「あぁ………もう、離してください!」
ゆらりと揺れるランタンの炎が照らす石畳のエントランス。
「だぁぁぁーー!!これが離せるかっ!頼むから、はやまるなっ!!」
「嫌です。」
にっこりと笑ってマントに縋る歩行の妨げを見下ろす、ひくっとひくつかせた口元が叫ぶ。
「お…お前はっ!お前は『魔王』なんだぞぉーーー!?」
知ったことか………どうせこの身に流れる血はあの娘とは違うもの。
そんな事、言われなくたってわかってる。



こうなると思ったからこっそりと出掛ける準備をしていたのに。
最近、この城を抜け出そうとし過ぎだからか監視の眼がきつくなっていて玉座の間から出たあたりで社さんに捕まってしまった。
「………おい、どこに行くつもりなんだ?」
じとりと俺を見る非難の目。
「大丈夫、自国内です。国境はこえません。東の森林へ行くだけですから………」
彼女のいる人の国に行くのさえ大業な意味を持ってしまう我が身が呪わしい。けれど、今日の目的はその地ではない。
「東の森林って、そんな辺境に行ってどうするんだ?」
疑惑の目をグラスの向こう側から向けてくる社さんに、はしっとマントを掴まれた。目的を言うまで離すつもりはないとでも訴えるように強く。
「…………弟子入りしようと思いまして」
ぼそりと零せば社さんの目が驚愕に見開かれる。
「あそこにいるのは低レベルなモンスターだけだぞ!?」
「でも!そこにいる彼らだけが俺に必要な『スキル』を持ってるんです!!」
あの技さえ習得出来れば、きっと彼女を…………



なのに、邪魔しないでくださいよ!
俺が彼女を手に入れるのを応援してくれてたでしょう?
「落ち着けっ!あれは、あの森にいるやつらは………」
ええ、解ってますよ。しっかり理解してます。
でも、彼女を!
『勇者』のキョーコちゃんを傷付けずに手に入れるためには打ってつけじゃないですか!!


「だいたい、お前!『あまい息』なんて覚えて、キョーコちゃん眠らせてどうするつもりなんだ!?」


「そりゃもちろん、攫って来ますよ。この俺の巣穴、魔王城の奥の奥……俺の寝室あたりまで。あとは、観察して触れて味見して、きっちりとあの無防備な恋愛拒絶型曲解思考回路搭載のあのかわいい生き物に俺の愛を思い知ってもらいます……あぁ、この前、射影機なんて便利な物貰いましたから、撮影もしておきましょうか?」


「ひぃ!顔!顔が恐いことになってる!……撮影って、お前!?寝顔…だよな?既成事実な物証突き付けて脅すとかやめてあげろよ!?」


しがみつく半泣きのメガネの宰相を文字通りに引き摺るように長く引かれた緋色の絨毯を城門へと歩く。
少し重いくらいなんだ、ブリザードがちょっと寒いけど問題ない。
誰にも邪魔なんてさせてやるものか!
さぁ、あの光の加護を受けた『勇者』の必殺技なハニースマイルとか怨キョなんかで逃げられてばかりな君を手に入れるために………
そのためなら、菌類型なモンスターに弟子入りだってしてみせる。



「待て!待て!!蓮、無理だって!お前は『魔王』なんだからっ!そんな低『スキル』、しかも状態異常系で攻撃力ゼロなんてそんなの『魔王』の攻撃じゃないだろっ!?習得出来るとは思えないって!!」


「やれば出来ます!俺だって、モンスターなんですから!!」


「いや、『魔王』様がキノコの弟子とか、ほんとやめてくれぇーー!!」






その頃、人の国で『勇者』なんて呼ばれてしまっている彼女。その彼女は、親友から贈られたお気に入りの『状態異常無効』なネックレスを装備してゾワリと悪寒に震えていたとか、いないとか。




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なんぞ、これ?
(´Д` )


飴なぅで、某ゆるえもん様と遊んでたらいつの間にか蓮さんがマタンゴー(眠り状態にするあまい息を吐くキノコなモンスター)になっていた………そんなとこから、ぽちぽちと悪ふざけてみたものにてございます。
意味不明でごめんよぅ。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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