猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。reverseから派生する番外編的な続きのひとつとなっております。


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おかしいな?こんなつもりじゃなかったのにな………
我ながら本当に俺って………
しゅんっと無駄に大きな身体を縮めるようにしながらそんな事を思っていた。



今までにない程の幸福な幸福な朝。
目が覚めた俺が考えたのは、如何に昨日の夜の失点を取り返して挽回するかだった。
メルヘン思考の彼女の理想みたいにドレスもお城もなく、ロマンチックな雰囲気もない……況してや、承諾さえなかった昨日の夜。
それを巻き返し、少しでも最上さんに俺を好きになってもらう努力を惜しむ気はない。
彼女が眠りから覚めたならば、この胸のうちに有り余るほどの愛をちゃんと伝えるのはもちろん、『恋人達の理想の朝』を彼女に贈ろう………そう決めた俺は、眠る彼女を起こさぬようにそっとベッドを抜け出した。



まずは、ベッドの周りに脱ぎ落とされたふたりの分の服。
一人暮らしの彼女の部屋に俺が着れる服など他にないから昨日着ていたそれを拾って身に付け、彼女の服を抱えて寝室を出てランドリールームに向かう。
そう、洗濯をするために。
洗濯機を開けてそこに彼女の服を放り込む………はて?洗剤ってどれぐらいの量入れたらいいんだろう?置いてあった液体洗剤のボトルを手に途方にくれてしまった。
こんな事なら忙しさを言い訳にクリーニング業社に何から何まで任せずに多少は自分でしておくんだった。
こんな初っ端から『恋人達の理想の朝』作りに躓く訳には行かない………まぁ、少ないより多少多くてもその分綺麗になる…かな?
トプトプとボトルを傾けて洗剤を適当に落とした洗濯機のスイッチを押す。コースとかよくわからないスイッチがあるけど……全自動らしいから大丈夫、だよね?
洗濯……たぶん、大丈夫。
次、洗面所のタオルを一枚借りてお湯を出してそれを浸してから絞る。
ん、こんなもんかな?
暖かな濡れタオルを手に寝室へと戻る。
本当はお風呂に入れてあげたいけど起こしてしまいそうだし、最上さんと一緒にお風呂なんてそんな萌えるシチュエーションに俺の理性が持ちそうもないから、出来るだけその白いやわ肌を見つめてしまわぬよう努力してベタついてるだろう彼女の身体を拭いていく。
時折漏れる「んっ……」って声とか、頭の中に焼きついた昨日の夜のあり得ないくらいのかわいらしさと想像以上の色っぽさに、むらむらジリジリしてしまったのは男としてしょうがないだろ?
なんとかギリギリ理性を手放さないまま、全身を拭って彼女を寝かせる。
愛しい頬に小さくキスを落としてから寝室を抜け出して、さて次、最大の難関だ。
正直、俺にはお手上げで未知のテリトリーなキッチンへ。
キョロキョロがさごそなんとか手探りで………えーーーと、食パンがあるからトーストにしよう。
この前、撮影で見たコレ、トースターに入れればいいんだよな?何分ぐらい焼けばあのキツネ色な焦げ具合になるんだ?
よくわからない………とりあえず、最大までメモリを動かしてみる。大丈夫かな?
卵……オムレツは…無理だよな、きっと。スクランブルエッグなら、なんとか?たぶん。ほら、オムライス作れたんだしな。マウかったけど………
サラダは適当に洗って千切ればいいとして、ドレッシングってどうなってるんだろう?この辺の適当に混ぜて作れたりするものなのか?
そんな事に必死になっていると
「きゃぁぁぁぁーー!!なになさってるんですかぁ!?」
キッチンで朝食作りに悪戦苦闘している俺と現状に、寝室から出てきた寝起きな最上さんが悲鳴をあげる。
あれ?おかしいな………トースターから黒い煙が出てるし、フライパンの中にはなんだか計上し難いの未知の物体と煙が………




焦げ焦げ黒いトーストとしょっぱ苦いやけに尖った味のドレッシングもどきのかかったサラダと噛むとバリンボリン音がするスクランブルエッグみたいな物体。
そんな惨劇の乗った食卓を前に
「少しでも俺を好きになってもらおうと、最上さんが起きた時には洗濯も終わって朝食も作ってあって、淹れたてのコーヒーと甘い言葉と心からの告白で起こしてあげるって感じの『恋人達の理想の朝』作りをしようとしていました。」
なんて、ぼそぼそ白状させられる気まずさに身が縮む。
本当に俺って………情けないよな。
そろりと盗み見た最上さんは、びっくりしたみたいな顔をした後に耐えらないと笑いだした。
「あぁ、俺、かっこわるい………」
穴があったら入りたいって日本語は今使うべき物だったんだな。
笑いに肩を震わせ顔を赤くして涙を目の端に貯めた彼女。
「そんな情けなくて、かっこわるい敦賀さんも………好きですよ?」
焦げ焦げで苦味のあるトーストに眉をちょっとしかめた最上さんが、そんな飛び上がるほどに嬉しい事を言ってくれた。





うん、家事の分担って大切だよね。
ここにエキスパートと呼んでいいレベルの先生がいるのだから教え込んでもらおう。
どうせだから、一緒に住んで
そんなおねだりをしてしまおう。





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なにやら画策している蓮さんですが、この後、洗濯機の中身についてキョーコちゃんからお説教される事になると思いますよ?


↓拍手コメにて葉月様よりいただきましたネタ

蓮さんが思い描く『恋人達の理想の朝』を演出するために奮闘する蓮さんが見たいです!(具体的にはキョーコちゃんが起きた時には朝食が出来てて、洗濯も干してあって…みたいな)ただし、奮闘するけど(きっと)家事能力ゼロの蓮さんはことごとく失敗…!それを目にしたキョーコちゃん反応が見たいであります!」

から、ぽちぽちと書いてみたものであります。
なんでも出来そうで出来ない情けな蓮さんにほだされちゃうキョコちゃんな感じのを目指してみたり?
(;´▽`A``



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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