あれ以降、里美からはちょくちょくメールと電話がくるが、特に宇井君に張り付いている訳では無いので進展はなかった。
俺も仕事に追われてなかなかそこまでできていないのが本当のところだった。
ななさん祭りの件は毎週のように打ち合わせが行われ、進展状況はすこぶる順調だった。
梶さんも大樹とアズオが来ると言う事で俄然やる気をだしてくれて、6丁目は一番活気が出てきていた。
誠司さんも1丁目のバザーの出店をまとめてくれているようでかなりいい感じだった。
このまま何も無く当日を迎えられ事を本当に願うばかりだった。
「菊の字、明日頼むよ。早苗先生が期待してたからね」
なんだよ鼻の下伸ばして、このエロマスターが!
「準備万端だよ、ご心配なく。」
「俺も一応顔だすから」
はぁ、何でマスターが顔だすかね。せっかくの休みが2週続けて無くなる事になんとも憤慨していた。
「あっそう、じゃ遅れないようにね。9時からだからね。」
どうせ早苗先生に会いにくるだけだろう。確かに年のわりには綺麗な先生だった。親父達がお熱を上げる雰囲気をかもし出してはいた。
なんだか機嫌よくマスターは引き上げて行った。それと入れ替わりでまたもや大きなバッタサングラスの里美が現われた。
「おはよう、ちょっといいかな?」
何だよ、いきなりお店に現われてどうしようってんだ。
「何、どうしたの?」
「やっぱり、あの長谷川とか言う女が彼女じゃないの?」
そんなの知らないよ、この前違うって事で話が終わったじゃないか。
「何でそう思うの?」
「この前の日曜日にあたしファッションショーに出てたんだけど、そこのあの二人が来てたのよ」
そりゃ、行くでしょうよ。二人ともファション業界の人なんだから。
「やっぱり怪しいから、今から探りに行くの。」
あぁそうですか、どうぞ存分に探ってください。宇井君は決してぼろは出さないと思うけどね。
「で、一緒に行こうよ!」
で、って何だよ。俺が行ってもしょうがないし、逆に一緒だと変に思われるよ。
「いやいや、それは無理だよ。俺今から配達あるし・・・」
里美はちょっとふくれて見せた。
「菊さん、配達俺が行きますからちょっとなら大丈夫ですよ」
バカヤロウ!信二!余計な事を言うんじゃないよ。やんわり断ったんだから。
空気読めよ空気をよ。どうするんだよ、断れないじゃねえか。
「いいって言ってるから、ちょっと付き合ってよ」
ほら、言わんこっちゃない。ややこしいんだから。
しょうがなしに30分と言う約束で里美に付き合う事にした。
さすがに街中歩くと、里美はオグサトオーラ満開で行きかう人が視線を向けてくる。
俺は微妙な距離を取りながら一緒に『リップル』に向かって歩いた。
「宇井君に何て言うつもりなの?」
「わからないけど、この間の女は誰って聞いてみるかな?」
お前は彼女か!この前の女は誰って聞いたところで、仕事関係って逃げられるだけだよ。
実際、俺が横にいて何の利点があるのかわからないだろう。
そうこうしている間に『リップル』に着いた。修羅場とかにならなければいいけど。
店内はパラパラとお客さんがいた。宇井君はいつものカウンターの前でパソコンをいじっていた。
里美は目もくれず宇井君のところに歩み寄った。
「こんにちは」
満面の笑みで話しかけた。気がついた宇井君は驚いたように顔を上げた。
「やぁ、里美ちゃん。どうしたの」
いきなり始まるのか?
「ちょっと近くに来たものだから、宇井さんの顔でも見ようかなと思って」
「それはうれしいね。」
おいおい声のトーンが違うじゃねえか、何だよ、その可愛らしさ満開な声は!
明らかに目が好き好きオーラでキラキラしてんじゃねえか。
「おーお、菊ちゃんどうした?」
里美の後ろにいる俺を見つけて不思議そうに見た。
「いや、あの・・・」
何て言えばいいんだよ。
「あっ、そこで偶然お花屋さんに会ったから、一緒に行きましょうって誘ったの」
そこで会っただ、お前店まで誘いに来て強引につれてきたんだろうが!
宇井君は不思議そうな顔しながも、納得したようだった。
里美はたわいもない話を続けている。俺は何もする事がなく陳列されてる靴を眺めていた。
何で俺はここにいるのかな。
いつまで経っても本題に入らない里美にイライラしていた。
俺は時計を気にするそぶりをした。
「なんだ、菊ちゃん時間無いのか?」
「そろそろ配達の時間だなぁと思ったりして・・・」
「あら、そうなの?ごめんなさん誘ったりして、後でお花買いにお店に寄せてもらいますね」
何だ!そのセリフは!この小娘生かしちゃおかねぇ!
女って生き物はまったくわからないよ。結局俺は何の為にここに連れてこられたんだよ。
いやいや、わからんわ~。
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