空白の殺意:中町 信

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大仰ではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまでひっぱって行く『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私は躊躇わずに、本作を筆頭に上げている。(中町 信)

高崎市内の川土手で私立高校に通う女生徒の扼殺死体が発見される。その二日後、今度は同校の女性教師が謎めいた遺書を残して自殺する。そして行方不明だった野球部監督の毒殺死体が発見されるに及んで、俄然事件の背後に甲子園行を目指して熾烈な闘いを繰り広げている学校同士の醜い争いが炙り出されてくる・・・。「模倣の殺意」「天啓の殺意」のトリック・メーカーが、ひそかな自信をもって読者に仕掛ける巧妙な罠。改稿決定版。

本作は、「高校野球殺人事件」として発行されていた作品を改稿して文庫出版したものです。トリックメーカーと呼ばれてる氏の作品ということもあって、ストーリーよりもトリックのひらめきに重点が置かれた印象は読んでいて感じることができます。あらすじのとおり、死者は多いのですが、エンターテインメント性があまり感じられず、本格ミステリの要素が強いので、ちょっと重い読後感です。派手さがなく、手堅いミステリだなと思いました。ミステリ読者が本当に求めている作品というのはこういう作品なのかも知れません。

シリアス一辺倒ですが、面白くないわけではありません。ちょっとした伏線や、読者を騙す表現は王道。おお!というより、なるほど!と思わせる書きぶり。一気に読みたい本でした。

オススメ度 ☆☆☆

空白の殺意 (創元推理文庫)/東京創元社
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