猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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なにがどうなっているのかよくわからない。


朝起きて、昨日の記憶とこれからの事にうんうんと頭を悩ませていた………その時には、まだふたりの間に僅かなりとも物理的な距離があった筈で。
恐る恐る隣に眠っているのだろうひとを振り返ろうとしたその時に、背後からするっと伸びてきた腕。
あっと言う間に気が付けばべたりとその逞しく広い胸に押し付けられるみたいにぎゅうぎゅうに捕まっていて………その鍛え上げられた硬い感触と体温を感じて、物理的な距離をゼロにされていると理解してしまった。
しかもっ!私も私を捕まえている敦賀さんもは、はははは、裸っ!!
体温が一気に急上昇していくみたい、だって顔とか耳とか燃えてしまいそうに熱いんだもの。あまりの事に声も出せず、ただ口がはくはくと金魚みたいに開閉するしか出来ない。
「もう本当…………どうしてくれようか。」
頭頂部のさらに上の方から落ちてくる低い声。
お、怒ってる……?お怒りセンサーに反応はないけと怒ってらっしゃるの?私みたいな地味で色気も胸もない女と夜を過ごしてしまったから………?
きゅーって心臓が冷たく小さくなっていくみたいに痛む。ジワっと涙腺が緩むのを感じるけど、泣いちゃ駄目。泣くと………困らせてしまうから。
じたじたあわあわと必死に踠いて、何故か私に絡みつく腕から逃れ「昨日の夜の事は忘れてください。」って頼んで謝ってしまおうと、クルッと敦賀さんの方を振り向いた。そこにいたのは………
芸能界でも燦然と輝く美貌の麗しいひとが………真底困ったような弱ったような、まるで子犬みたいな表情をしていた。
なんでっ?!
そのさらさらの黒髪にきゅうんと垂れたイヌ耳の幻覚さえ見えるみたいで、あまりのそのかわいらしさに固まってしまった私。
そんな私へと腕を伸ばながら、縋る子犬なひとは言ったの。
「困った。もうこれ以上重症にもなれないほどに末期だと思ってたのに………新しく発病したみたいだ。」
重症で末期?新しく発病??
話が見えない。
それよりも、どうして私はこんなに強くぎゅうと抱き込まれてるの?




「はーなーしーてーくーだーさぁーいぃぃぃ!!」
必死にそう訴えながら目の前に聳える完璧な肉体美を晒す敦賀さんの裸の胸を両手で押す。だけど
「やだ。発病したって言っただろ?」
だなんて訳のわからない事ばかりを主張する先輩は、抜け出そうともがく私の努力を無にするみたいにぎゅうぎゅうに私に絡み付く。
あぁ!もう!本当に駄目なのに!!
このひとの腕の中なんて暖かくていい匂いのする場所はうっかりすると、地獄行きの私の恋心を増長させてしまう危険地帯なのに!!
「発病ってなんなんですか?それと私になんの関係が!?」
子犬な顔をして私をその両腕で囲って捕まえているひとは、一見した所健康体そのもの。
なのだけれども
「服が着たい」も「せっかくやわらかくて気持ちいいのに?やだ。」で、「お風呂に入りたい」も「最上さんのいい匂い、石鹸の香りになっちゃうのもったいないからダメ。」で「喉が渇いた」も「じゃぁ、取りに行こうね。」とお姫様だっこで冷蔵庫まで運搬されて終わり………後は何を言っても「発病した」でがんとして私を離そうとしないワガママ子犬になってしまった敦賀さん。
彼は言う。
「関係?大有りだね。俺が発病したのは、ライナス症候群だからね。俺がライナスで君はライナスのブランケット。………ずっと一生俺に絡め取ってやるって決めてたんだけど、まさか一瞬も手離せなくなるなんてね?」
ニヤリと笑うと、ちゅっと私の鼻に唇を落としてくる。
「一生大事にするよ?」
なんて宣いながら。
かぁぁって音が聞こるんじゃないかって勢いで頬が熱くなる。
心臓がもたないっ!もうこれ以上このひとの近くに、この腕の中にいたら心臓がいくつあっても足りないっ!!
とにかく、ここから逃げてしまいたくてしょうがなかった私は迂闊にも叫んでしまっていた。
「は、離して!!もう、なんでもしますから離してくださいっ!!」




一呼吸の沈黙を置いて、低い低い声が降ってきた。
「へぇぇ………なんでも、ねぇ?」
恐る恐る見上げれば、ライナスを自称するくせに子犬だったひとは、タチの悪いことに企む似非紳士な笑顔に夜の帝王の気配さえ滲ませて………笑っていた。




ぞわりと背中が粟立つみたいに震える。
あれ?………悪い予感がするのは、何故?




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ライナス症候群→常に特定の物を所持していないと不安定な状態になる依存症。  語源は、「スヌーピー」に登場する少年ライナスである。ライナスはいつも毛布(ブランケット)を引きずっており、毛布を放すとパニックに陥るところから。

ですけど、この蓮さんはただただ嬉しくて手離せないだけの浮かれた子犬さんなだけですよ。


↓拍手コメントにてりかちゃん様からいただきましたネタ

「キョーコちゃんの匂いの染みついたおふとんから出たくないと子犬でぐずる蓮さんとかは、あったでしょうか?困ったキョーコちゃんが、「なんでも言う事聞きますから」なんて言って罠にかかるとか?」

からポチポチと。
ベッドから出ないと駄々をこねるのは「嫌がる俺。」で書いてたので、キョコちゃんを手離したくない蓮さんな感じにしてみたり?
なんでも…で、蓮さんが何をやらかすかは、貴女の妄想次第です!←ぶん投げ。


なにやらいろんな方々から愛されてる感の強いこの変な敦賀さんシリーズ。
前回、ネタがなくなったら失速すんぜー!って書いたらいろんならとこから「がんばって考えます!」とか「全然思い付かなくてごめんなさい。」とかのお声をいただきました。
ありがとうございます!!
大丈夫!がんばらなくていいの!思い付かなくていいのよ!だって、もう60話くらい書いてるのさ。もう、充分にいろんな敦賀さんじゃね?と思うのですよ。
ネタはなくなって失速はしても終わりはしませんよー!!
だって、終わらせ方が猫木にもさっぱりわかんないっすもん。
о(ж>▽<)y ☆



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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