麒麟の翼:東野 圭吾

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「私たち、お父さんのこと何も知らない。」胸を刺された男性が日本橋の上で息絶えた。瀕死の状態でそこまで移動した理由を探る加賀恭一郎は、被害者が「七福神巡り」をしていたことを突き止める。家族はその目的に心当たりがない。だが刑事の一言で、ある人物の心に変化が生まれる。父の命がけの決意とは。



本作はまちにまった『刑事・加賀恭一郎シリーズ』の第9作目の文庫版です。最初の3ページくらいですでに人が死んでしまうのですが、その死因が不自然な他殺。それも胸を刺されてからかなりの距離を移動していることがわかります。当然不審に思った刑事・加賀恭一郎はその謎を追うため、捜査に乗り出すことになります。


最近読んでもいまいち響いてこなかった氏の作品ですが、こういうものが読みたかった、と思える作品でした。シリーズ前々作あたりで、亡くなった加賀の父親の三回忌。父親が死んだあとの加賀の態度も頑なな様子。それをいさめる従弟の刑事・松宮、父の最期を看取った看護師さんやら、過去作のキャラクターも再登場し、ちょっとニヤリとする展開です。


物語の展開としては、オーソドックスな刑事ものです。一見明らかと思われる容疑者に食いついた警察でしたが、執拗な加賀の捜査により、新たな局面を迎え、最終的に驚きの結末へ――という鉄板な展開。テンプレ気味なストーリーではありますが、加賀シリーズで読みたいのはこういう作品なのでまったく問題ないです。たぶん。


メインテーマとして取り扱ったのは、親子の絆。特に被害者が息子に対して持っていた愛情に対して、息子が気づき、自ら行動する様子を描いたシーンはなかなかに感動するものがあります。加賀も少し心動かされたようでした。


「上の人間がどう判断するかなんてことは下の者が考えなくていい。俺たちのすべきことは、事実を明らかにしていくことだ。固定観念や先入観を捨て、事実だけを拾い上げていけば、全く想像もしていなかったものが、見えてくることもある。」とは加賀の弁。

徹底した現場主義を貫き、ひとつの謎も残さないという信念を持って捜査にあたる彼の魅力がこの本に詰まっていました。


あとカバーデザインもかっこいいです。


オススメ度 ☆☆☆☆


麒麟の翼 (講談社文庫)/講談社
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