伊藤計劃のmixi日記に生前書かれた悲痛な叫び。勿論、悲惨な状況であっても笑いを
忘れなかった日記であったが、閲覧者を友人に限定した2009年2月7日の最期の日記には
「自分がどこまで弱い人間か」を但し書きを付け、迫り来る死に対する恐怖を綴っている。
人間の「死」と「生」。その相反する言葉を執拗に描いてきたその背景には、
当然、著者・伊藤計劃自身の過酷な闘病生活があってこそであると痛感する。
彼の心情を一切関わりの無い当ブログ主が勝手に心情を推測するのも少々心が痛むが、
しかしここまで知的に、そして死を恐れずに自ら正面に向き合った著者・伊藤計劃は凄い。
テロ、新自由主義経済、グローバリズム、民間軍事会社、環境破壊、貧困等、いま、
ここにある問題が恐ろしく冷徹に分析され、凄まじいまでの諦念と裏腹になった反撃攻勢。
日本SF全体にも大きな衝撃を与えたゼロ年代を代表する作家の正に「核」といえる存在だ。

日本の小説には稀な本格的国際軍事諜略サスペンスである「虐殺器官」。
その世界観を堪能する為の手段は読書だけでは無い。もう1つ、映像による鑑賞がある。
嬉しい事に今冬、フジテレビ「ノイタミナムービー」第2弾「Project Itoh」の一環として、
劇場での公開が決定している。是非とも「虐殺器官」の世界観を劇場でも堪能してみてほしい。



※PCの方はBGMを切ってからお楽しみください。このページの左側にあります。
↓参考画像↓
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次回†No.381‡は、
8月2日午前0時(8月1日深夜24時)に更新致します。

※当ブログ主の急な都合により、更新日が前後する場合があります。
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