2006-11-06 20:08:01

NHkブックレビュー異聞

テーマ:読書雑感

毎週日曜日のNHkBS2TVの「週刊ブックレビュー」を楽しみにしている。3人のゲストが各々3冊の本を紹介し、その1冊を合評するものである。昨日5日のゲストと紹介本は次の通りである。(2006年11月05日放送内容 ) その中では女優の岩崎ひろみさんの話は書評の体をなしていなく、痛々しさを感じてしまった。初めての参加ということもあるが、玉木正之さんの推薦した「これが経済学だ」については「経済学」の本ははじめて読んで参考になっただけで内容に触れた感想は聞かれなかった。また高野明彦さんの推薦した「縦並び社会 貧富はこうして作られる」についてはその現実にはびっくりしたの感想だけであった。何が参考になったのか、何にびっくりしたのかこれ位は言うべきであるのに何も言わなかった。

私は何も岩崎さんを責めているのではないが、これらの紹介本を通していろんなジャンルの方が自分の考えを述べるのがこの番組の趣旨であるのに、彼女の発言にはいささか戸惑ってしまった。NHKは名うての書評家だけの書評ではなく、いろんな方の参加でこの番組を盛り上げようとする気持ちはわかるが、これでは視聴者に失礼である。

さらに奇怪なのは岩崎さんが紹介した「ほっとけない 世界のまずしさ」である。これは世界の貧困についてイラストやデータを紹介したものであり、NHKはうまくその内容を紹介しているが、彼女は世界各地に出かけ貧困の様子を見てきただけの話をしてその内容を紹介しようとしなかった。

実はこの本はその内容もさることながら、ホワイトバンドを買うことで世界の貧困を救おうと運動組織の連結しており、早速岩崎さんの紹介したこの本がホームページほっとけない 世界のまずしさ にNHKBSに放送されたことが宣伝されていた。この運動については昨年あたりから胡散臭さが指摘されていた。HP、FrontPage ではその問題点を述べているがその真実はよくわからない。

岩崎さんはこれらの背景がわからず純粋にこの本を推薦したものと思われるが、高野さんが番組で指摘していたように、この運動と本のかかわりをについて検証してみる必要がある。

ほっとけない世界のまずしさ編集  ほっとけない世界のまずしさ 扶桑社 2006年8月刊

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2006-11-05 18:27:00

作家・小島信夫氏逝く

テーマ:書評

体調不良でしばらくご無沙汰してしまった。その間、作家小島信夫氏が10月26日ご逝去された。彼の遺作となってしまった「残光」を読んで数ヶ月経つが、その内容の複雑さを頭で整理できず、感想を書けないままにいたが、その前に91歳の老作家、小島さんは逝ってしまった。この作品は介護施設に入っている妻への思いと自らの身辺雑記から,作家保坂保志との対話、そして過去の作品「菅野満子の手紙」「寓話」「静謐な日々」などの解釈、思い出と自由奔放に飛び、小島文学を全体を描いているとは思いながらも頭が混乱するばかりであった。

彼の代表作、「抱擁家族」は大学教師,俊介の妻時子とアメリカ兵の姦通を通して、夫婦、家庭の崩壊を描き衝撃を与えた。それは従来の日本の男女の倫理がアメリカ文明のもとに否定された日本の戦後の精神状況を捉えたものではなかったかと記憶している。しかし,小島さんはこの「残光」の中で、「満子の手紙」を通して「俊介でもあなたっだていいけど、あの事件が起こったあとーわたしはあんなもの事件とは思っていなけどー 時子があなた、こんなことにうろえてダメよ、といったのはあなたの創造した満子なのだから、それを再現したのだから、というわけよ。あの満子以外のことは時子はどうでもいいことだだったのよ」と編集者に述べたくだりが紹介されている。残念ながら「菅野満子の手紙」は読んでいないが、小島文学を知る上で是非読んでおきたい本である

このようにこの「残光」は小島文学を知る上に参考になるが、私には認知症で殆ど記憶を失っている妻との心のふれあいが胸に響く。この作品の最後の部分である。『十月に訪ねたときは横臥していた。眠っていて、目をさまさなかった。くりかえし、「ノブオさんだよ、ノブオさんがやってきたんだよ。アナタのアイコだね。アイコさん、ノブオさんが来たんだよ。コジマ・ノブオさんですよ」と何度もはなしかけていると、眼を開いて、穏やかに微笑を浮かべて、「お久しぶり」といった。眼をあけていなかった。』

その小島さんが病棟に臥せる愛する妻を残して最後の光を放ち逝ってしまった。彼の残した作品の多くは、評論家たちはは戦後文学史上「第三の新人」として遠藤周作、吉行淳之介などとともに高く評価されているが、私にはこの「残光」での最後の妻への叫びが心に残ってしまうのである。老境に近づいている自分のことを考えるとなおさらのことである。

小島信夫著   残光  新潮社2006年5月刊

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