ある町の銀行の支店でおこった、現金紛失事件。女子行員の疑いがかかるが、別の男が失踪・・・?
”たたきあげ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上がらない成績・・・事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。二転三転する犯人捜し、組織の歯車の中でリアルな生が交差する、圧巻のクライムノベル。


池井戸氏の銀行ミステリ小説です。本作は、短編立てでひとつひとつの小さな物語が語られるオムニバス形式。かと思いきや、最終話まで、全てストーリーにつながりのある、長編ストーリーとなっています。

理不尽なほどきついノルマ。面倒な人間関係。有能な同期に対する複雑な気持ち。タチの悪い上司。そして家族。彼らの悩みは、すべての給与所得者にとっての悩みである。嘘くさいスーパービジネスマンなど出てこない。行員はみな、僕たちと等身大の人間ばかりであり、ぼくたちにも身近な問題に悩む。ちっとも他人事とは思えないのだ。(解説 霜月 蒼氏の引用)

霜月氏の解説からもわかるように、とても人間くさいテーマを選んで書き上げた作品になっています。ですが、銀行ミステリの看板に恥じず、サスペンス的な展開やフーダニットなミステリ的要素も盛り込みながら、重厚な一大長編に仕上げているところは、氏の持ち味であり、読者が待ち望んだもののように思えました。

やられたらやり返す、ではありませんし、正しいものが勝つ、とも限りませんけど、不思議と読後感は爽快。身近な問題なだけに、自分も銀行員の一員になったかのような、感覚に陥りそうになりました。なかなかの名作でした。面白い。


オススメ度 ☆☆☆


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