1945年8月15日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐵造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産のほとんどを失い、借金を背負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな闘いが始まる。


敵は七人の魔女。待ち構えるのは英国海軍。ホルムズ海峡を突破せよ。

戦後、国際石油カルテル「セブン・シスターズ」に蹂躙される日本。内外の敵に包囲され、窮地に陥った鐵造は乾坤一擲の勝負に出る。それは大英帝国に経済封鎖されたイランにタンカーを派遣すること。世界が驚倒した「日章丸事件」の真実。



百田氏『海賊とよばれた男』がはやくも文庫になって刊行されています。

内容としては、筆者も隠してはいないようですが、出光興産創業者「出光佐三」をモデルとした、経済歴史小説です。事実を基にしたフィクションのようですが、wikipediaなどを確認してみると、あらすじなどはほとんど事実と相違ないようで、そのあたりに詳しい方には真新しい内容ではないでしょう。


本作は、国岡鐵造の伝記的な小説です。出生からその最期まで、網羅的にエピソードを盛り込んで一冊(上下巻ですが)の本に仕上げています。鐵造に大きな影響をあたえた、恩人や、カリスマ性に引き寄せられた優秀な部下たちが、国岡商店を熱く熱く盛り上げていきます。そういうエピソードが数多くあり、そのたびに胸が熱くなります。ワンパターンではありますが。


戦前から戦後にかけて、大活躍した国岡商店(出光興産)の創業者の経営と、従業員の献身をこの一冊(上下巻ですが)で垣間見ることができます。ただ・・・現在の若手ビジネスマンがこれを読んで、共感を得られるか、という点においては非常に疑問です。出勤簿もない、クビもない、定年もない、というのは鐵造の「従業員は家族」という経営方針の表れですが、逆にいうとプライベートも糞もない、ということに他なりません。高度経済成長期を戦い抜いたおじさんたちはとっても共感しそうですが、少なくとも私には時代遅れの経営すぎてなんとも。


鐵造「経営方針をこうする」

役員「お言葉ですが、それは難しいと思います。」

鐵造「もう決めたから」

役員「・・・」


こういうシーン、何回も出てきます。ただのワンマン経営です。


鐵造「工期10ヶ月でやれ」

技術「2年はかかります。」

鐵造「10ヶ月」

技術「・・・。」


技術「なんとか間に合いました。従業員は瀕死です。」

鐵造「ブワァァ(涙)」


いやいやいやいや。まぁ、戦後以前の日本を取り戻すために、必死だったとはいえ、このころの日本はある意味おかしかったのでしょう。ものすごく宗教的で、怖い。そのおかげで今の日本があることも確かですが、ことさらに美化するような内容は、ちょっと違うような気もします。このような内容もふんだんに盛り込まれており、若い方にはいまいち通じないのかなぁ、という感想を持ちました。


とはいえ、0から出発した国岡商店(出光興産)を従業員1万人の大企業へ育てあげた手腕はほんものだと思いますし、これをエピソードにして本作にまとめた百田氏の力は見事だと思います。

こっそり『永遠の0』の登場人物がお目見えしますので、お読みの方はニヤリとするシーンです。

現代の経営の参考にはなりそうもありませんが、艱難辛苦を乗り越えての経営者のサクセスストーリーとしては、純粋に楽しめるかもしれません。


オススメ度 ☆☆


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