舞い上がって………馬鹿みたい。



その日は、朝からドキドキと緊張しっぱなしでずっときっと私はそわそわと挙動不審だった。
約束の1時間前、ラブミー部の部室の中。座っている事なんて出来なくて檻の中の小動物みたいにウロウロウロウロと広くない部室の中を歩きまわっていた。
ふと窓に映る自分の姿が目に入った。
ふわりとしたシルエットの可愛らしいシホォンワンピース………な、なんか変に気合い入ってるとか思われないかな?君程度着飾ったてって鼻で笑われちゃったらどうしよう?
や、やっぱりいつも通りの方が……いいかも?
そう思えてしまい、部室の更衣スペースへと向かうとロッカーから目に痛いピンク色のツナギを取り出す。最初はなんの呪いかと思ったこのラブミーピンクなツナギも今じゃすっかり私の戦闘服だ。
やっぱり、こっちにしよう!と、着替えをしていると………トントンとノックの音と低い声。
その声にどきりと心臓が高鳴るのがわかる。はやい!はやいです!まだ、約束の48分も前ですよ!!
どうしよう?まだ、心の準備が出来てません!!



「最上さん?……いないみたいですね。」
「約束の時間までまだだいぶ余裕だろ?お前が無茶するから……」
そう声をかけて入って来たのは、ぎっちりみっちりスケジュールの埋まってるはずの人気実力派俳優な先輩とそのマネージャーさん。
「すいません、なんだか落ち着かなくて。」
「朝からソワソワソワソワしてたもんなぁ~」
おふたりが椅子に座る気配。ど、どうしよう?出て行くきっかけを逃してしまった。
「俺、席外しとこうか?」
「いや、お願いです。見張っていてください。」
敦賀さんがはぁぁーって、大きなため息を吐きながらそう言ってる。
「見張るって、お前……」
「キツいんですよ………あの子の笑顔を見てるのが」
頭から氷水でも掛けられたみたいにすぅっと全身から血の気が引いて行くのを感じた。
あの子って、私……だよね?
どうして?私、やっぱり勘違いしちゃってたの……かな?
目の奥と鼻先が痛い。
馬鹿みたいだ。ひとり舞い上がって、お返事、喜んでくれるかな?なんて……思い上がりも甚だしい。
「笑っていてほしくないんです。」
「お前なぁ…」
「わかってます!勝手な想いだって……でも、あの笑顔が全部俺のものじゃないなんてもう耐えらないんですよ。あんなに簡単に俺を虜にするくせに、俺のものじゃないなんてズルいじゃないですか。」
「付き合う前から重い男だなぁ。」
「自覚してます。」
「開き直るなよ、あんな長いこと自覚もしなかったくせに。」
な、なんの………というか誰のお話なんでしょう?
「今からそんなんで、キョーコちゃんにフラれたりしたらどうすんだ?」
「一度や二度フラれたくらいで諦められるわけないでしょう?最上さんが振り向いてくれるまで追いかけますよ。」
心臓がドコドコとうるさい。顔が燃えるみたいに熱くってじたじたと暴れ出してしまいたい。





そして、私は困り果てる。
ジリジリと近付く約束の時間。
ど………どんな顔して出て行けっていうのよ!?
だって、あんなお話聞いちゃうなんてそんなつもりなかったんだもん。
逃げ場のない袋のネズミな気持ちの私。





さて、どうする?





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あれぇ?
なんだこれ?
もちっと違う終わり方な予定だったんだけどな………どしてこうなったのやら。
(´Д` )



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

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