猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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「ダメ………行かないで。」
あのストイックなまでに仕事に厳しく真面目な方が………なぜ?



目が覚めてから、悩みに悩んだ。
だけど、あぁ、現実とは非情である。
この横でしどけなく色気を振りまいて眠るひとはすやすやと睡眠を貪るばかりで起床してやくれないし、私にはありがたい事に結構詰まったお仕事のスケジュールがあるのだった。
自然に起きていただいて相手の出かたに合わせてしまおう………きっと、それが一番敦賀さんが望む私との関係を示してくれるはず………だって、このひとは天然のタラシでコマシな遊び人だし、慣れてるでしょう?………なんて目論見はタイムリミットを目前に諦めざるを得なかったの。
だから、私はこそっとベッドを抜け出して、あちこちに軋むみたいな違和感を訴える身体を引きずってシャワーを浴び仕事へ向かうべく準備を整えた。


そうして、私は自分の寝室のドアの前で悩んでしまっている訳にごさいます。
だって、どうしよう?
何も言わずにこのまま放置………それもなんか恐ろしような気がしてしまう。
あー、もう!敦賀さんに何か致命的な事を言われてしまうまで昨日の夜のことには触れずにその場の空気に合わせてしまおう。
迫るタイムリミットに半ばヤケになったようにそう決めると、寝室のドアを開けた。




「おはようございます、敦賀さん。」
挨拶は大事、そう教育を受けた………このひとに。
だから、ちゃんと朝の挨拶をし、仕事があるので出なければならないと告げた。
ありがたいことにこの部屋はオートロックだし、この偉大なる先輩は売れっ子でぎちぎちの秒刻みなスケジュールのお方だ。
なんともなかった顔が出来てしまうまでの時間を会わずに過ごすなど容易なことでしょう?
そう思ってたのに………
「ダメ………行かないで。」
私の腕を掴んだ敦賀さんが真剣な顔でそんなありえない事を。愕然と、それこそあぐりと口を開けてかたまってしまう。
「危ない。そんな脚出して外になんか行ったら、ダメ。」
脚?敦賀さんの視線が私の脚に落ちる。
別にセッちゃんみたいにマイクロミニとか履いてない。ただの普通なショートパンツにニーソックスだ。
「それに、美味しそうな鎖骨も出てる。危ない。」
つぅっと指先でカットソーから覗く私の鎖骨をなぞる敦賀さんは……寝乱れた髪と惜しげも無く晒されたなめらかな肌の、夜の帝王の気配で……
「す、すいません!も、本当に時間がないのでっ!!」
こ、ここここのひとは寝ぼけてらっしゃるんだわ!!よくわからない事を仰っているのは、きっとそのせいよ。
混乱する頭でそう決めるとベッドの上に敦賀さんを残して、脱兎の勢いで私は自宅から逃げ出したの。




いやな………なんとなーく、いやな予感はあった。
ギシギシと重い身体を騙し騙しなんとかやっとお仕事を終えた。
スタジオの駐車場、そこに止まっていたのはイヤでも目に入ってしまう見覚えのある高級車。
その前に立っているのは、サングラスを掛けてはいるが隠しきれてやしない秀麗なかんばせと神が作りたもうたパーフェクトボディーのお方。
その方を見つけてしまってからこっそりと踵を返し、逃亡を図ろうとした私はあっさりとそんな彼に捕まったのだった。




そうやって詰め込まれてしまった助手席。
横でハンドルを握るひとはブツブツと苦言をこぼしている。
「危ないだろ?そんなありえないくらい綺麗でかわいいくて魅力的なのに、マネージャーもいないままひとりでふらふらして」
一体どこで頭をぶつけて来たのだろう?
カチャリと手の中で、ついさっき横の彼から押し付けるみたいに渡されてしまった防犯ブザーが音を立てる。
チャームが付いてたりパール加工だったりで全体的にかわいいデザインのそれ、なぜ4つも5つもあるのかもわからない。
「マネージャーを………いや、いっそSPの手配が必要だな。」
次々とぼろぼろとその低い甘い声がなにかを言っているけど、理解出来やしない。



「本当に、危ないよ?ただでさえ、うじゃうじゃと馬の骨どもがいるのに、世の中には変質者とか痴漢とか誘拐犯とか変態とかいっぱい危険があるんだから………そんなかわいい顔で美味しそうな脚とか出して………心配で俺が死ぬよ?」



私は窓の外へと視線を流し、現実逃避に考えてしまった。
私には危険がいっぱいだと今、彼が言った。
ひょっとしたら………彼はそんなもののひとつなのではないかと。




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なんだろう、これ?
この変な蓮さんシリーズたまには、自分で考えてみようとした結果がコレだよ。
(´Д` )



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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