猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつ鬼の彼。のなんとなーくな思いつきのオマケ的な続きとなっております。


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まず最初に見つけたのは、小さな足。
ピンク色に塗られた爪までかわいくて………
唇に歪んだ笑みが乗る。
その後にやって来たのは、耐え難い怒りと背筋をぞっとさせるような恐怖だった。




やっと………やっと、捕まえたと思えた夜。
愛しくて愛しくて、もう二度と離す事なんか出来やしないと思い知ったのに、なのに君は言ったんだ。
「だって………きっと、最後………だもん。」
だなんてそんな事を。
どうして!甘やかすみたいに優しく髪を撫でる指先と、彼女の吐く『最後』なんて良くない予感を孕んだ言葉。
その意味を問い質したいのに、昨日のアルコールのせいかなかなか覚醒出来ずに浅い眠りの中に囚われたままの俺を置いて彼女がベッドから抜け出して行く気配に焦りだけが募る。
粘つく泥のようになかなか抜け出せないでいた眠りの中から唸り声をあげながら起きた時には、キョーコはもう隣にいなかった。


腹が立った。苛々した。我慢がならなかった。
捕まえたと思ったのに『最後』だなんて言葉を吐くキョーコに、そしてそれ以上に、うかうかとその逃亡を許した己の油断に。
鉄は熱いうちに打たなければならない。ただでさえ恋愛を拒絶した彼女の事、尚更に昨夜の降って湧いたような一夜の僥倖とさえ言える既成事実。それを、風化させぬうちに逸早く、如何に俺の胸に巣食う病の根が深く致命的なものであるのかをわからせて、キョーコに楔を打ち込んでしまわなければいけないと画策していたのにだ。
苛立ちを隠せぬまま、ドタドタと『敦賀蓮』らしさなんて微塵もなくキョーコを求めて寝室を出る。リビング、キッチン、書斎のドアを次々に彼女の名前を呼びながら開けてまわる。流石にシャワールームとレストルームはノックしてから確認してみるが、愛しい彼女の姿はどこにもなかった。
もうこの家から脱出したのかと舌打ちしながら玄関を見れば、俺の革靴と並んだ彼女の小さなハイヒール。
リビングへと戻れば、ソファーの前のローテーブルの上には彼女の携帯とこの部屋のカードキー、ソファーの上には昨日彼女が持っていた革のショルダーバック。
キョーコは、まだこの部屋にいる………そう確信出来た。それでやっと少し落ち着きを取り戻せた。
「キョーコ、でておいで。」
半分くらい無駄だろうと思いながらも呼びかけてみる。悲しいことに予測通り返答はなし。


あぁ、そう。
じゃぁ、俺が鬼だね?
hide and seek
この国の住宅事情には、最初眉を顰める思いだったけど今はそれが俺に味方してくれている。
キョーコが身を隠せそうな所などたかが知れたものだと、唇が吊り上る。
きっと君を見つけてみせるよ?




ヒタヒタとフローリングの上を、子うさぎを追い詰めたとの過信にゆったりと響く足音。
寝室の隅のクローゼットの扉。
小さく震えるキョーコが透けて見えるようで、歪んだ笑みがますます深まるのが解る。
俺はクローゼットの扉を掴むとゆっくりと開いて中を覗き込んだ。




腸の煮えるような怒り。
胃の腑を焼くような仄暗い炎。
そんな俺に、一層激しく怯え震えて抱きしめた腕の中のそれに縋り付くキョーコ。
薄暗いクローゼットの中、そんな彼女と………そこにあるそれに、目が慣れたようにやっと気が付いた。
途端に、怖気が走る背中。
ぞわりと冷たい汗が浮かぶ。
何かを思考するその前に、反射運動のようにうずくまるキョーコに腕を伸ばしそこから無理矢理に引きずり出すみたいに腕に抱き込むとクローゼットの扉を閉めた。
視界から遮絶しただけでは足りずに、呆然としたままのキョーコを抱えて寝室を出た。
とりあえず、今、見てしまったものから離れたかった。



リビングの中程まで後ずさり立ちすくむ俺の腕から滑り落ちるみたいに抜け出して、ずべしゃっと勢い良く平べったくなった彼女。
もはや土下座とも言えぬその体制で震えながらキョーコは言った。
「ご、ごめんなさぃぃぃぃ!今後お仕事以外で会話もさせていただけないようになるのなら、せめて好きだとお伝えしてしまおうと思ったのですがっ!なかなか腹を括れずにおりましたら敦賀様がお目覚めになってしまい思わず隠れてしまった次第にございました!最上キョーコ、偉大なる先輩へ誓いに背いて恋愛などといった毒感情を抱いたこの責は、どのようなお裁きを言い渡されようと謹んでこの身に受ける所存でございますぅ~~っ!!」
俺の言葉など微塵も挟む隙なくつらつらとすらすらとそれはもう立て板に水と言った見事な台詞回しで。



優しい彼女の気配と香りに満ちたリビングのソファーの上、かつてないほどにデロデロに崩れた顔をしてしまっている自覚満載の俺は腕の中に愛しい愛しいキョーコを抱きしめていた。
まぁ、そのキョーコな青い顔で微かに震えながら「こわい……魔王も鬼も怖いけど、全開笑顔も二重人格みたいで………こわい。」なんてぶつぶつ言ってるけど、知ったことか。
うつむいたキョーコの顎を掬い上げて、そのかわいい茶色の目を覗き込んで告げた。
「キョーコ、とりあえず、クローゼットの中にあるあれ………全部没取ね。」
コツンと額を合わせてやると、顔色は青いのに頬を赤らめるなんてなんとも器用なことをしたキョーコ。
「えっ!?そんなっ!!」
不満の声があがる。
「ダメ。いくらキョーコが作ったもので、鏡に写したみたいに俺にそっくりでも、キョーコが俺以外に抱きついてるなんてやだよ。」
クローゼットの中にひしめくようにいたそれ。
「俺、キョーコに関してはびっくりするほど心が狭くて独占欲が高いからね。嫉妬しちゃうから抱きしめるなら俺にして?」
どうせ、一生へばりついてでもずっとそばにいるつもりだしね?そんな事を思いながら、強請る。
追い詰めたクローゼットの中で脅えたキョーコが思わず抱きしめていたもの。
アールマンディのスーツを着ている見覚えのある顔のその全長45センチほどの男。




『敦賀蓮』の笑顔や嫌味な笑顔から溶けたみたいな笑顔なもの、困り顔や馬鹿にしたような顔のもの、果ては俺いつこんな表情したのかな?と聞いてしまいたいものまでの様々な表情の………ぞっとするほどクオリティの高い大小サイズ取り揃えたたくさんの俺人形たち。




流石に俺もあの景色には肝が冷えたよ。





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「鬼の彼。」のコメントや↓拍手ボタンにていろいろコメントもらってるうちに、うかうかと妄想スイッチを押された猫木がぽちぽちと書いてみたものとなります。


たまには、蓮さんも恐怖させてみよー!と思ってのホラー返し。
これから蓮さんは、どうやってピンクワンピースを着たキョコちゃんに告白してもらおうか策略をねったりしたりします。と、いう妄想があります。
(´艸`)*
でも、実際クローゼットの中に自分そっくり人形がわんさかおったら怖いと思うのよ
あ、蓮さんが服を着る描写がない………全☆裸?全☆裸な鬼さん!?
さらなる恐怖の追加。
。(;°皿°)


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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