猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。reverseから派生する番外編的な続きのひとつで、魔王様降臨の彼。の蓮さん視点なものとなっております。


✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄



腕の中に幸せの塊があった。



すよすよと眠る君を起こさないようにそぅっと抱き寄せる。すっぽりと胸に収まるやわらかなあたたかさと優しい香り。
彼女の目が覚めたら………この幸せの権利が欲しいと願おう。好きだと、愛してると君に伝わるまで何度も、何度でも君に告げたい。
それまで、この涙が滲むような幸福を噛みしめていよう………そう瞼を閉じようとした時、玄関でキーが解除される音がした。



誰が………一人暮らしのはずの彼女の部屋に浸入しようとする何者か
一人暮らしにあたり口煩ほどにセキュリティには口を挟んだ事務所のお墨付きのこのマンション………その鍵が開けられた。
どうゆう事だ?
不審に思いながらもそっと気配を殺し音を立てぬようベッドから降り、落ちてあったボトムに足を通す。
聞き耳を立てていると足音を消すようにゆっくりと浸入する数人の気配。前もってインターホン等の連絡もなしに………
なんにせよ、誰であろうともこの部屋まで入る事を許すつもりなど毛の先程もない。
情事のあとの疲れを纏わせてしどけなく生まれたままの姿で眠る彼女、そんな姿を俺以外の誰であろうとも見せる事なんてさせるものか。
ボソボソとなにかを話す、男の声。男………腹の底から燃えるような不快感と怒り。
それに呼応するみたいにベッドの上の彼女が目を覚ます。一目見るだけであからさまに脅えをありありと表情に乗せる彼女の口を手で塞ぐ。
声を出さない事、この部屋から出ないことを威す勢いで言い聞かせるとガクガクと怯えながら何度も頷く。
それを見届けてから寝室を出た。


リビングの先の廊下、そこでなにやらひそひそと喋っている男がいた。
「さ~て、本日はなんと!あの人気タレントで女優の京子ちゃんのご自宅にこっそりとお邪魔しておりま~す!!清純派からお色気溢れる妖艶な役まで演じる京子ちゃんは、『芸能人の自宅DE寝起きドッキリ☆』でどんな可愛らしい寝顔を見せてくれるんでしょ~か?」
ハンドマイク片手に撮影カメラに語っている軽薄そうな若い男。
寝起きドッキリ、しかも自宅で………うら若き女性のプライベートな部分の切り売りを、そんな事をうちの事務所が許可するとは思えもしなかった。
だから、ドアを開けてリビングから撮影の続く廊下へと出ていった。
「ひっ!!………つ、敦賀蓮??」
何時もの敦賀蓮としての笑顔の欠片もなく、BJの時のように殺気と敵意を隠す事なく睨みつけるように睥睨する俺を見て、廊下にいる数人が驚いた顔をしている。
「失礼ですが、この企画の責任者はどなたでしょうか?」
硬い声で訪ねると撮影スタッフの視線が奥のひとりのスーツ姿の中年男へと注がれた。
「LMEの敦賀蓮です。名刺をいただけますか?」
ぞんざいに手を出せば、青い顔をしたそいつがぶるぶると震える手で名刺を差し出す。
「△△さん……事務所の許可は取っていただいてますか?ドッキリ企画とは言え、前もってのアポイントメントは?」
ドッキリであろうとも、通常マネージャーなどに前もって通達があるものだ。
マネージャーもなくタレント部のチェックがはいるとは言え、仕事の選択を直にしている彼女。騙されやすい彼女をうまく言いくるめて事務所を通さずに、美味しい映像が撮れたなら………儲け物だろう。
「京子の所属はラブミー部預かりなんで………直属は直にプロデュースをしているうちの代表取締役になるのですが、そちらに連絡は?」
出される事務所と社長の名前に、どんどんと顔色が悪く挙動不審にもごもごと口ごもる男に、イラつきが積もる。
「………ひぃっ!!ま、魔王」
そんな悲鳴が複数あがる。
「お答えがないようでしたら、後ほど事務所から連絡させてもらいますので………お引き取りいただけますか?」
こんな企画、つぶしてやる。
ブンブンと首を縦に降った男が逃げるように後ずさる。玄関前まで行った男に思い出した疑問を投げる。
「この部屋の鍵をどうやって開けました?」
「へ…へ部屋の探訪企画だと言って京子さんからスペアキーを……お、お借り…しました。」
スーツの胸ポケットから出されたカードキー。
それを見て、更に胃の腑が焼けるような怒りを覚える。
投げ渡すようにそれを残すとバタバタと走る足音が遠ざかっていく。




手のひらの上のカードキー。
振り返ると寝室のドアの向こうに過去最高に怯え震える君が見えるような気がした。
「もう………許さない」
低い低い地の底を這うような声。
あんな男どもに自宅の場所を教えて、その上スペアキーまでうかうかと渡して。俺だって、まだスペアキーなんてもらってないのに。
寝顔だと?そんなますます馬の骨を量産するに違いないものをカメラに撮らせるところだったなんて………もう、ね?
どれだけ怯えられようが知ったことか。
どうせ、さっきも魔王だとか言われてしまった事だし構うものか





魔王とは、大抵その根城に怯え震える姫君を浚う役に違いないのだから。




✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄


↓拍手コメにて

魔王 蓮サン視点もみてみたいです。」

と、言って下さる方がいらしました。
コメント見た時に「ジョセフ・ジョースター!きさま!見ているなッ!」な気分になりました。
いや、コメントくれた方は無記名な方だったんでジョースターさんじゃないんすけど。猫木、DIOじゃなかとですし。(ジョジョネタわかる人にしかわからないなぁ、これ。)
魔王、最初蓮さん視点で書いてたんですよね。でも、キョーコちゃん視点の方が寝耳に水ならぬ寝起きに魔王って感じで面白そうだと思って途中で放置してるのがあったので、それを発掘して仕上げてみました。
。(;°皿°)
あ、あとTV制作系とか全然知識ないから書いてあるのはてきとーな猫木の思い込みだよー。

アプリん中、そんな書きかけが山ほどあるよ。
(´Д` )



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2