BT’63:池井戸 潤

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父が遺した謎の鍵を手にすると、大間木琢磨の視界に広がるのは、四十年前の風景だった。若き日の父・史郎が体験した運送会社での新事業開発、秘められた恋・・・。だが、凶暴な深い闇が史郎に迫っていた。心を病み妻に去られた琢磨は、自らの再生をかけ、現代に残る父の足跡を調べる―――。


呪われたトラックBT21号の運転手四人が次々と殺され、史郎が精魂を注いだ新事業も立ち行かない。すべては闇の住人・成沢が仕掛けたことだった。愛する鏡子まで成沢の罠に陥り、史郎は苦悩の選択をする――。一方の琢磨は、現代に残っていたBT21号を手に入れる。「物語」のすべてがつまった圧倒的大作。



池井戸氏の長編ミステリです。文庫版は上下巻となっており、なかなかの分量になっています。本作は、あらすじのとおり、ミステリ&サスペンスな内容になっています。主人公の大間木琢磨は、元銀行員。精神を病み、回復した時期に亡くなった父の遺品を見つけます。鍵。その鍵に触れると、琢磨は気を失い、何故か昭和38年、父が生前見てきた映像を見ることができ、当時の状況を追体験していくことになります。一方で、琢磨の父・史郎も昭和38年当時、とても苦しい時代を送っていました。運送会社の総務課長として、いろんなトラブルに巻き込まれたり、新事業を起こすもうまくいかなかったり、会社は倒産したり。そんな当時の情景を全て見たとき、息子の琢磨は父への尊敬の念を抱いていくことになります。


氏の銀行ミステリはリアル志向ですが、本作に関していえば、幻想的な雰囲気を持った作品です。父の当時の状況を、夢で細部までみることができ、何故か想いを伝えることもできる、そんなファンタジックな要素が包含されています。昔プレイしたFF8が似たような展開だったような。また、主人公が病んでいることに加えて、元妻の置かれた状況についても、不遇。主人公に近しい人はあまり幸せな結末を迎えることもありませんし、終始陰鬱な雰囲気が漂っているので、最後まで読んでいくのにちょっと時間がかかりました。何しろ人が死にまくります。


BTとはボンネット・トラックの略。史郎の勤める運送会社に配置された一台のBT。「BT21」。かかわった人間たちが死を迎えてしまう呪われたトラック。この作品は、そんな呪われたトラックの始まりから終わりまでを描いた作品でもあります。それに絡めて親子の絆みたいなものを描こうとした意図は伝わりますが、いかんせん、死んでいく人たちの死に様がいちいちグロいので、感動的なストーリーが頭の中から飛んでいってしまいました。感動とグロは相容れないです。一応の決着はあるので、物語としてはよくできていると思いますが、面白い、と感じる人は少ないかもしれません。


オススメ度 ☆☆


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