1000年後の日本。豊かな自然にだかれた集落、神栖66町には純粋無垢なこどもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの街には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨くこどもたちは野心と希望に萌えていた・・・。

隠された先史文明の一端を知るまでは。(上)


街の外には出てはならない――禁を犯したこどもたちに倫理委員会の手が伸びる。記憶を操り、危険な兆候を見せたこどもを排除することで実現した見せ掛けの安定。外界で繁栄するグロテスクな生物の正体と、空恐ろしい伝説の真意が明らかにされるとき、「神の力」が孕む底なしの暗黒が暴れ狂いだそうとしていた。(中)


夏祭りの夜に起きた大殺戮。悲鳴と嗚咽に包まれた町を後にして、選ばれし者は目的の地へ急ぐ。それが何より残酷であろうとも、真実に近づくために。

流血で塗り固められた大地の上でもなお、人類は生き抜かなければならない。構想30年、想像力の限りを尽くして描かれた五感と魂を揺さぶる記念碑的傑作。



ついに、読んでしまいました。

貴志祐介「新世界より」です。上中下、あわせて1400ページを越える超大作。


1000年後、遠い未来の日本を描いたSF+ファンタジーの設定です。1000年後の世界では、科学的に照明された超能力「呪力」を用いた生活が主流となり、誰もがその力を使うことができます。その強大すぎる力を得る代償として、子どもたちは、大人たちから厳格に管理・教育される世界に置かれることになります。力をうまく扱えない子や、力を持ちすぎて暴走しそうな子。気がつくと、いつのまにかクラスから消えていて、そして、記憶からも消えている、そんな恐ろしい世界です。


主人公の早紀は、平凡な呪力をもったこども。

この物語は、早紀の手記という形で、幼い頃から大人になるまでのあれこれが語られています。

序盤では、早紀と仲のいい4人の仲間たちと、大人たちのいいつけを破っての冒険が描かれます。そこでは、おとなたちが”禁忌”としている先史文明を知る手がかりを見つけてしまい、彼らは真の歴史を知ってしまうことになります。おとなたちに排除されそうになる早紀たちはどうなるのか。


中盤では、「悪鬼」「業魔」と呼ばれ、こどもの頃から言い聞かせられた一種の都市伝説となっていた化け物の真の姿が明らかとなり、仲間の一人が「業魔」へと変貌してしまう物語が描かれます。もっとも優秀で、もっとも才能にあふれていた生徒が、自らの力の暴走により死への歩みを始めてしまう哀しい物語でした。


終盤は、大人になり就職した早紀が、都市伝説の一つである「悪鬼」と戦う物語となっています。

こいつには「呪力」は効かないし、町の有力な者も次々と殺され、ものすごい絶望感が襲ってきます。

バケネズミという、人類の奴隷種族の反乱と悪鬼の登場で、グロテスクな展開となっています。



非常に練られた設定です。構想30年というだけはあります。描写にない部分も設定はされているんでしょう。一言では書ききれません。

設定はSF、呪力というのはハイ・ファンタジーな内容ですが、物語の展開はまさにミステリー。悪鬼に迫られる様子は、良質のホラー。貴志氏の強みを集結させた、濃密な作品です。

人はどんどん死んでいくし、主人公も首の皮一枚でつながったシーンがいくつもありました。どきどきしながら読み進めるうちに、最後のページを迎えます。どうみてもこれはSFの皮をかぶったホラーです。

気をつけてください。



オススメ度 ☆☆☆☆



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