若くして成功した夫との新しい生活。

だが予期せぬ妊娠に中絶という答えを出したときから、夏樹果波の心に異変が起こり始める。自分の中に住み着いた別の女―――精神の病か、それとも死霊の憑依なのか。治療を開始した夫と精神科医の前には想像を絶する自体が待ち受けていた。



高野氏のK・Nの悲劇を読みました。

江戸川乱歩賞作「13階段」を読んで以降は気になる作家の一人です。本作は、かなりデリケートなテーマである妊娠・中絶を取り扱っています。


若くして出版した書籍が20万部を超えるヒット作となり、一躍成功したかに見えた主人公・夏樹修平とその妻・果波。マンションも買い、順風満帆な人生を送るかに見えたところ、妻の妊娠が判明。子どもを育てるにはまだ経済的に苦しいと判断した修平は、出産を見送ることを決意し、妻に伝えました。

その後、妻の行動に異変が。


妻の周りで超常的な現象が起こり始めます。まるで、家の中にもう一人いるような気配、変わってしまった妻の顔、声、性格。謎の停電、いつのまにか引き裂かれたドレス・・・妻は、悪霊に憑依されてしまったのか?病的なものとも、心霊的なものとも判断がつかず、精神科医・磯貝の力を借りて、なんとか妻を治してやりたいとの一心で、修平は謎の解明に努めます。


何にも考えずに子どもは作るなよ、というありきたりの主張を、ホラー・サスペンス風に仕上げた本作です。女性には子どもを産み、育てたいという本能がある、それを否定することは決して行ってはならない、もしそれを行うのであれば、命をかけろ、という重い重い結論です。

ホラーチックではありますが、結末としては丸く収まり、読み味はすっきりです。ですが、中盤は本格的なホラーです。久しぶりに背筋が凍る小説を読んだ気がします。



オススメ度 ☆☆☆☆




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