黄色と赤と愚か者。黄色と赤と挑戦者黄色と赤と一徹者。の続きとなっております。

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トットットットットン。
リズミカルにまな板と包丁が音を立てて野菜が刻まれていく。
その音に混ざるみたいに
「本当にもうっ!セレブ的金銭感覚は心臓に悪いったら……」
ぶちぶちとお説教の声が混ざる。
「うん、やっぱりアイランドキッチンにして正解だったな。料理してるキョーコを眺めてられる。」
手伝いに入り込もうとしては
「邪魔ですっ!私はマウいごはんは食べたくないですっ!」
と、けんもほろろにキッチンを追い出された俺はカウンターの端まで引きずってきたスツールに座ってそんな事を零す。
途端、キョーコの落とすお説教の雷が激しくなるけども。
「いや、引っ越しはしようと部屋は探してたんだよ?」
前のマンションと同じクラスのセキュリティ、前より減った部屋数と前より減った敷地面積。
「前の家は広過ぎてキョーコひとりじゃ大変だろ?」
定期的に契約していた業者。けど、彼女はきっと自分のプライベートな空間にそんなものを入れようとはしないから。
「キョーコの気配でいっぱいの部屋に帰ってきたいな………ここに住んでよ?」
君好みの猫足メルヘンなアンティークの家具で揃えた君の部屋もあるよ?………きっと、また叱られてしまうだろうけど。
「いつ…………いつ、行かれるんですか?」
小さな小さな声。
「三ヶ月後には渡米するよ……2年は帰らない。」
トットット………
野菜を刻む音が、止まる。





でんっ!と、食卓の上で激しく自己主張している大きな黄色。
前回よりさらに大きくサイズアップしたそれに若干の汗が浮かびそうになるのをなんとか耐える。
トマトケチャップのボトルに伸ばすキョーコの手を捕まえて止めた。
「………恐くないって言ったら、嘘になる。でも、俺の夢で目標で約束だからね、行くよ。」
俯くキョーコの表情は栗色の髪に隠れて見えない。
「離れたくなんてない、無理矢理にだって連れて行ってしまいたい………けど、そんな事をしたら俺も君も、そこで立ち止まってしまう。だから、ひとりで行くよ……帰るよ、ハリウッド。」



待ちに待ったオファー………その筈だった。
逃げてきた場所へ、帰りたいと思う気持ちに嘘なんてない………けど、そのオファーをもらった瞬間に頭の中にいたのは君。
誰よりも置いて行かれるのを恐れる。
だけど、泣けない俺の大切な女の子。



「やりとげて……胸を張れるものを作りあげて、ここに帰って来るから………そしたら俺と結婚して家族になってくれませんか?」
巣だけ残して、約束でがんじがらめに縛って………ずいぶん勝手で卑怯な男だと、そう自分でも思うよ。
でも、夢も目標も約束も……君も全部全部掴んでみせるから。
捕まえていたキョーコの手がスルリとほどかれた。
白い小さな愛しい手が、ガシッと掴み取ったのは真っ赤なトマトケチャップ。
ふわふわとろとろの黄色の上にうにゅゅゅーーと絞り落とされていく赤色。
彼女にかけてもらっていた魔法とは違うメッセージが黄色の上に描かれて行く。
その完成を見届けて………





「キョーコ……………ひどいよ。」



思わずに落ちていく情けない俺の声。





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あれぇ?終わんなかった。(´Д` )
もっとさらっと終わる予定だったのに。
どしてこうなったのやら。


芸能界とか映画関係とか詳しくないけど、普通三ヶ月後に出立で2年帰らないとかそんなスケジューリング普通ないと思うけど、そこはまぁ………雰囲気で流してつかぁさい。


多分、次で終わりやす。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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