最上さんが眉を吊り上げてお説教をしている。
どうやら社さんの密告によってここ数日の俺のぞんざいかつ大雑把な食生活がバラされたらしい。
まぁ、いいですよ………
あとで、キャピキャピにやにや遊ばれるくらいで君との時間が持てるなら。


「敦賀さん!聞いてらっしゃるんですか?人間は霞を食べて生きてる訳ではないんですよ?私たちは身体が資本で商売道具なんですから、きちっと栄養バランスを考えてお食事していただかないと………」
いつだって俺の食事事情に関しては誰よりも厳しい君。
君と一緒にいれるのなら、君が俺のことを考えてくれるのなら、君の意識を独占しているのなら………ただ、それだけの事がこんなにも嬉しいなんて、ほんとタチの悪い病にかかってしまった。
にやけてしまいそうな顔を、なんとか意識して精いっぱい申し訳なさそうな顔になるよう努力する。
さぁ、これからどう言いくるめて一緒に食事をしてもらおうか?などど、計略を練っていると君が言った。


敦賀さんったら、お身体は大型の肉食獣みたいなのにことお食事に関しては小鳥さんなんだから………」


へぇ………よく分かってるね。
今、君の前にいるのは牙と爪と空腹を隠した狡猾なただの獣だ。
そして、最上さんは美味しそうな柔らかい身体をしたピンクの仔兎。
『たべてしまいたい。』
目の前の男がそんなことを考えているなんて知りもしない彼女を食事へと誘う。
君と一緒じゃなければ食べないと、そう臭わせてやれば呆気ない程簡単に誘いに応じる君。


頼むから、なにが食べたいかなんて聞かないでくれ。
俺がたべたいものなんていつだって、ただひとりだ。
それを君に言ったら………たべさせてくれるの?


「でも………出来れば一生たべさせてもらいたいから、我慢。」
君に届かないように小さな小さなつぶやき。
「敦賀さん?なにか仰りましたか?」
きょとんと見上げる君の上目使いな瞳に、さらに欲が積もる。それを、隠して君に笑う。
「いや………お腹へったねって。」
君の大きな瞳が驚きにさらに大きくなるのを眺める。
「敦賀さんがそんなこと仰るなんて、珍しいですね。」
「そうだね。でも……はやくたべたいんだ。」
ますます驚いた君が俺の体調を心配し出すのを宥めて、愛車へ向かうべく小さな背中に手を回す。



その細いぬくもりを腕におさめて。





あぁ、もうほんとに頭からばりばりとたべてしまいたいよ。
おなかがへって死にそうなんだ。
だから、出来るだけはやくたべさせてね?






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新しい話を書くか………変なひとりチャレンジっぽいやつをはじめるか………悩み中に浮かんだキョーコちゃん限定食欲をお持ちの蓮さんって感じの妄想ー。
食べる話続きだな。(´Д` )






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