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昭和40年代も終わろうとしている頃、新宿歌舞伎町のメインストリートから、


コマ劇場の脇を抜けて、歌舞伎町花道を職安通り方面へちょっと行った


裏手にそのクラブはある。


店のホステス ルミと常連客の田嶋とのたわいもない会話を聞きながら


ムード歌謡を紹介。




<主な登場人物> 


バーテン(チーフ)  ホステス:ルミ 明日香   客:田嶋  他

 





2009年11月13日

星降る街角

テーマ:曲名 は行
田嶋はお酒はけっこういける口だが、今夜は始めての店で、しかも

はしごとあって、緊張のせいか、いつもより早く酔いが回ったようだ。



田 嶋: 今日はちょっと酔ったみたいだ、珍しいな。


ル ミ: そう? 見た目はちっとも変わらないけど。

     そういえば、飲むピッチが速いせいかしらね。


明日香: そうね、ちょっと速いかしら?

     じゃあ、チェイサーでもつくりましょうか?


田 嶋: いや、まだ大丈夫ですから、ご心配なく。

     美女に囲まれて、飲んだせいかポーっとしただけです。

     少しペースダウンをすれば、まだまだいけますよ。


ル ミ: へえ、田嶋ちゃん、お世辞うまくなったじゃない!

     だんだん調子出てきたんじゃないの。

     じゃあ、その調子で歌でも歌ったら?




田 嶋: えっ! ここ歌えるの? もしかして・・


ル ミ: そう、あのステージで歌うのよ。



田 嶋: ダメダメ、とてもじゃないけど、恥ずかしくてダメだよ。


明日香: ええ、皆さん初めはそうおっしゃるけど、一度歌うと

     病み付きになっちゃうみたいなんです。

     気持ちがいいとか、プロの歌手になったみたいだとか

     言ってますよ。


田 嶋: そうですか? そうは言っても、心の準備がまだ

     できてませんからね、今度にしましょ、今度にね。



ル ミ: 田嶋ちゃん、けっこう意気地がないわね。

     まあ、今日は田嶋ちゃんを接待してるんだから

     言うこと聞いてあげるわね。




明日香: 田嶋さん、「今度」ということは、またきてくださるのね。
    
     うれしいわ、いつでもお待ちしておりますよ。


田 嶋: これは、これは、ママに1本とられたな。




ステージの演奏が、バラードからアップテンポの曲に切り替わった




ル ミ: 歌がダメなら、田嶋ちゃん、踊ろうよ!


田 嶋: でも、俺ってチークしか踊れないから、この曲じゃダメだろ。


ル ミ: 大丈夫よ、わたしが教えてあげるから、もう、四の五の

     言ってないで、 早く、早く。







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2009年11月11日

恋は終わったの

テーマ:曲名 か行


しばらくすると、ルミのボトルとセットが出てきた。








田 嶋: へえ~、ピンチか。 ルミ ってスコッチ派だったのか?


ル ミ: そんなんじゃないけど、名前が気に入っちゃってね。


田 嶋: ピンチだろ? どっちかというと嫌なイメージがあるけどな。


ル ミ: そこが、素人のあさはかさね。 グットこない? グット!

     まあ、田嶋ちゃんには、永久に無理かもねえ。


明日香: さあさあ、馬鹿なこと言ってないで、飲みましょう。

     田嶋さん、飲み方は水割りでいいかしら?


ル ミ: あっ、ママ! わたしがつくりますよ。


明日香: 何言ってんの、あなたはお客様なんですから、私に

      任せなさい。


ル ミ: そうですか、それじゃお言葉に甘えちゃいますね。

     田嶋ちゃん、水割りでいい?


田 嶋: うん、いいよ。 でも、薄くしてほしいな。


明日香: はいはい、わかりました。




そういうと、明日香は手際よく飲み物をつくり出した。




明日香: お待ちどうさま。 さあ、どうぞ!



ル ミ: それじゃあ、カンパーイ、お疲れさま~


田 嶋: 乾杯! 今日はありがとう。


ル ミ: それは、わたしのセリフです。 田嶋ちゃんありがとうね。



明日香: あらら、さっきから見てると、二人とも仲がいいわね。

     まるで、恋人同士のようだわ。



ル ミ: ママ、いやだー、そんなんじゃないですよ!

     田嶋ちゃんは、いい人だけど、でも、いいお客様なんです。 



田 嶋: あらららら、それって、褒められてるのかな?



ル ミ: もちろんでしょ! 最上級の褒め言葉じゃない。



田 嶋: そうかな、俺って、恋愛対象じゃないって聞こえたけどな。

     いいさ、いいさ、俺の恋は終わったって感じだよな。


ル ミ: もう、すぐ ひがむ。 田嶋ちゃん、歳とった証拠よ。








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2009年11月07日

献身

テーマ:曲名 か行
10分後、ルミは田嶋の腕を取りながら、歌舞伎町の裏通りを

大久保方面へと歩いていた。

2人は年齢もさほど離れていないせいか、遠くからみると、

客とホステスと言うよりは、まるで仲のいい恋人同士のようだった。



田 嶋:どこへ行くんだい?

ル ミ:すぐ近くのお店だけど、着いてからのお楽しみよ。





しばらくすると右手に、ネオンききらめく小奇麗なビルが見えてきた。



ル ミ:着いたわここのビルの4階なの。

田 嶋:へえ、まだ新しい感じのビルだな。





エレベーターで4階に上がると、そこはいきなりお店の中だった。




田 嶋:洒落てるね。それにいい雰囲気のお店だな。


ル ミ:わあ、よかった。 

    そう言ってもらと、連れてきた甲斐があったわ。





お店のほぼ中央にステージがあり、その上ではバンドが音楽を

演奏していた。

そして、そのステージの周りはダンスフロアになっていて、

それらを取り囲むようにテーブルが配置されていた。

うしろの方のテーブルは一段高いところにあって

どのテーブルからも、ステージがよく見える構造になっている。

ステージがあるせいか、ルミの店の3倍はあるかと思うくらいの広さである。


ルミと田嶋はステージにほど近い席に案内された。




田 嶋:こんなにステージに近い席、恥ずかしくないか?



ル ミ:ばかねぇ、私たちは見る側なんだから、

    恥ずかしいわけないでしょ。



田 嶋:そうかな、目と目が合ったら、とても恥ずかしいけどな。


ル ミ:もうしょうがない人ね、でも、そのうち慣れるわ。



田 嶋:?・・・ところで、この店 ルミの知り合いの店?


ル ミ:そう、ママを知ってて、たまに飲みにくるのよ。






そんなばか話をしていると、向こうからママがやってきた。



明日香:あら、ルミちゃんいらっしゃい。 よくきてくれたわね。


ル ミ:ママ、お邪魔してます。 こちら、私のお客様の田嶋さん。

    田嶋ちゃん、この店のママの明日香さんよ。


田 嶋:どうも、田嶋です。 今日はルミにくっついて来ちゃいました。



明日香:いらっしゃいませ! 田嶋さん、改めまして、明日香です。

    今日はゆっくりして行ってくださいね。


    そうそう、ルミちゃん、今日オープンだったわよね、

    行けなくてごめんなさいね。

    そのうち、暇になったら伺うから勘弁してね。

    
ル ミ:ママ、改まって何いうの、そんなことどうでもいいのに。

    それより、私のボトルまだあったかな?


明日香:あら、ごめんなさいね、私ったらおしゃべりに夢中に

    なっちゃって、お仕事しなくちゃね。

    たぶん、あると思うけど、なかったら1本入れとくけどいい?


    
ル ミ:はい、そうしてください。

    それに、今日は私のおごりだから、じゃんじゃん飲んでね。

    田嶋ちゃんも遠慮しちゃ、だめよ。



田 嶋:遠慮はしないけど、俺もう限界かもね。


ル ミ:何言ってんの、夜はこれからじゃない!


明日香:あらあら、お客様にそんな態度じゃダメじゃないの。

    それに、ルミちゃんのおごりって、誕生日か何かなの?



ル ミ:いえ、今日のオープンに田嶋ちゃんが来てくれたので

    そのお礼なの。

    田嶋ちゃんがいなかったら、私 オープン初日から

    お茶をひくことになってたかもしれなかったの。



明日香:へえ、そうなんだ、やっぱり銀座からだと新宿には

    足が遠のくのかしらね。

    それなら、ルミちゃん 田嶋さんにあんな態度じゃ

    ダメじゃない。もっと献身的な態度で接しないとね。


田 嶋:ママ、いいんですよ。 ルミが献身的になったら

    あとが怖いし、ルミじゃないみたいだから、

    このままが一番なんですよ。


ル ミ:田嶋ちゃん、それどういう意味?

    私、女らしくないってこと? もう!!




ステージでは、生バンドによる演奏が始まった。


   


 
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2009年11月04日

思案橋ブルース

テーマ:曲名 さ行

ル ミ: あ~あ、やっと閉店時間になったわ。 



田嶋ちゃん本当に帰っちゃうの?



田 嶋: うん、そのつもりだけど、なんで?




ル ミ: 今日わざわざ来てくれたのと、無理を聞いてくれたお礼が


したいんだけど、 これから飲みに行かない? ご馳走するわ!




田 嶋: まあ、明日はお休みだし、これと言って予定もないけど、


      そんなに、気を使わなくたっていいよ。




ル ミ: ううん、いいのよ、銀座から新宿へ移ってきて、


      すぐに駆けつけてくれたんだもの。


      ホント言うと、涙がでるくらいうれしくって、感謝してますって


      感じなの。


     だから、田嶋ちゃんをこのまま帰したら、わたしの気がすま


ないんだけどな。




田 嶋: いちいち、そんなこと気にしてたら、商売上がったりだぞ。


      でも、そこまで言われたら、男冥利に尽きるし、


断る理由もないし・・・。    じゃあ、お供しますかっ!




ル ミ: やった~、そうこなくっちゃ!




田 嶋: でも、ルミからそんな心情を告白されるなんて、初めてだな。




ル ミ: そうかも知れないわ、でもね、別に田嶋ちゃんの事を好きだとか 


言ってないわよ。


      ちょっ~と、勘違いしないでよね。



     
     
田 嶋: はいはい、今回はそういうことにしといてあげるよ。 




ル ミ:  もう・・・!  




田 嶋: それじゃあ、おれは外で待ってようかな?




ル ミ: いいの、すぐに済むから、ここで待ってて。 ね!




田 嶋: オッケー!




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2009年10月30日

泣かないで

テーマ:曲名 な行

田 嶋: 今日最後のリクエストか、じゃあ、俺もそろそろ帰ろうかな。



ル ミ: あら、まだ、いいじゃない。 今日は最後までいてよ。



田 嶋: なんで? これだけいたんだから、ルミの顔も立っただろう。



ル ミ: そうなんだけど、田嶋ちゃん帰ったら、他のお客さんのところに


     付かなきゃいけなくなるでしょ。
     
     そうしたら、また神経使うじゃない。 閉店まであと少しだから
    
     今日は付き合ってくれない? お願いしま~す♪



    
田 嶋: こんな時だけ、猫撫で声出されても、ありがたみがないな!


  けど、ルミの頼みは断れないんだな。 


      我ながら、変な性分だよ。 




ル ミ:  わーい、ありがとう。 だから田嶋ちゃんって好き。 チュッ♪



田 嶋: おいおい、こんなところで、普通そんなことするか。


     ほら、チーフが呆れてるぞ。 



    
ル ミ: いいの、いいの。 人は人、田嶋ちゃんは田嶋ちゃんでしょ。



田 嶋: それを言うなら、俺じゃなくて、ルミだろ。 


     それによく考えたら、余所じゃ神経使って嫌だってことは、
 
     俺のところじゃ、 神経使ってないって事か?  
    


    
ル ミ: え~ そんな風に聞こえた? おかしいな。


     ちゃーんと、田嶋ちゃんのところでも神経使ってますっ。


    
    
田 嶋: そうかな? ここは、仕事じゃなくて、休息の場なんじゃないか?



ル ミ: そんなことないです。 仕事してます!


じゃあ証拠を見せるわよ。  チーフ何か頂戴!



     
田 嶋: おいおい、乱暴だな。


     
     
チーフ:  えっーもう、オーダーストップしちゃいましたよ。


      でも・・・、まあ、ほかならぬルミさんの頼みだから、


      簡単なものなら出しますけど。



     
     
ル ミ: そうねえ・・・、簡単なもの・・・ 明太子にしようかしら。



チーフ: わかりました。



                



田 嶋: へえ~、おいしそうだ。



ル ミ: でしょ。さあ、食べて、食べて。 チーフご飯ある?




ステージでは、本日最後の曲の演奏が始まった。



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