イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯するとき、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は――人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント。


研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。一方、戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。人類の命運を賭けた二人の戦いは、度重なる絶体絶命の危機を乗り越えて、いよいよクライマックスへ――


高野和明氏のジェノサイド。2012年のこのミス1位作品が上下巻で文庫化されています。本作は、あらすじのとおり、ミステリというよりは純粋なエンターテインメント作品となっており、政治・経済・ウィルス研究・テロ・新生物など、いろんな要素が交じり合った作品です。主として、二つの主人公の視点で物語が描かれており、一人は戦場を居場所として民間軍事会社を転々としてきた、アメリカ人傭兵・イエーガーが極秘ミッションをアメリカ政府・ホワイトハウスから依頼されるという、「スリル」を描いたストーリー。もうひとつは、薬学部に籍をおく、どこにでもいる普通の学生・研人が父親の死後、奇妙な遺言を受け取ったあとから展開していく、アドベンチャラスなストーリーです。どちらのストーリーも、個別に読んでも綿密に練られたシナリオで、その両者の関係が明らかにされていくにつれて、ますますページを繰る手が止まらなくなります。

タイトルとなっている、ジェノサイド。虐殺の意ではありますが、グロテスクな場面が頻繁に登場するわけではなく、とても本書の本質を捉えたものという印象を読後に持ちました。ネタばれっぽくなるので書けませんが・・・。若干ご都合なところはあるものの、エンターテインメント作品としては高い完成度で、誰が読んでも(女性は戦争や軍隊ものには惹かれないかという懸念はありますが)楽しめる作品なのではないかと思っています。

以下が、父親から主人公へ託されたメモ(遺書)の一部。これをみてワクワクした人は買って読むべきです。


「研人へ

1.この本とメモはすぐに処分すること。
2.机の引き出しに、黒い小型のノートパソコンがある。それを保管してくれ。決して他人の手に渡してはならない。
3.略
4.略
5.これらすべてのことは絶対に他人に言ってはいけない。全てをお前一人で内密に行え。母さんにも話すな。今後、お前が使用する電話、携帯電話、電子メール、ファクシミリなどのあらゆる通信手段は、盗聴されているものと思え。」

――メモはそこで終わっていた。


オススメ度 ☆☆☆☆☆







ジェノサイド 上 (角川文庫)/KADOKAWA/角川書店

¥630
Amazon.co.jp

ジェノサイド 下 (角川文庫)/KADOKAWA/角川書店

¥672
Amazon.co.jp