ツール・ド・おきなわ物語 2012  ~後篇~ | ナス爺の物忘れ

ツール・ド・おきなわ物語 2012  ~後篇~


慶佐次の上りに差し掛かり、いよいよ残り40kmの後半戦。

残ったメンバーは30人程か。

前半が狙い通りに走れたので、ここに来て、心肺、脚、気合、エネルギー、どれも充実している。

さらに、日々の夜練はここからの道のりを想定して作った練習コース。

今なら自信を持って走りきれる。

勝負を賭ける舞台が整った。

さあ、ここからはおきなわを満喫しよう。

守りから攻めに切り替え、ギヤをひとつ上げた。



慶佐次、天仁屋、安部と大小のアップダウンが飽きるほど連続する。

楽しいじゃないか。

牛乳さんが本格的に人減らしに取り掛かるようにグイグイ牽引する。

相変わらず力強い上りだ。

こちらもギアをさらに上げ、同調するように上る。

登頂後は遅れた後続に下りで追いつかれたくなかったので積極的に前に出て牽引する。

できれば平地も緩めず行きたいところだがローテは数名。

このあたりはしかたない。


やがて二つ目のスプリントポイントに差し掛かったが、ここも取る気で行って、そのまま先頭で通過。

ガチスプリンターはきっといない。今日はスプリント勝負でいける。

そう判断した。

となると、あとは羽地ダムの上りを少数の集団でクリアすれば自分の展開に持っていける。




カヌチャリゾートのアップダウンを越えると、工事区間に入り一車線走行となる。

ローテもしづらく30人ほどが一列走行となる。

中盤に位置したため、抜け出すことは難しいので攣った脚を休めながら最後の難関に備えることとした。

思った以上に速いペースで進むので、前では逃げとかできているのかもしれないが、ここで焦ることはない。




海岸線を抜け、右に曲がると目の前に羽地ダムの坂が見えてくる。

2年前遅れをとった勝負の坂。

今年は何としても先頭集団で越える。

あれからの全ての登坂練習はここを上るためにあったんだから。



徐々に勝負ポイントが近づいてくる。

エネルギーを充填し、全パワーを使ったアタックに向けて集中力を最大にした、そのとき

右後方から唸りをあげた集団が迫ってきた。

???

オレンジのゼッケン、、、210kmだ。



このタイミング・・・ですか。


開始の遅延と前半のスローペースがたたって、210の先頭に追いつかれてしまった。


・・・混走するのか、いや210の先頭集団なら速いはず。

とりあえず、左に寄ろう。

そう判断した矢先、210より先に100の選手が数名が駆け上がっていった。


しまった、、、ここで後手を踏むとは。。


もう混走など言っている場合ではない。

全力登坂を開始する。

同カテゴリーは4、5人と思うが、入り乱れてわからない。

さらに前が詰まる。

210と言えど力尽きている人がいる。

どいてくれ、と思いながらかわして上る。

決定的な差が開くと混走に紛れて逃してしまうかもしれない。


トンネルを越えると右手にまだ坂が続く。

まだいてくれと祈りながら見上げると、少し前に4人ほどいる。

大丈夫、さっきより差は縮まっている。

まだ何回か上る。

十分に追いつく。


アドレナリン全開モードなので疲れは感じない。

もうだれが走っていようと関係ない。最大パワーで上るだけ。

何人も抜いたが、まだ前にいる人をひたすら目指す。



無我夢中でペダルを踏み続けるとやがて最後のピークを迎えた。

混走の先頭集団の中でここを越えることができた。


息は詰まるほど苦しかったが、何故か辛さより嬉しい気持ちがこみ上げてきた。

練習して練習して、その成果が晴れの舞台で出せた喜びみたいなものを感じていた。


しかし、そんな感情は一瞬で消え、混沌としたままダウンヒルが始まる。

テクニカルなコーナーが続くが210の先頭集団はさすがにうまく不安はない。

むしろ、安全に降りようとしてる感じで、後続に追いつかれる不安がよぎり焦る。

実際下るにつれて、集団がさらに大きくなったように感じた。



下りきったのち大きく左に曲がり国道58号線に出る。

先頭集団の2番手で国道に出たため、この時のために開け放たれた国道が眼前に広がった。

この道をこの位置で迎えることができたこと、そして、残り7キロでレースが終わってしまうこと、こんな局面なのにいろんな感情が湧いてきた。

さあ、あとわずか。最高の走りをしよう。



相変わらず混走が続くが、このままでレースができるのか、何か分ける方法はないのかと思っていると、210の選手が、「別に走ろう」とペースを緩め、右側にずれてくれた。

ありがたい。これでレースが成立する。



残り5km

100メンバーだけの争いが始まった。

何人残っているのだろう。

ローテをしたり飛び出したりするのは、5、6人か。

ここで牛乳さんの姿も確認。さすがだ。

イオン坂でも強烈な逃げは発生せず、高速ながらも様子見的な展開が続く。

マリーさんと、うめちゃんの声援が聞こえる。



残り3km

ローテに参加する人数が減ってくる。

ここで前に出てこないヤツには絶対負けん。

前輪をハスられて飛びそうになったが、こんなところでコケてる場合じゃないので立て直す。


牛乳さんの牽きが長い。

後ろの人が前に出たがらないので飛ばして前に出る。

もっと全体の速度を上げたかったが、このままで勝負に持ち込む走りに切り替える。



残り1km

最後のコーナーに差し掛かる。

ローテは3人。

スプリントポイントが迫る。

届かないくらいなら早や掛けする方がいいと決めた300m地点。

前日に何度も確かめた。

ハンドルに力を込め、駆け出しのタイミングに全神経を集中する。


先頭に牛乳さん。一人挟んで3番手でコーナーを抜け残り500m。

ここで左から牛乳さんが行った!

グングン加速する。

しかし2番手の人もそれにつられるように加速していく。

その後ろでタイミングを待つ。

残り300m

ここだ!

右から一気に加速し、先頭に出る。

タイミング、ギヤ、パワー・・・いける。

スプリンターはいないはず。

最高速はしれてるが、300mを持続させる練習はしてきた。

並ばれても前には出さん。

2車線道路の中央を突き進む。



何も考えずに一心不乱に踏むだけ・・・



と思いきや、右から土煙が上がるような勢いで数人が突っ込んできた。



  (photo : www.cyclowired.jp )



・・・!?


210だ。


武井さん、奈良さん、、さらに白石さん。

くっ、、速いじゃないか。。。

一気に左側にも押し寄せてきて混走のスプリントになった。


しかもよく見ると100kmの選手もいる。

残り50m

まずい。

さらに踏み直す。

集団の追い風を利用してもう一度伸びる


が、



23/100秒


届かず。










おしい。


くやしい。



でも、最高の舞台で最高のパフォーマンスを発揮できた。

悔いる部分もない。



ロードレースの全ての要素がつまったおきなわはやっぱり楽しい。

走りにきてよかった。


てっぺんには立てなかったけどマネージャーも許してくれるだろう。


  (photo : www.cyclowired.jp )



ツール・ド・おきなわ2012【市民レース100km】

 ●総合2位入賞(エントリー470人、出走400人、完走264人) 3時間02分24秒822 (トップ差:0.23秒)
 ●年代別優勝(36歳~45歳) 
 ●スプリント賞(名護市長賞)受賞
 ●スプリント賞(東村長賞)受賞

 http://tour-de-okinawa.jp/2012/006_results1.pdf


★2012/12/8追記
【レースレポート】

●レースレポの前に・・・

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11414539036.html

●ツール・ド・おきなわ物語 2012  ~序章~

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11415287334.html

●ツール・ド・おきなわ物語 2012  ~前篇~

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11416080074.html

●ツール・ド・おきなわ物語 2012  ~後篇~

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11416471333.html

●お礼

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11419957895.html

【番外編】

●おきなわ市民100km コースレイアウト

http://ameblo.jp/nasuj/entry-11411348002.html