猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。reverseから派生する番外編的な続きのひとつとなっております。


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電子音が鳴ってる………うるさい。
せっかくあったかくていい匂いのする気持ちの良いやわらかなところでまどろんでいたのに………
音の響く方へと手を伸ばす。
馴染みのある電子音に混ざる違和感、アルコールの残ったようなぼんやりとした頭がまだはっきりとしないままそれを掴むと、慣れ親しんだ動作で通話ボタンを押した。
聞こえてきたのは、予想を裏切る思いがけない声だった。


「やぁ、おはよう……朝から無駄に元気だね?」
昨日の情事に掠れた声を隠しもせずにそう告げた。
目の前にはシーツを被ったキョーコが青い顔であわあわと慌てふためいてなにやら言い募っていた。俺の携帯を片手に。




思い返せば、この混沌困惑の朝、如何様に彼女に逃げらないよう手に入れるか……そう思い悩んでいた筈だった。けれど、包み込むみたいな優しい彼女の香りとやわらかさに何時しかぐずぐずに甘やかされるように眠ってしまっていたらしい。
お互いの体温を分け合うようにまどろんでいたようで………その幸福な眠りを妨げたのは奇しくもほぼ同時に鳴り始めた携帯の着信音だった。




不愉快な………とても不快な、腹の底がドロリと黒く粘つくような不快感。
相手の事を思いやる欠片もない、自分がなにより優先されて当然と言ったような傲慢で粗雑な言葉使いと声色で、手に持った携帯が彼女のものだった事を理解した。
さも当然のように口にされる彼女の名前。
こんなものをこの朝に、この部屋に立ち入らせたくなかったという苦い思いと、それでも目の前のキョーコの耳に届かせる事がなかった事に対する安堵を感じていた。
『キョーコ、てめぇ聞いてやがんのか?ちったぁ…』
こちらが一言も反応を返さない事に苛立ったのか、きぃきぃと喚くそれに挨拶をしてやった。もちろん、俺の声で。
隠す事などない。寧ろ、はっきりと突きつけて知らしめてやりたかった。
『っ!!………てめぇ、どうして!?』
食ってかかる焦った声に唇が吊りあがるのがわかる。
「ごめんね?キョーコ、まだちょっと電話に出れそうにないんだ?………昨日、なかなか無理させてしまってね。」
キョーコはキョーコでおたおたと「いや!だから!!違いますって!!聞いてください!社長!?」と、俺の携帯に向かって虚しい主張を必死に繰り広げていた。
まぁ、向こうからはフルオーケストラの第九が流れてるのがうっすら漏れ聞こえてくるから、その反応たるや推して知るべしだろう。
『敦賀っ!お前、どこにいやがる!?』
未だに喚き散らす声が問うた。
「どこって……キョーコのベッドだけど?」
ケロリとさも当然とばかりに答えてやる。
『!!!キョーコになにしやがった!?』
ドカドカとした音と怒りに燃えた不破の声。
「男と女が同じベッドにいてなにをしてたって………聞くだけ野暮ってもんだろ?」
嘲笑をふんだんに含んだ声音で告げると、キョーコの手から携帯を取り上げて通話の終了ボタンを押す。
『………キョーコを出しやがれ。』
強張った、どこか縋るようなそれ。
「嫌だね。もう一欠片だってお前には渡さない。」
『ふざけんなっ!!キョーコは俺のもんだっ!あいつの一番は俺だっ!』
こちらを見上げるキョーコの琥珀色の目をしっかりと見つめて
「違うよ。キョーコは俺の、だよ。……あぁ、復讐?なんだ、そんなもの。今までは傍観してたけど、キョーコは俺のもので俺はキョーコのものだからね……キョーコの復讐は俺の復讐だ。だから、安心して?お前には骨の髄まで思い知らせてやるよ。」
それだけ宣告して、未だに何か喚き散らしているのを無視して通話を終了させた。
粘着質なやつの事だ、きっとまだ着信があるに違いない携帯の電源を落とす。
「っるがさん……社長が…誤解で…俺のものって……ふぇ?」
真っ赤になってぐるぐると混乱しているキョーコを抱き寄せる。
「うん、社長も喜んでくれてよかったね。俺はキョーコのもので、キョーコは俺のでしょ?違うの?」
さらに赤く、耳まで染まってはくはくと口を開閉させているキョーコを、コテンと覗き込むようにして聞く。
「違うって言っても、もう離すつもりなんてこれっぽっちもないしキョーコがいらないって言ったってしがみ付いて縋り付いて離れないよ?全力で口説いて愛してあげるから、俺のキョーコになってよ?」
ぼふんっと見事なほど真っ赤なキョーコが逃げるように俺の胸に飛び込んでくるのをぎゅうぎゅうに抱きしめる。
顔がデロデロに崩れてるのがわかるけど、知ったことか。




ふたりじゃれるように絡まったベッドの上。キョーコが思い出したように問う。
「敦賀さん、さっきあいつに復讐するって……思い知らせるって言ってましたけど…」
「ん?そうだね、どうしようか?………歌でも歌おうかな?」
ボソリとそううそぶけば、慌てたように止めに入るキョーコ。
「えーーー?大丈夫だよ、ちゃんとボイトレするし。結構、イケると思わない?」
戯けてそう言えば、俺の芝居の時間が削れるのが嫌だと訴える愛しい彼女。
もうあんなやつを追いかけさせたりなんてさせてやらない。





愛しい愛しい大事なキョーコをしっかりと腕に閉じ込めながら
一番の効果的な復讐は君を俺で埋め尽くして、俺の隣で奴も見たことないくらいに幸せに笑うキョーコを見せつける事だよな、なんて後でこっそり社長とコンタクトを取って会見等もろもろの予定を組んでしまおうとそう決めた。




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↓拍手コメにてりかちゃん様からいただいたネタ

朝起きて寝ぼけていて間違ってお互いのケータイの着信に出てしまい、キョーコちゃんは、社長さんに、蓮さんは尚にばれる?ばらす!からのハッピーエンドとか・・・いかがでしょう?もちろん蓮さんは少し腹黒で!」

からぽちぽちと書いてみたものとなっております。
ん?腹黒?腹黒い蓮さんなのか?これ?
(´Д` )
言いくるめてキョコちゃんから復讐をまるっと取り上げつつ、的確な嫌がらせを計画するって感じのものをイメージしてたんすけど………なんか違うような?


前に、いろんな敦賀さんシリーズが50本行きそうだって書いたら
「キョコちゃん視点の話を蓮さん視点に、蓮さん視点の話をキョコちゃん視点で書いたら100いけるね!」
って、コメントを拍手ボタンにいただきました。笑
強引ー☆オチ変わらないから面白くないだろうよ、それは。
。(;°皿°)


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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