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この物語は、「オールイン~その後~」 の更に、その後の創作ストーリーです。









イナとスヨンは、めでたく結婚をし、かわいい男の子に恵まれていた。


ある日の休日—。


スヨンは、
「…パパに似て…凛々しい瞳ね…。」
と、言って、赤ちゃんをあやしていた。

すると、イナは、スヨンの側に、わざわざやって来て言った。

「このゲジゲジまゆげは、スヨン似だな…。」


「…なに…?その言い方?…かわいい私になにか文句があるの…?」

スヨンは、するどい視線でイナを見た。
やはり、母は、強かった…。

イナは
「…いや…なんでもない…。」
と、言葉を濁した。


「やっぱり、男の子だから…、イナさんに大人になったら似てくるのかしら?楽しみだわ。」
スヨンは、大人になった時の様子を、頭をフル回転させて想像していた。

「きっと、イナさんに似て、将来は、かっこいいでしょうね…。」

イナは、スヨンの話を黙って聞いていた。


「そうだわ!この子が、大きくなったら一緒にお買い物に出かけましょう!!」

スヨンが、閃いたように言った。

すると、イナは、スヨンに言った。

「…あんまり、期待しない方がいい…。」
「…どうして…?」
「…俺に似たら…、不良になってるかもしれないだろ…?」
「そうなったら、母の愛で更生させるわ。」
「…友達と遊ぶ方が楽しくなる時でもあるよな…?」
「そうなったら、私と遊ぶ方が楽しいって学習させるわ。」

それを聞いてイナは、呆れたように言った。

「…馬鹿言うなよ…。友達は、大事だろ…?」
「…そうね。…それは、やっぱり止めるわ…。」
「その方がいい…。…ところで、彼女ができる年頃でもあるよな…?」

イナが、そういうと、スヨンは、キッとイナをにらんだ。

「…そんな嫌な事、言う事ないでしょ…!?」


…将来が、心配だ……


イナは、この子の未来を案じていた。


ピンポ~ン♪


玄関の呼び鈴がなった。

「誰かしら?」
「俺が出るよ。」

イナは、そう言って立ち上がった。


玄関に向かいドアを開ける。

立っていたのは、チョンウォンだった。

「やあ!おはよう。何処か出かける所だったか?」
「…いや…ま、入れよ…。」

イナは、そう言うと、チョンウォンを家の中に入れ、リビングに案内した。


「今、コーヒーを出すから、適当に座って待っててくれ。」


イナは、そう言うと、コーヒーメーカーを手にしていた。

「…なんか…イナが、普通に家事をやってるなんて、まだ信じられないよ…。」

チョンウォンは、落ちて行くコーヒーを見つめていた。

コーヒーの薫りに部屋中が包まれた頃、イナは言った。

「…何かあったのか…?」

イナは、温めておいたカップに、コーヒーを注ぎ、チョンウォンに差し出した。



「…ああ。そうだった。例の…、入札した物件だけど、無事完成して、昨日、竣工式があったんだ。そのあと、レセプションが開かれてね…、余興として、スヨンさんが計画してくれた花火を使ったアイデアを使わせてもらったんだ。それを報告しようと思ってね。」

「有り難うございます。…それで、反応は、どうでしたか…?」

スヨンは、赤ちゃんを抱き、身を乗り出して聞いた。

すると、チョンウォンは、嬉しそうに言った。

「うん。良かったよ。最後にホタルを放すと、満点の星の中に溶け込んでいくように見えて、それがまた余韻に残ってね。招待客も、しばらく見取れていたよ。」

「…へぇ…。あれは、そういうアイデアだったんだ…。」
イナは、それを一度も見た事はなかった。

「…そうか…。イナは、まだ見てないんだっだね。声をかければ良かったかな?…子供がいるから、迷惑をかけては行けないと思ったんだが…。」

「…いや。…成功したなら、それでかまわない…。」

イナは、静かに答えた。


すると、安心したように、チョンウォンは言った。

「…そうだな。…イナは、そういう芸術的なものには、興味ないだろう。…ところで、子供の名前は、なんて言うんだい?」



「…そうだな…。確かに俺は、芸術とは、無関係だな…。名前も、やぼったいのをつけちゃったかもな…。だから、聞くな。お前だけには、絶対、教えない。…教えたくない…。」


イナは、そう言うと、スヨンにも
「絶対、教えるなよ。」
と、釘を差した。


「…えっ…!?」

面食らったのは、チョンウォンだった。


なんだよぅ…


気になるじゃんか…


チョンウォンは、寂しく心の中で呟いた。


「…ところで、いつまで専業主夫をしているつもりなんだ…?スヨンさん、一人にいつまでも働かせるつもか…?」
チョンウォンが、そういうとイナは、コーヒーをすすりながら答えた。

「…働いてるさ…。」

「…じゃあ、今、何してるんだ…?」
「出稼ぎ。…たまにアルバイトを少し…。」

イナが、そう答えると、チョンウォンは、驚いたように目を白黒させた。

「…えっ!?…出稼ぎって…?…イナなら、ちゃんとした所に就職できるだろう?なぜ、そんな事を!?」






「…仕方ないだろ?…誰かが『いつも事件に巻き込まれる』と吹き込むから…。」




チョンウォンは、コーヒーを噴き出しそうになった。

「ごほっ…。…そ…そうだったのか…。」
チョンウォンは、そういうのが精一杯だった。

特に、詫びの言葉を口にはしなかった。


「ま…たまに、出稼ぎも悪くない。…他の時間は、好きな事が出来るからな。…気にするな…。」


イナは、コーヒーカップを空にすると、
「おかわりはいるか?」
と、聞いた。

「…いや…いい…。」


チョンウォンは、本当は、イナが、どんな『出稼ぎ』の仕事をしてるのか気になった。

しかし、聞けなかった。


まあ、いいや…

具体的に言わない所を見ると、あまり言いたくないんだろう…。


チョンウォンは、『イナは、たまに、マグロ漁船に乗ってるに違いない』と思い込んでいた。


「…それじゃ、僕は、失礼するよ…。」

チョンウォンは、そういうとイナ夫婦に見送られ家を出た。


チョンウォンが、ホテルに戻ると、チニが待っていた。


「チニさん、今日は、どうしたんだい?」
「面白いビデオが手に入ったから、一緒に見ようと思って待っていたの。」
「面白いビデオ…?」

腑に落ちない顔のチョンウォンを社長室に押し込むと、チニは、早速、ビデオを再生させた。

チョンウォンも上着を脱ぐとチニの隣りのソファに腰掛けた。

映像は、世界ポーカー大会だった。

「…ああ…今年のか…誰がチャンピオンになったんだい?」

チョンウォンが、そういうとオチダ・リエが映り、ジェニーが映り…チョングが映った。

「ははは。なんだか知った顔ばかりだな。」

そう、チョンウォンが言った瞬間だった。

司会者が言った。
「最後は…昨年の優勝者のキム・イナさんです。」

イナは、観客に手を振り、ゆっくりと席についた。

チョンウォンは、ソファからずり落ちていた。


そして、イナは、あっという間に優勝を決めた。


「おめでとうございます。賞金は、何に使いますか?」
と言う司会者の問いに、イナは大まじめに答えた。

「生活費です。」


場内は、爆笑の渦となった。
その脇で、インタビューを受けていたチョングが叫んだ。
「イナ!毎回、大会の時だけ出稼ぎにくるなっ!」


その声は、回りの声に、かき消されて聞こえにくかったが、チョンウォンの耳には、はっきりと届いていた。


…で…出稼ぎって…
…これだったのか……!…


そして、チニは言った。

「イナさんって、やっぱりすごいわ。優勝したから、一緒にポーカーをやりたがる人が多いんですって。それで、かなり儲かってるらしいのよ。」


…ひょっとして…
…それがアルバイトの正体か…?…

更に、チニは、言った。

「おかげで、遠くから来るお客様が、うちのホテルを使ってくれて、助かってるのよ。」


…おそるべし…!…
…キム・イナ…


チョンウォンは、改めてイナの事をすごいと感じていた。


おしまい♪






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これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第52話 すべてを賭けて。











イナは、スヨンを黙って見つめていた。


スヨンは、イナが何か優しい言葉を言ってくれるのを何処かで、期待していた…。



「…なら…しかたない…。」
イナは、ポツリと呟いた。

そして、
「今日の式はやめよう…。」
と、語った。


スヨンは、動揺を隠せなかった。

「…本気…なの…?」

「ああ。…これから先、俺と一緒にいたら、毎日、スヨンを不安にさせる事になる。…そんな嫌な思いは、させたくない…。」

「…でも、イナさんの姿が見えなかったら…、ずっと私は、不安だわ…。」

「…最初から、俺はいなかったと思えばいい。…俺の事を思い出したくもないなら…丁度いい…。」

イナは、そう言って、スヨンの前から立ち去ろうとしていた。

そのイナの背中にスヨンは、抱き付いた。

「待って!イナさんにとって、私は運命なんでしょ!?」

スヨンは、そう叫んだ。
驚いたように、イナは、スヨンの方に振り返った。

「…なぜ…それを…?」

「…昨日、リエさんが…、イナさんが、そう言ってたって…。…だから、私は、それが嬉しかったの。」

スヨンは、真剣なまなざしで、イナに訴えかけた。
イナは、必死に話すスヨンをマジマジと見つめていた。

「…俺が…側にいてもいいのか…?」
「…居てくれなきゃ困るわ…。」

スヨンは、唇を噛み締めて、そう言った。
なぜ、それほどイナに固執してしまうのか…、
スヨンには、それが悔しかった。


「俺が…なぜ…運命だと言ったか…わかるか…?」

イナは、スヨンの表情を読み取り、そう言った。
スヨンは、イナの急な話しに首を横に振った。

「…スヨンには…辛いだけの記憶しかないかもしれない…。…でも、思い出して欲しい。…俺達は、いつも離れ離れになっても、偶然の様に何度も巡り逢ってきた。…時には、運命の悪戯に翻弄されながらも…必ず、何処かで、再び巡り逢うんだ。…こんな出会い…、運命以外の言葉で、説明できるか?」

イナの言葉に、スヨンは、ポロポロと大粒の涙をこぼし、イナに抱き付いた。

イナは、そっとスヨンの頭を撫で、言った。

「…それでも…思い出したくないか…?…」

スヨンは、横に首を振った。

「…いいえ…。もう迷いません。…すべてをかけて、貴方を愛してます…。」


スヨンは、いつか言った台詞と同じ言葉を言った。イナは、呆然とスヨンを見つめた。

そして、ふっと笑って言った。

「その台詞は、前にも聞いたな。…それが、スヨンの最上級の言葉か?」

「…前にも…?…どんな時に言ったのかしら…?」

スヨンは、首を傾げた。

「…いつか…ゆっくり思い出せばいい。…その時は…今言った言葉を後悔してるかもな…?」

イナが、そう眉をひそめて言うと、スヨンは怒り出した。

「…イナさんったら、酷いわ。…本当に無粋な人なんだから…!」
「…えっ…!?…なんで分かるんだ?」

イナは、笑いながらも、急に、真面目な表情を見せた。

「…見てれば分かるわ。それに、…私に『俺は、無粋な男だから言ってくれなきゃわからない。』って、言ったのよ。」
「…それで…?」
「…そうよ!だから、私、イナさんに言ったんだわ!!…オールイン…貴方を愛してます…って…。」

スヨンは、ひとしきり喋ると、はっとした。


それは、スヨンがイナを見つけ、イナにオルゴールを差し出した時のやり取りの台詞だった。

「…私…思い出してる…?…」

「…ああ…。」

イナも嬉しそうに笑った。

「…ところで…そろそろ時間になるが…式を挙げるのは、どうするんだ?」
「…もちろん、挙げるに決まってるわ…。」

スヨンが、そういうとイナは、スヨンの涙の跡を、そっと優しく指で拭った。


そして、イナは、例の如く悪戯な瞳で言った。


「それじゃ、化粧直して来た方がいいかもな…。まあ…目の下のクマより、その腫れた目をどうするか…だな。」


1年後の夜—


「おいっ!…今、わざと椀の中に指入れただろっ!?」

カウンター越しに、テジュンは、チェスに向かって言った。

奥の席では、シボン達が呆れていた。
「…まったく…寄ると触るとすぐ喧嘩して…近寄らなきゃいいのに。」

すると、チスは、
「まあまあ。ああやって、相手してもらいたいんだから、ほっておけばいい。…ヒョンジャも、娘の手料理食べたらどうだ…?」
「あたしはね…、あのテスに似た男が本当に気に入らないよ。ゴロツキを思い出しちまう!」
「まあまあ。落ち着いて。」
皆に、たしなめられるヒョンジャだった。

チェスは、皮肉たっぷりにテジュンに言いかえしていた。
「相変わらず、暇そうだな。全く、他に行くところがないのか…?」
「なんだと!お客に向かって!こっちは、売り上げに協力してやってんだろう!?」

テジュンが、そういうと、チョンエは、言った。

「何、言ってんの!いつもツケのくせしてさ!二人とも、いつまでも馬鹿みたいに揉めてないの!そろそろイナ達が来るわよ。」

「…すごい賑やかだな…。外まで元気な声が聞こえたよ。」
そう言いながらチョンウォンとチニが店に入ってきた。

「…こんばんわ。今日の主役の登場は、まだなのね…?」
チニは、チョンエに声をかけた。

「…そうみたい…。何かあったのかしら…?さあ、どうぞ、座って下さい。」

チョンエは、チニとチョンウォンに、チス達が座っている隣りのテーブルの席に座るように勧めた。

「こんばんは。ご無沙汰しています。」
チョンウォンがチス達にそういうと、
「やあ。堅苦しい挨拶は、抜きにして、先にやっててすまなかったね。」
と、チスは、答えた。チョンウォンとチニは、お辞儀をすると、指定の席に腰掛けた。


「…こじんまりとしてるけど…いい店ね…。」

席に座るなり、チニが、そういうと、チョンウォンは、
「まあ…、チニさんの部屋に比べたら、どんな店でも小さく見えるだろうね…。」
と、言った。

「…ちっ!…また、馬鹿にして…!」
チニが、そう言って笑うと、チョンウォンは、店内を見回して言った。

「この店は、小さいけど、リピーターが多いんだ。コツコツだが、売上も、上がってるんだよ。」
「…ふーん。…そう…。」

チニは、チョンウォンが他の女性を褒めているような気がして、正直、面白くなかった。
「…何…?…ふーんって?…気に入らない?」
「いえ。随分と名プロデューサーだこと…。」
「うん。今までホテルとか大きなプロジェクトばかりを考えてきてたけど、小さな店というのも、いい所がある事が分かったよ。次回は、これを融合させてみたい。どうだろう?」
「…結局…あなたは、私といる時は、仕事の話なのね…。…考えちゃうわ…。」
「…何が…?」
「…いえ…相変わらず、女心が分かってないのね…。」
「…?…」


店のドアが、ガラッと開いた。

「すみません。本日、貸し切りなんです…。」
チェスは、ドアの音に反応し、そう言いながら顔をあげた。
そこには、イナが立っていた。

「…なかなか板についてきたじゃないか…。」

イナが、チェスに笑顔で声をかけた。
その声に、皆、一斉に振り返った。

イナの隣りには、ぴったりと寄り添うように、スヨンが立っていた。

「…こんばんは…。」

スヨンは、そう言ってお辞儀をした。

「イナ。こっちに来て座りなよ。」

チョンウォンは、そう言ってイナを手招きした。
その手に、導かれるように、イナとスヨンは、チョンウォン達が座っている席に移動した。

「イナ。遅かったじゃないか。」
「…ああ…出かける寸前に、スヨンの体調が…ちょっとね…。」

そう言いながら、イナは、スヨンと共に、チョンウォン達の前の席に腰掛けた。

「…体調が…って、大丈夫なんですか?」
テジュンは、コップを持ち、席を移動しながら、スヨンに問い掛けた。

「…ええ。…病気じゃないですから…大丈夫です。」
スヨンが、そう言うと、チニは、ピンと来たように言った。

「…赤ちゃんね…!?」

すると、嬉しそうにイナとスヨンは、コクリと頷いた。

途端に、煙草に火をつけていたテジュンは、すかさず揉み消した。

「…ホントか…!?」
テジュンは、驚いたように言うと、イナは、
「ああ…。病院に行った。…三週目…らしい。」
と、嬉しさを隠せない表情で答えた。

チョンエは、料理を運び、テーブルに並べた。

「イナ…おめでとう。とうとうパパなんだね…。披露宴は、結局、あの時、チニさんのホテルに譲って、今日は、『結婚一周年おめでとう』を祝う会だったのに…思わぬ幸せが舞い込んで良かった…。」
チョンエは、そう言ってイナに笑顔を見せた。
すると、イナは、言った。

「…ありがとう。…でも…披露宴の後の二次会っていう手もあったのに…それが出来なかったのは、チョンエが飲み過ぎて、店を開く所じゃなかったからだろ…?」
「…あら…?そうだったけ…?」
「ちゃんと、翌日のオープンの時は、新婚旅行も行かずに、一番乗りしただろ…?」
「…そ…そうだったかしら…?」
「ああ。…でも、繁盛してるらしいな。良かったよ…。」
イナが、そう言うと、チョンエは、嬉しそうに頷いた。

「…ありがとう…。」

「しかし…なんか実感わかねぇなぁ!」

テジュンが、そう言うと、チョンウォンも相槌を打った。

「確かに。イナは、いつまでも色んな事に巻き込まれて波乱万丈の人生を送ってる気がするからね。」

それを聞いたスヨンは…

「やっぱり、イナさんは家にいてくれなくちゃ困るわ。お願いだから、おとなしく家にいて、主夫になって!!」

「ば…馬鹿を言うなよ。身重なお前を働かせる訳には行かないだろ…?」

イナは、取り繕うような笑顔で、答えたが…。

「それなら、…私の出産が終わったら、子育てと家事全般をまかせるわ。…それなら、問題ないわよね!?」

スヨンは、ガンとして聞き入れなかった。



そして、月日は流れ…
10月10日後…


「…えっ…!?」

一同の驚きを余所に…


イナは、再び、スーパー主夫に返り咲いていた。


「じゃあ、行ってきます。」
「ああ。気をつけろよ。」

イナは、愛する我が子を抱いてスヨンを見送った。

スヨンの記憶は、相変わらず、すべてを思い出した訳ではなかったが、時々、何かをきっかけに戻っているようであった。

しかし、以前と変わらない口調で、変わらない生活を送っている。

時々、記憶喪失は、夢だったんじゃないか…と思うくらい変わらない。



…それでも…

愛する人と共に、かわいい子供にも恵まれ、イナは、幸せを感じていた。


いつか…

又、荒波に揉まれた人生に戻るかもしれない…

だが、俺は、この手を決して離しはしない。



オールイン…。

すべてをかけて、家族を愛する為に——。


おしまい。








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これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第51話 いつか来た場所







朝になった…。


イナが目を覚まし、体を起こすと、スヨンは、ベットの脇の鏡台の前に座っていた。


「おはよう。どうしたんだ?怖い夢でも見たのか?」

「…いいえ…。…嬉しくて、早く目が覚めてしまったんです。」
「…まるで、遠足だな…?」
イナが、そう言って笑うと、スヨンは、怒ったように答えた。

「遠足だなんて、酷いわ。…イナさんは、よく眠れたの…?」
「もちろん、よく寝たさ。今日は、嬉しい日なんだから、目の下にクマなんて、カッコつかないだろ?」

イナは、そう言って布団から剥いでた。

「私、クマ出来ちゃってるかしら?」

スヨンは、慌てて鏡を覗きこんだ。

すると、イナは鏡を覗き込むスヨンに、言った。

「大丈夫。誰も気付かない。側でスヨンの顔をじっくり見るのは俺だけだから!」

「もうっ!イナさんってば!」

イナは、白い歯を見せて笑った。

「さあ、飯にしよう。式の最中に倒れたらみっともないぞ?」
「…食べたくないわ…。」
「また、そんな我が儘を。…何を緊張してるんだ?」
「…嬉しいはずなのに…何か不安なの。…自分でも良く分からないわ。」
「…不安…?何が…?」
「…それが分かるくらいなら、説明してるわ…。」
「…もしかして…俺がいなくなるとか…思ってる?」
「…わからない。…ただ、漠然と、もやもやしてる感じ…。」
「…なら、こうしよう。紐でお互いの手を縛るんだ。そしたら、何処にも一人じゃ行けない。…トイレもついていかなくちゃならなくなるけど?」
「絶対、嫌!」
「…だろ?…スヨンを置いて何処にも行かないよ。安心して飯を食おう。なっ?」

スヨンは、イナに丸め込まれたように、食卓についた。


午前9時—

スヨンは、ウェディングドレスを身にまとっていた。

「スヨンさん、綺麗よ。」

ジェニーが、嬉しそうにスヨンに言った。
その言葉を聞いて、スヨンは、嬉しくなった。

「本当?…イナさんに見せて来るわ。待っていて。」

スヨンは、ウェディングドレスの裾を持ち上げ、ウキウキと控え室から、出て行った。

…全く、スヨンさんったら……。


ジェニーは、スヨンの行動に苦笑していた。



スヨンは、歩きにくいドレスで、あちこちイナの姿を探した。

…教会の中かしら…?


スヨンは、教会のドアを思いきり開け、中に入った。


そこは、何処か見覚えがあった。


…私、前にもここに来てる気がする…

…なぜ…?…


スヨンは、教会の奥へと進んだ。
目の前の壁面には、見覚えのあるステンドガラスと、ピアノが目に付いた。







スヨンは、呆然とそれを見つめた。





バタン…。




その時、風で、ドアが急に閉まった。
驚いたスヨンは、ドアの方を振り返った。






ふっと、ある映像がスヨンの脳裏をよぎった。




…そして…


「いやぁっ~!!」


スヨンは、耳を塞ぎその場にうずくまった。



イナは、久しぶりにジェニルと会っていた。

「…随分と、遅かったんですね。…もう、戻って来ないのかと思いました…。…」

イナは、ジェニルに、そう語った。

ジェニルは、
「…色々…ゴタゴタを片付けて来た。ところで…ここに来て…時間は、やはり流れていたのだと知ったな。」

「…なんの事です…?」

意味深なジェニルの話し方に、イナは、聞き返した。

「毎日、同じ一日を繰り返していると、時間が流れている事を忘れてしまう…。今日なすべき事を、後回しにしてしまうと、その結果は、いつまでも変わらない。…変わらない日常…というべきか?…限られた人生の歴史の中で、時間は刻々と減っているのに…だ…。」

ジェニルの長い説明に疲れ出したイナは、単刀直入に聞いた。


「…結局、何が言いたいんです…?」


「行動をしなければ、何も変わらない…と、言う事を言いたかったんだが…。…式を今日、挙げるそうだな…。おめでとう…。」

ジェニルは、そう言った。
イナは、驚いたように聞き返した。

「情報が早いですね。さっき、帰って来たばかりなのでは?」

「ああ。そうだ。戻って来て、一番にオチダ・リエにあった。…そしたら、そう教えてくれた。」


「…へぇ…。…一番に…。…そうか…。」

イナは、含みたっぷりに、そう言うと、話題を変えた。

「…俺が気にするのもなんですが…シバゥは、どうなったんですか…?」

イナが、そう言うと、ジェニルは、一つ溜め息をついた。

「…それなんだ…。すぐ帰って来れなかったのは…。」
「…どうしたんです…?」
「…ボスは…シバゥを自分の変わりに右腕にしたい、と言い出した…。」

それには、イナも驚きを隠せなかった。

「…ジェニルさんの変わりって…!?」

「ボスの考えている事が、自分には、まるで分からない。ボスの命を狙うような野心家を側に置いても危険が増えるだけだと思うのだが…ボスが、そういう以上…自分は、ボスの為に、シバゥを教育しなければならなかった…。」

「…右腕教育ですか…?…」
「ああ。奴は、意外に飲み込みが早く機転もきく。まあ、カリスマ性は、イマイチだがな…。案外、うまいことやるかもしれない。」

「…又、命を狙われたらどうするつもりですか?」
「…さあ…?…わからんな。ボスは、スリルがあって面白いと言っていたが…な…。」
しんみりと、寂しそうにジェニルは語った。

その瞬間、イナは、ボスの考えが分かった気がした。

「…ボスは、ジェニルさんに本当の意味で自分の為に生きて欲しいと思ったから、ジェニルさんの居場所を無くしたのでは?…それなら、ツジツマがあいます。」

「…ボスが、自分の為に…?」
「ジェニルさんが、ボスの元を離れると聞いた時、正直、ボスを知り過ぎてるジェニルさんは消されるのでは?…と危惧しました。しかし、ジェニルさんは、普通にチョング達と行動を共にしながらも、常にボスの心配をし、ボスも又、ジェニルさんに監視をつける訳でもなく…自由にさせている。ボスの元を離れた筈のジェニルさんが、今でも自由にボスと会ったり、屋敷にも自由に出入りができるのは、不自然だと思いませんか?」

イナは、ジェニルの当惑した表情を読取り、続けた。

「ボスは、完全にジェニルさんの戻る場所をなくす事で、ジェニルさんとのシジュウ関係を断とうとしているんでしょう。ボスの右腕となると、それなりの人物でならなければならなかった。シバゥは、なかなかの策士だ。野心家なだけに、ジェニルさんをうとまうのは火を見るより明らかだ。…わざわざ、そうしたのは、そう意図があったと考えれば、合点が行くでしょう?」

イナの話に耳を傾けていたジェニルは、寂しそうに呟いた。


「…そう言う事か…。」

「何かあったんですね?」

イナが、そう言うと、ジェニルは、静かに頷いた。

「別れ際のボスの態度が、いつもと違う気がした。…今、思えば、そういう覚悟があったのかもしれない…。」

ジェニルは、少し間を置き、言った。

「…自分の変わりが、他の誰かに務まるとは思わん。」

「…そうかもしれません。…でも、ボスから離れる事を最初に選んだのは、ジェニルさんです。ボスもジェニルさんの意志を尊重したからこそ、今回の選択をした訳でしょう?…そろそろ、ジェニルさんも、ボスを守らなければならないと言う呪縛から、解き放たれてもいい頃でしょう…。」

「…そうだな…。そろそろ変わらない日常から、一歩踏み出すべきかもしれんな…。」

ジェニルは、そう言うと、力無く笑った。



「…イナさん!!」
ふとイナは、背後から、声をかけられた。

イナが振り返ると、ジェニーが立っていた。


「…ずっと、ここにいたの?」
「…ああ…。」
「スヨンさんに会わなかった?」
「いや。…いないのか…?」
イナは、顔色を変えた。

「…ええ。…イナさんにウェディングドレス姿を見せたいと、出て行ったきり、いつになっても戻って来ないので、心配になって探しているんです…。」

ジェニーが、そう言うとイナは、頷いた。

「…分かった。…後、探してない場所はありますか…?」
「…あとは…教会の中…かしら…?」

「…分かった。……」

イナは、そう言うと、教会に向かって走り出した。

ジェニーは、イナが立ち去った方角をしばらく見ていたが、やがて、ジェニルに目を向けた。

「なんだか…久しぶりに会う気がするんだけど。…どこかに行ってたの…?」

「…ああ…。ちょっとヤボ用でな…。…元気だったのか…?」
「…見ての通りよ。…式には、出るんでしょう?」

いつもと変わらないジェニルのスーツ姿を見て、ジェニーは尋ねた。


「…いや。祝辞は、今伝えた所だ…。…一足先に俺達は、帰る事にしたんだ。」

「…俺達……?」
「…オチダ・リエは、まだ、どうも、ふっきれてないようないようだ。…先に戻って、憂さ晴らしに付き合う事にした。」
「分かったわ。気をつけて。」

ジェニーが、そう言うと、ジェニルは、静かに立ち去った。




「…スヨン……!」

イナは、勢い良く教会のドアを開けた。

泣き腫らしたような瞳で、スヨンは、イナを見た。

「…何処に行ってたの…?…何処にも行かないって言ったじゃない…。」

スヨンは、ポツリと言った。

「…すまない。…ジェニルさんと話してたんだ…。」

イナが、そう言うとスヨンは、言った。

「…そんな事…どうだっていいわ…。」
「…どうした…?…」
「…もう耐えられない。…どうして、こんなに私ばかり不安になるの!!イナさんは、いつもフラリと居なくなって…その度に、私は、貴方に振り回されてる!…こんなのは、嫌!!…こんな事なら、イナさんを思い出さなければ良かった!!」

「…スヨン…本当にそう思っているのか…?」

「…ええ…。そうよ…。」

「…今は、嫌な事しか思いだせないかもしれないが…良い事もあったんだ…。…それも思い出したくないのか?」


「…ええ。…もう何も考えたくないわ…いっそ、忘れたいの…。」



スヨンの言葉に、イナは、言葉を失った。


スヨンは、そんなイナを黙って見つめていた。









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これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第50話 運命









イナは、スヨンを優しく見つめていた。
不思議とスヨンの不安は、消し飛んでいた。

「…ずっと、側にいてね…。」
「…もちろん…。」

見つめ会う二人に声を掛けたのは、チョンウォンだった。


「…イナ…車で来たのか…?」
「…ああ…。」

すると、
「…じゃあ…スヨンさんを連れて先に帰っててくれ。僕は、これからチョンエさんと、何件か物件を見て来る。」
と、言った。

「…今からか…?」
「ああ。もちろん。今日中に場所決めないと…明日からのチェスの生活はどうなるんだ?路上生活でもさせるつもりか?」
「…あ…いや…確かにそうだが…。」

イナは、驚きを隠せなかった。
どちらかと言えば、打算的な奴だと思っていたチョンウォンが、チェスが困るのを助けるとは、正直、思いもよらぬ行動だった。


イナは、チョンウォンに意味ありげに笑い掛けた。

「なんだ…?」
「…いや…人は、変われるんだな…と思ってな。」

イナは、そう意味深な言葉を言った。
当然、チョンウォンは、イナに、その意味を追及しようとせまったが、イナは、取り合わなかった。


「…じゃあ、場所が決まったら連絡してくれ。俺達は、一足先に帰る…。」

イナは、チェスにそう言い、スヨンと共に、ホテルに戻った。



ホテルに戻ると、早速、待っていたかのように、チョングがやってきた。

「…イナ。一体、何処に行ってたんだ…?」
「…ちょっとな…。…それより、何かあったのか…?」

イナが、そう言うとチョングは、真面目な顔で答えた。

「…ああ…。…実は、明日ラスベガスに戻ろうと思ってな。今度、いつ会えるか分からないから、最後に顔を見ておきたかったんだ。」

「…明日…?…随分、急だな?」

イナが驚いたように言うと、チョングは、言った。

「早く戻って腕を磨かないと、次の大会までに間に合わなくなっちまうからな。…色々あったが…、入札の結果も出て、チニさんとチョンウォンの所に決まったし、イナとスヨンさんも、又、元のさやに戻ったし…。これで、心残りはないからな…。」

「…まだ、あるだろ…?」

イナが、そう言うと、チョングは、きょとんとした表情を見せた。

「…チョング達は…何しに戻って来たんだ…?」
「…何しにだって…?…お前とスヨンさんの結婚式に出る為だったけど…色々あって…まさか!?」

チョングは、ひとしきり喋ると、驚いたようにイナを見た。

「…おい…!…まさか…!?…そうなのか…?」

チョングが、気付いたように、そう言うと、イナは、笑顔で答えた。

「…明日、帰るだって…?……それじゃ、あんまりだろ…?」

「…本当なのか…!?…」
「…ああ…。式場が空いていれば、明日でもいいんだが…。」

イナが、そう言いかけてる側から、
「…俺にまかせとけ…!」
と、チョングは、走り去っていた。

あの勢いなら、間違いなく今日中に、何処かを見つけてくるに違いない。

イナは、チョングの背中をはにかむように見つめ、熱い友情に感謝していた。




吉報の知らせは、驚く程、早かった。

「…本当に、見つけたのか…?」
イナは、驚きを隠せなかった。

「ああ。ちょっと、いい所を思い出したんだ。事情を話したら、OKが出たんだ。」

チョングは、得意そうにイナに言った。

「…何処なんだ…?」
「…イナが、前に挙式を挙げようとしていた、あの教会だ…。」

「…なんだって…?」
「もう一度、やり直すんだろ?だったら、そこがいいだろ?…なんだ?不満か?…もっと盛大にやりたかったのか?」
チョングが、そう言うと、イナは、考えていた。



…その教会は…

…以前、スヨンに『待ちぼうけ』させてしまった所だ…

…今のスヨンが、そこに行って耐えられるんだろうか?…


「…明日…?」
スヨンは、イナに聞き返した。
「ああ…。急すぎるかもしれないが…チョング達が戻る前に、見せたいんだ。嫌か?」

イナが、そう言うと、スヨンは、嬉しそうにほほ笑んだ。
「いいえ。明日が楽しみです。」

「ところで、イナ。…ウェディングドレスは、どうするんだ…?」

チョングが、そう言うと、イナは、
「今から見に行こう。」
と、スヨンに言った。


「…ウェディングドレスなら…家にあるわ。」

スヨンは、そう言うと、
「…ちゃんと仕事しましょう。」
と、言い残し、足下軽やかに仕事場に戻っていった。


イナとチョングは、スヨンの後ろ姿を見送り、顔を見合わせた。

「…良かったな…。…幸せになれよ。」
チョングは、そう言ってイナの肩を叩いた。

イナは、
「…ああ…。…もちろん…。」
と、うなづいた。

チョングは、イナの背中を叩いた。
「…じゃあ、俺も最後の仕事をしてくるか…。…チニさん所に顔出せよ。まあ、怒られるかもしれんがな。」
「…わかった…。」
「じゃあな。」
「ああ。」

そう言うと、二人はその場を別々の方向に歩きだした。



「…えっ…!?…式を明日挙げるですって!?…おめでとう!良かったわ。」

チニは、イナからの突然の参列の誘いに驚き、喜んだ。

「…突然で驚いたけど…良かったわ。…チョンウォンさんは知ってるの?」
「…いや。…ついさっき決まったばかりなんで…。」
「そう…。それじゃ、私から伝えてもいいかしら…?」
「…もちろん。…お願いします…。」

イナが、そう言うと、チニは、嬉しそうにほほ笑み言った。

「…それで…もちろん、披露宴は、うちでやってくれるのよね…?」

にっこり笑うチニに、イナは逆らう事が出来なかった—。



チニから、やっと開放され会議室を出ると、イナの携帯電話がなった。
チョンエからだった。

「もう場所が決まったのか?」
イナは、チョンエからの電話をうけていた。

「…うん…。…こんな形で出来なかった夢が果たせるとは思ってなかったわ。」
「…そうか…。良かったな…。ところで、明日、予定空けてくれないか?」
「えっ!?…急に改まってどうしたの…?…」
「…実は、急な話だが、スヨンと明日、結婚式を挙げる事になった。…それで是非…」
「もちろん行くわよ!チェスもテジュン達にも伝えておくわ。」

イナが、まだ話し終える前に、チョンエは、答えた。
イナは、チョンエのはりきり方に少々、面食らっていた。
「…ああ…。ありがとう。頼むよ。…それで、場所と時間だが…」

「ねぇ!ねぇ!すごいイナったら、あたしのお客の第一号になるのね!?」
「…はっ?…一体、なんの話!?」
「やだわ!すっとぼけちゃって!!結婚式の後は、披露宴でしょう?第一号のお客様がイナ夫婦なんて、凄いわ!あたし、張り切るから!期待して!」
「…ああ…。」

あまりの勢いに、つい、うなづいてしまったイナであった—。



スヨンは、一人、自席に座り、積まれた書類に目を通していた。
突然、目の前に、黄色い花の鉢植えを置かれ、驚き、顔をあげた。


「…おめでとう。…するんですってね…。結婚…。」

スヨンは、しばらく姿を見せなかったリエが、突然現れ、祝福の言葉を述べている事に、戸惑っていた。

「…ええ…。…ありがとう。綺麗な花ね。」

スヨンが、ひとまず礼を言うと、リエは、そばにあったイスに腰掛けた。

「…運命ってあるのね…。」

突然、リエは、そう言った。
スヨンには、リエの言葉が不思議な呪文のように聞こえた。


「…私…結構、落とす自信あったのに…。…全く悔しいわ…。」

スヨンは、何も言わなかった。
リエは、続けた。

「…私の方が、スヨンさんより、先に会っていたら…あるいは、記憶をなくしたのがイナさんだったら、良かったのに…。きっと、その時には、私がイナさんの隣にいるわ。」

リエの言葉に、スヨンは、動揺を隠せなかった。
自信をもって言い返す事が出来なかった。


そんなスヨンを、見てリエは、ふっと笑った。

「…って、イナさんに言ったの。…そしたら…『そうだったとしても、俺は、又、スヨンを、好きになる。何故なら、運命だからだ。』…って、言いきったのよ…。」

スヨンは、顔を上げてリエを見た。

「その時の私の気持ち、分かるかしら?…だから、これくらいの意地悪くらい、言わせてね。」

リエは、そう言うと、笑顔を見せた。

「あんまりムシャクシャするから、カジノを渡り歩いて荒稼ぎしてきちゃった…。やっぱり、私には、この道が合ってるんだわ。…ところで、ジェニルさん、見なかった?」
「いえ。…そういえば、最近、見てません…。イナさんなら、何か知ってるかも…?」
「…そう…。…まあ、いいわ…。とにかく、おめでとう。幸せになってね。」

リエは、そう言うと部屋を出て行った。



スヨンは、黄色い花を見つめながら、イナが言ったという言葉を思い出していた。


…もう、イナさんったら…


スヨンは、ふと、その花を見つめた。



…この花…何処かで…?


しかし、何もおもいだせなかった。


スヨンは、その花を窓辺に置いた。

…ああ、そうだわ…
…イナさんの家の庭で見たんだわ…


…でも、どうしてこの花なのかしら…?


スヨンは、しばらく考えていたが、明日の事を思うと笑みがこぼれた。


…早く明日にならないかしら…?…


スヨンは、花の事をすっかり忘れ、明日の結婚式に気持ちは向かっていた。


忘れられた花は、寂しそうに小さく揺れていた…。











ビョンホングッズ
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これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第49話 ずっと側にいる









チョンウォンは、車で、スヨンと共に、チェスの会社に向った。

「…そういえば、そろそろお昼だ。…何処かで食べてから行くかい…?」

ハンドルを握りながら、チョンウォンは、助手席のスヨンに話しかけた。


すると、スヨンは
「大丈夫です。…早く行きましょう…。」
と、答えた。


チョンウォンは、スヨンの態度に、思い当たる所があった。



…あの時と同じだ…


スヨンの様子は、チョンウォンが何度となく見つめて来たのと同じだった。
スヨンは、イナがいなくなる度に、いつも寂しげで不安そうだった。


…その時の事を思い出してるのか…


チョンウォンは、スヨンをイナに早く合わせて上げようと車を急がせた。






「ねぇ…、そろそろお昼にしない?」

チョンエは、そう言うと、持って来た料理を広げた。
イナもテジュンもチェスも、早速、チョンエの作った料理を口にした。

「旨い!」

テジュンが、真っ先に褒めた。

すると、
「…だろう?…正直、意外だったんだ。チョンエが料理するとは、思わなかった。昨日のも旨かった。」
と、チェスも、褒めた。

イナは、そんな二人を楽しそうに見ていた。

「…長い付き合いだが、料理をしてる所を一度も見た事がない。…一体、いつの間に覚えたんだ…?」

イナが、そう言うと、チョンエは、答えた。

「だから言ったでしょ?あたしは、テスと屋台でもやって暮らしたかったの!!」

「…へぇ…屋台か。いいね。」

振り替えると、チョンウォンがスヨンと共に現われた。

「すまない。開いていたから、勝手に入ってしまった。美味しそうですね。手作りですか?」

チョンウォンは、チョンエの作った料理に目をとめた。

「良かったら、どうぞ。」

チョンエが、そう言うと、チョンウォンは、早速、輪の中に加わり、昔からの友達のように自然と溶け込んでいた。

スヨンは、イナの姿をうらめしそうに、じっと見ていた。

「…私が、どんなに探していたか知らないでしょう…?…どうして、何も言わないで行ってしまうの…?」

スヨンは、イナに向って言った。


イナは、スヨンの表情に、ただならないものを感じていた。
その重い空気が伝わったのか、チョンウォン達も、イナとスヨンに目を向けていた。

「…すまない。…すぐ帰るつもりだったんだ…。」

イナが、そう言うと、チョンウォンは、立上がり、
「イナ。ちょっと来い。」
と、イナの腕を強引に引っ張った。
そして、そのまま別の部屋に連れて行った。

呆然とした表情のスヨンに、チョンエは、声をかけた。

「スヨンさん、一緒に、こっちに来て食べましょう。お腹が空いてると、ケンカするパワーも出ないわよ。」




「…イナ…スヨンさんは、今、イナがスヨンさんに何も言わずにいなくなる所の記憶しかない…。」
「そうか…。この所の態度は、そう言う事だったのか…。」
「彼女に、心配をかけさせるな。…彼女の不安の大きさで、イナがどれだけ好きなのか分かるよ。…ちょっと妬けるけどね…。」

チョンウォンは、そう言うと、イナの肩をポンと叩き、チョンエ達の元へ戻って行った。
イナは、チョンウォンの背中を見送りながら、スヨンの不安がどうしたら和らぐのか考えていた。


昼食を食べ終わり、お腹が落ち着いた頃、チョンウォンは、チェスに行った。

「…君は、これからどうするんだ…?」
「…さあ…どうするかな…?住むところも探さなきゃならないし、仕事も探さなきゃならない。…差し当たって、まず考えなければならないのは、今晩、寝る場所かな。」

チェスが、そう答えると、チョンウォンは、
「…君は、カジノの経営と、屋台のオーナーと、どっちが希望なんだ…?」
と、聞いた。

「…その選択肢の意味は、なんなんだ…?」

不思議な二択に、チェスは、戸惑いを見せた。

「決まってるだろう?…せっかく、こんなに美味しい料理を作れるチョンエさんの腕を、このまま埋もれさせていいのかい?…女性が屋台をやるのは、危険だからね、さしずめ君は用心棒って所かな?…」


チョンウォンは、にやりと笑った。

「…そんなに甘える訳にはいかないよ…。」

チェスが、そう言うと、チョンウォンは、肩をすくめた。

「勘違いしてもらっては困るな。…誰がタダだと言った?僕は、実業家だ。チョンエさんの料理を食べて、これなら流行ると思ったから、投資するんだ。僕は、安っぽい同情を押し売りするつもりはない。…さあ、どうする…?」

チョンウォンに決断を迫られ、迷ったチェスは、チョンエを見た。

すると、チョンエは、
「やりましょう!あたしがオーナーね!?」
と、チェスの手を取り、チョンウォンに、返事を返した。
戸惑ったようなチェスの表情の脇では、チョンウォンとチョンエが具体的な話を進めていた。



イナは、ポケットの中の携帯に気付くと電源を入れた。
電源を入れてすぐ電話がなった。

イナが電話に出ると、
「…やっと繋がったか~…。」
と、言う声が聞こえてきた。

チョングだった…。

「すまない。電源を切っていた事を忘れていた。」
「チニさんは、カンカンだったぞ!後で留守電聞いてみろ?」
「…留守電?」
「…ちっ…そんな事だろうと思ったよ。後で教えるよ。…それより、何時に戻る?」
「…どうしたんだ…?急に?もうすぐ帰るが?」
「…わかった。じゃ、後でな…。…」

チョングは、そう言うと電話を切った。
イナは、チョングの突然の電話に、首を傾げながらも、スヨンのいる場所へ戻った。


「何、してるんだ?」

イナが戻ると、チョンウォンとチョンエが固まって話をしていた。

「…チョンウォンがチョンエの屋台計画に出資するらしい。…チェスの用心棒付きでな…。」

テジュンが、残り物をつまみながら、イナに言った。

「…なんだって…!?」

イナは、正直に驚いていた。

「…まあ…、金持ちだから、できる事だけどな…。」

チクリと、テジュンは言うと、気付いたように
「…あっ!…イナの分も食べちまった!!すまん。」
と、空になった容器を見せて言った。

イナは、そんなテジュンを見て、クスッと笑った。

「…別にいいよ。気にするな…。」

笑顔でテジュンに答えたイナの目の前に、すうっとスヨンが、容器を差し出した。

「さっき、分けて貰ったの。良かったら食べる…?」
「…ありがとう。」

イナは、礼を言うと、早速、つまんで口に運んだ。

嬉しそうにイナの姿をスヨンは、見つめていた。

イナは、スヨンの視線を痛い程、感じていた。

「…なあ…?…俺の事がそんなに信用出来ない…?」

イナは、じっとスヨンを見つめて言った。

「…そんな事ないわ…ただ…ちょっと…姿が見えなくなると不安になるの…。」

スヨンは、イナの顔を見れずに瞳を逸らした。

「…なんで、目を剃らすんだ?…今から大事な事を言おうとしてるのに…。」
「…大事な事…?」

スヨンは、そう聞き返したがそれでも、イナの目を見る勇気がなかった。

「…なんだ…?…今から大事な話をするって言ってるのに、そんなに、俺と話をするのが嫌か?人と話をする時は、相手の目を見ろって、習わなかったのか?」

「…だって…どんな顔していいのか分からないもの。…イナさんを…疑ってたって言われたら…否定出来ないわ。」

スヨンは、俯いたまま答えた。
すると、イナは、言った。

「…じゃあ、今、言う。そのまま聞け。…結婚しよう…。」

驚いたスヨンは、顔を上げてイナを見た。

「…なんだ…?…普通に俺の顔を見れるじゃないか?」

イナは、スヨンの顔を見て、いつもの笑顔を見せた。

「…どうして急に…?…私の為…?」
「急にじゃないよ。前々から結婚するつもりで、それが延び延びになってただけだろ?…ひょっとして、嫌になったのか?」

「…嫌じゃないわ…。…そんな訳ないじゃない…。」

スヨンは、瞳に溢れ出しそうに涙を浮かべていた。
イナは、そんなスヨンを抱き寄せた。

「…じゃ…決まりだな。いつにしよう?…明日にするか!?少しでも早い方がいいな。」
そう言って、スヨンの頭を優しく撫でた。

イナの気持ちに感謝しながらも、スヨンは、それでも不安な気持ちを払拭出来なかった。

「…でも…私…まだ思い出せてないわ…イナさんのこと…。」

「そんな事は、問題じゃない。お互いの気持ちが同じなら問題ないだろ?…まさか、やっぱり、嫌なのか?」

イナが、スヨンの気持ちをほぐすように、おどけて言うとスヨンは、いつもの笑顔を見せて笑った。

「…もう…イナさんったら……。」

イナは、その笑顔を優しく見つめた。


「…何処にも行かないよ。何があっても俺の帰る場所は、ここしかないんだから…。」

「…ずっと…側にいてね…。」

スヨンがそう言うと、イナは、優しい瞳で答えた。


「当たり前だ。…俺以外に、スヨンのわがままに付き合える奴は、いないだろ?」
「…イナさん、ひどい…!」
やっと笑顔になったスヨンをイナは、ただ愛しそうに見つめていた…。









ビョンホングッズ

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前回までの話はこちら→目次



第48話 友の為に出来ること。









朝になった—。


チョンウォンの言う通り軽く朝になっていた。



…と、言っても、話の途中から、スヨンは、うたた寝してしまい、イナは、そんなスヨンを軽々と抱き上げ、二階のベットに運んだ。



スヨンの寝顔に、イナは、幸せを感じていた。



スヨンに、毛布をそっと掛けると、イナは、リビングに一旦、戻り、焼酎のボトルとグラスを手にした。


再び、二階の寝室に向い、スヨンが寝息を立てている傍らで、酒を飲み始めた。





…とても、眠れそうになかった。


イナは、チェスの事を心配していた。



…これから、あいつは、どうするんだろう…?…
…チョンエに、つい、連絡したが…
…チェスが、ヤケを起こしてないだろうか…?




色々、イナが考えを巡らせていると、スヨンが何かにうなされ始めた。



イナは、スヨンの髪を優しく撫でた。

すると、スヨンは、落ち着きを取り戻したように、再び、スヤスヤと深い眠りに落ちた。




イナは、スヨンの寝顔に安心し、再び、酒を口に運んだ。




…いよいよ、明日、結果がでる…。
…チェスの会社には、事業を続けるだけの資力も人材もないはずだ…。
…これから、どうするんだ…?




イナは、いつの間にか、又、チェスの事を考えていた。


すると、スヨンは、再び、うなされ始めた。

イナは、スヨンの手を握り、安心させようと声をかけた。

すると、スヨンは、落ち着きを取り戻し、再び寝入った。



…ところが…



その後も、スヨンは、うめき声を出し、イナは、その度に、落ち着かせようと努力していた。






——その結果——




スヨンは、快適な目覚めを得ていた。

「思っていたより、よく眠れたわ。…イナさんは…?」


スヨンは、大きく伸びをし、カーテンを開け、朝日を体いっぱいに浴びた。


一方、イナは、急に光を感じ、眩しさを避けるように目を細めていた。



「…えっ?…まあ…まあかな…。」

結局、イナは、一睡も出来ないうちに朝になっていた。

しかし、イナは、それをいい出す事が出来なかった。


そんなふうに別々の気分で朝を迎えた二人だった。


シーワールドホテルに着くと、二人は、社長室に呼ばれた。


二人を見るなり、チョンウォンは言った。

「さっき、チニさんの所に連絡が入った。唯一のライバル候補だった(チェスの)会社が辞退した為、うちで決まったそうだ。」
「…そうか…。」


イナは、心から喜ぶ事が出来なかった。

その様子に、チョンウォンは
「…同情してるのか…?」
と、聞いた。


イナは、首を振った。

「…いや。…同情ではなく…心配なんだ…。」
「心配?…友達だっていうのか…?…」
「…そう…かもな…。」



イナは、そういうと部屋を出て行った。


「……」

スヨンは、事情が分からず、不思議そうに、イナの後ろ姿を見送っていた。


「…何かあったんですか…?」

「…ああ。ちょっとね。…せっかく、昨日慌ただしくテストしてもらったのに、済まなかった。」

「いえ。いいんです。おかげで少し記憶を取り戻す事が出来ました。」

スヨンは、そういうと、ほほ笑んだ。


「それは良かった。…でも、あの企画は、建物が完成したら、オープニングセレモニーで、是非、使わせてもらうよ。」

「…はい。ありがとうございます…。」


スヨンは、お辞儀をして、出て行った。


一人、社長室に残されたチョンウォンは、考えていた。



…何か、僕に出来る事があるんだろうか…?


ふっと、我に返ったチョンウォンは、思った。



…何故、僕が、仲がよくもないチェスの心配をしなければならないんだ…!?
…まったく…イナの人の良さにも呆れる…!!…
…肝心のジェニルも、シバゥについて、ファルコーネのところに行ったままだし…
…だいたい、チェスには、なんのお咎めはないんだろうか…!?…




…等と、いつの間にか、再び考え始めていたチョンウォンだった。









その頃、当のチェスは、ガラーンとしたオフィスにいた。


…短い間だったが…
…結構、思い入れがあったんだ…


チェスは、誰もいないオフィスを見つめていた。

「…さて…片付けるか…。」

誰に聞かせる訳でもなく、自分を奮い立たせる為に、チェスは、言った。

明日には、ここを引き払い、明け渡さなければならなかった。

チェスは、一人、黙々と、片付けをしていた。


「…なあ、赤い絨毯なんて趣味悪いじゃねーか。しかも、がっちり貼り付いてやがる。…あれ、剥がすのは、大変だなぁ…。」


チェスは、その声を聞き、入口を見た。


「テジュン。…どうしたんだ?…仕事は…?」


チェスが驚くと、テジュンは、言った。


「…有給がさ…消化しないともったいないんだよ…。…暇だから、手伝ってやるよ。」



「…テジュン…俺を嫌いなんじゃないのか…?」
「そんなの…嫌いに決まってるじゃないか!」
「じゃあ…今、ざまあみろって思ってるだろう…?」
「…ああ。思ってるよ。」
「…それでも、手伝ってくれようとしてるのは、何故だ?」
「…暇だから…。」
「暇潰しなのか?」
「ああ。そうだよ!!…さっさと、手を動かしやがれ!…こんちきしょう!!」



テジュンが、照れを隠すように、そう言うと、チェスは、笑顔を浮かべた。

「…ありがとう…。」

チェスは、小さい声で言うと、そそくさと掃除を始めた。
微かな声だったが、テジュンの耳には、ちゃんと届いていた。
テジュンは、チェスの後ろ姿を黙って見ていた。



…ちっ…
…蚊の鳴くようなような声だしやがってよ…
…聞こえなかったら言い損じゃないか…。



テジュンは、ふっと笑い、机を持ち上げた。


「おい!椅子と机は、どうするんだ…?」
テジュンは、チェスのいる方を見て、尋ねた。

「ああ…。業者が後で取りに来るから、端によけといてくれ。」

チェスは、テジュンと目も合わせずに答えた。
その様子に、テジュンは、思った。



…案外、シャイな奴だったのか……


「…なんか、言ったか…?」

それを察したのか、チェスが言った。

「いや。別に…。わかったって言っただけだ。」
「…そうか…。」

チェスは、そう言うと、再び書類を片付け始めた。

…すげ~…
…カンの良さはイナ並みだ……

テジュンは、あまり考えないようにする事にした。







「…イナさん、何処に行っちゃったのかしら…?」

その頃、スヨンは、イナの姿を探して、シーワールドホテル内を探し回っていた。

「スヨンさん、どうかしたの?」

ジェニーが声をかけた。

「イナさんを見ませんでしたか?」
「いえ。見なかったわ。…どうかしたの?」
「さっき、チョンウォンさんに呼ばれて…急に…部屋から出て行ってしまったので…不安なんです。」

スヨンの不安げな表情に、ジェニーは
「わかったわ。一緒に探しましょう。」
と、言ってスヨンを励ました。



その頃、イナは、チェスの会社の前に来ていた。自分に何が出来るか分からなかったが、行けば何か出来るような気がした。
ただ、なんと言って顔合わせればいいのか、躊躇していた為、中に入れずにいた。

「こんな所で、何してるの?」
声をかけたのは、チョンエだった。
「…ちょっと、気になってな…。」

イナが、そう言うと、
「チェスなら大丈夫よ。イナが思ってるより強いから。入りなさいよ。」
と、チョンエは、イナの手を引っ張った。

イナは、引きづられるまま、エレベータに乗り、最上階へ向った。

エレベータが開くと、チェスとテジュンが、力を合わせて、あの趣味の悪い赤い絨毯を剥がしていた所だった。


「…二人とも頑張ってるじゃない…?お昼ご飯持って来てあげたんだから、頑張ってお腹を空かしてよ!」

チョンエは、そう言うとエレベータを降りた。
イナも、続いて降りると、テジュンが言った。

「随分、遅い登場じゃねぇか?これは、二人分働いて貰わないとな!」

チェスは、イナを見て
「…来てくれてありがとう…」
と、感謝の言葉を口にした。

「…いや…遅くなって悪かった…。」
イナも、すんなりその言葉を口にした。

イナは、上着を脱ぐとワイシャツの袖を捲り上げ、言った。

「さて…何を手伝えば良いんだ…?」



チニは、イナの携帯電話を呼び出すが、電源が入っていない為かかりません留守番電話センターに・・・、というメッセージが、何度かけても流れていた。


…まったく…
…イナさんったら、何処で何をしてるのかしら…?


チニの側には、不安そうなスヨンと心配顔のジェニーがいた。

「スヨンさん、イナさんの携帯は、繋がらないわ。…チョンウォンさんには、聞いてみた…?」
「いえ。…何かあるのだとは思うんですが…ちょっとね、っと言われたので、それ以上聞けなかったんです。」
「…そう。…それなら、何か知っていそうね。……電話してみましょう。」

チニが、そう言って、受話器を持ち上げた時だった。

「…誰に電話するって?」
と、タイミングよく、チョンウォンが現われた。

「チョンウォンさん。イナさんの行けそうな場所に心当たりはないかしら?」
「それなら…多分、チェスの所だろう…。」

チョンウォンは、すぐさま答えた。

「チェスさんって?…何しに?」
「…色々あってね…身寄りがないチェスに、イナは、同情してるんだろう。」

チョンウォンは、そう言うと更に、続けた。

「今から、僕もそこに行こうと思っていた所だ。チェスの会社の詳しい住所をチニさんに聞こうと思ってね。…スヨンさんも、一緒に行くかい?」

すると、チニは、
「あら?チョンウォンさんは、何しに行くの…?」
と、不思議そうに尋ねた。

チョンウォンは、
「…何しに…って…?もちろん、イナを連れ戻しにさ。」
と、答えたが、チニは、すっきりしないようであった。


それでも、チニは、チェスの会社の住所が書かれた書類を手渡した。

「…ありがとう…。」
チョンウォンは、そう言うと、スヨンを連れて出て行った。




チニは、窓からチョンウォンの姿を見下ろした。

「…嘘が下手ね…。…チョンウォンさんは…。」

そう言って、チニは、ほほ笑み、見送っていた—。












ビョンホングッズ

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第47話 記憶の断片










チェスは、誰もいない事務所で、一人椅子に座っていた。

あれだけ沢山いたファミリーだったが、いつの間にか蜘蛛の子を散らすように誰一人いなくなっていた。

ぼんやりと月明りだけが、チェスを照らしていた。




…本当に、独りぼっちになってしまったな…

…これから、どうする…?



先の事がまるで考えつかなかった。

チェスは、まんじりともせず、魂が抜けたように、ただ一点だけを見ていた。


「明りもつけないなんて節約?」


ふと声を掛けられ顔を上げると、チョンエがいた。


「…何故、ここが…?」


そんな事は言わなくても分かっていた。イナ以外考えられなかった。
チョンエは、何か言いたげだったが、何も言わなかった。



「…悪いが帰ってくれないか…?」


チェスが、そう言うと、チョンエは、持っていた包みを机の上に広げ始めた。


「聞こえないのか?…なんのマネだ?」


チェスは、椅子から立上がり、言う通りにしてくれないチョンエの腕を掴んで、当たり散らした。


「食べ終えたのを見届けたら帰るわ。一人だったら、食べないでしょ?」


チョンエが、机に広げたのは、沢山の品数の料理だった。


「…チョンエが俺の為に作ったのか…?」


チェスは、そう言うとチョンエの顔を見た。


「そうよ。何が好きで何が嫌いか分からないから、色々作ったら、こんな数になったわ。責任取って食べてよね!?」



チョンエは、照れ隠しなのか、最後は、チェスを脅していた。



「別に食うもんに好き嫌いはない。…ただ、腹が減ってないんだ。…ごめんな…。」

「そんな事言って!…本当は、まずいと思ってるからじゃないの…!?」

「あのな…そんな訳ないだろう…?」

「…じゃ、何?…あたし一人で食べろと?あたしを太らす気?」

「…そ…そんな事は言ってないだろう…?」

「じゃ、一緒に食べてよ。…それとも、あたしと一緒が嫌なの…?」

「だから、違うって!」

「それじゃ、問題ないわね。食べましょ。」


チョンエは、すっかりチェスを自分のペースに引き込み、強引に椅子に座らせた。


「結構、作るのに手間かけたんだから、味わって食べてくれないと困るわ。…分かってるわよね…?…」







スヨン達一行が、ブレゼン前のテストを終えて、チュンムンホテルに戻って来たのは、夜の十一時になろうかという時間だった。

スヨンは、報告の為に、社長室のドアを叩いた。


「どうぞ。」

チョンウォンの声を聞き、スヨンは、社長室に入った。

「お疲れ様。どうだった?」

チョンウォンは、スヨンを見るなり、そう言った。

無事に成功した事を告げると、チョンウォンは瞳を輝かせた。



「ありがとう。…遅くまで疲れただろう…?…」

「いえ。…それよりも、聞きたい事があります。」

「…なんだい…?」


チョンウォンは、グラスに冷たい飲み物を入れ、スヨンに手渡した。
スヨンは、礼を言い、両手でグラスを受け取った。


「花火が打ち上がった時に、私、イナさんの姿が浮かびました。…でも、イナさんは、とても寂しそうな瞳をしていて…私は、焦ってイナさんの姿を探していました。…その後、チョンウォンさんに文句?を言っているような…そんなイメージでした。その時、何があったのかな…って。」


スヨンは、一気に、そう言うと持っていたグラスに口をつけた。


「それは…多分、火山ショーの時の話だ。…何処から話したらいいんだろう…?…あの時は…、スヨンさんは、イナが死んだと思っていたからだ。僕がそうスヨンさんに思わせた。イナも、スヨンさんに合わせる顔がなくて、遠くから見守っていた…んだと思う。だから…スヨンさんがイナの存在に気付いた時に、姿を眩ましたんだ。」


「…私に合わせる顔がないって…どうして…?」


スヨンは、驚いて聞き返した。


「それは、家に帰ってからイナに聞くといい。…多分…最初から話したら、軽く朝になると思うけど。」


チョンウォンは、そう言って笑った。


「それじゃ…もう遅いから送るよ。…イナの家でいいんだろう?」


チョンウォンは、ジャケットを羽織ると、車のキーを手にした。

スヨンは、少し恥ずかしそうに頷いた。



「お帰り。」

イナは、玄関のドアを開けると、笑顔でスヨンを迎えいれた。


スヨンは、ホッとした表情を見せると
「…ただいま…。」
と、小さい声で答えた。

その様子に、心配になったイナは、尋ねた。


「何かあったのか…?」

「…ええ。…なんだか今、一緒にいる事が嬉しくて…イナさんが、ここに居てくれて、ホッとしているの。」

「どうしたんだ?…ずっと一緒にいようって約束したじゃないか…?」

「…そうなんだけど…。」


口ごもったスヨンに、イナは、
「まあ…ここじゃなんだから…中に入れよ…。」
と、中に入るよう促した。

スヨンは、言われた通り、中に入り、リビングに向かった。

「…あ…いい匂い…。」
リビングに入ると、美味しそうな匂いが漂っていた。


「…だろう?…晩飯まだ食ってないだろ?…俺の会心の作を食べさせたくて、待ってたんだ。一緒に食べよう。」


イナは、笑顔でスヨンにそう言った。

スヨンは、そんなイナの顔を見るなり、瞳に涙を溜めた。


「…ど…どうしたんだ…!?」


突然のスヨンの涙にイナは狼狽した。


「…何があったんだ…?」


イナは、心配そうにスヨンの顔を覗きこんだ。


一旦、溢れ出した涙は、そう簡単には、止まりそうになかった。

スヨンは、イナに抱き付いた。



「…もう…何処にも行かないで…。」



イナは、全身でスヨンを受け止め、悲しみに包まれたスヨンを、優しく抱き締めた。



「…どうしたんだ…?…急に…?」



イナは、スヨンの髪を優しく撫でながら、聞いた。

「…私、イナさんの姿を初めて思い出せたわ。…でも、それは、とても悲しい場面だった。…イナさんが私の前から姿を消して…私は、イナさんが居ないと、どんなに苦しくて、辛いか…怖かったの…。」

「…ごめん…。」


イナは、謝りながらも、どの場面なのか、考えていた。




…考えてみると…、


俺が、スヨンの前から姿を消したのって…
一度や二度じゃない…な…。



イナは、深く悔やんでいた。


「…本当に…ごめん…。…二度と、辛い思いはさせないから。」


イナの言葉に、スヨンは、言った。


「…聞かせて…。」

「…何を…?」

「…今まで、イナさんがどんな事をしてきたのか…。何故、私の前から、黙っていなくならなければならなかったのか…知りたいの。」

スヨンの真剣なまなざしに、イナは、何処から話せばいいか躊躇した。


「…話せば長いんだけど…本当に今、聞くのか…?」


イナは、念の為に確認をした。

スヨンは、コクリと頷いた。

イナは、決心したように言った。



「とりあえず…飯を食おう。…腹ぺこなんだ。」







「…さあ!喰ったぞ!早く帰れ!」


チェスは、チョンエの手料理を少しだけ食べると、早く帰るように促した。


「…食べたって…?チェスは、随分、少食なのね…?」

「…本当に食べたくないんだ。…ほっといてくれないか…?」


チェスの言葉に、チョンエは、少し怒った表情で言った。

「…ほっておけるくらいなら、最初から来ないわ!…いくら、あんたが、泣いて喚いて、崇めたてまつろうが、嫌だったら来ないわよ!…わざわざ、お弁当作ってまで、来たのは…あんたが心配だったからに決まってるでしょ!?」



チョンエは、一気に捲し立てた。


「…俺の事を心配してくれてるのか…?…」

「…他に、ここに誰がいるっていうのよ…!?」


怒りと悲しみが交差し、感情が高ぶっていたチョンエの声は、段々と、大きくなっていた。



「…まったく…なんてデカい声なんだ。…これじゃ、落ち込めないじゃないか…。」


溜め息を付きながらも、そう言うと、チェスは、ふっと、笑顔を見せた。

チョンエも、つられたように笑顔になった。



「…落ち込んでも良い事ないわ…。男なんだから、前に進まなきゃ…。」


チョンエは、そう言うとチェスの背中をバンと力一杯、叩いた。

思わず、むせ込むチェスを見て、チョンエは言った。


「…あら?案外、体弱いんじゃないの…?」




「…イナさん…料理おいしかったわ…。やっぱり、私の作ったのより…、悔しいけど、上手だわ…。」


スヨンは、そう言うと、持っていた匙をテーブルにおいた。


「それは…スヨンが今まで、試食専門だったからだろう?」

「イナさんったら!ひどいわ!…でも、そうだったの…?」

「それは…自分で作ってみりゃ分かるだろ…?…こういう事は、体が覚えてるもんだろう?」



イナが、そう言うと、スヨンは、よく考えてみた。


「…ないわ。何も浮かばない。…今は、何も作れない自信があるわ。」


スヨンが、あまりにも、どきっぱりと答えたので、イナは、吹き出しそうになった。


「それは、自慢か?」

「ええ。…今はね。…そのうち、惚れ直しちゃうくらいの腕前になってみせるわ。」

「…それは、無理だ…。」

「ひどいわ。イナさん…。私には、料理の才能がないって…言いたいの?」



スヨンは、イナの言葉に、腹を立てていた。

ところが————

イナは、スヨンを見つめて言った。




「…これ以上、どうやって好きになるんだ…?」




イナにしては、上出来の殺し文句だった。


スヨンの機嫌が、すこぶる良くなったのは、言うまでもなかった。




「ところで…俺が、どうやって生きて来たのか、まだ聞きたいのか…?」


イナが、そう言うと、スヨンは、頷いた。


「今までの事を話すのはいいが…スヨンにとって思い出したくない事もあるかもしれない。…それでもか…?…」

「…ええ…。今、こうして私達が一緒にいるのは、そういう過去があったからでしょう?…少しでも、思い出すきっかけが欲しいの。」

「…わかった。…じゃ…俺達が最初に出会った所から話そうか…?」



イナが優しく言うと、スヨンは、真剣なまなざしで耳を傾けた。

壊れたパズルを組み立てるように———。










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これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第46話 遠い道









チェスは、丁度、ビルから出て来たばかりのイナと出くわした。

チェスには、自分を探していたと、聞いていた割には、イナの態度が、不自然に思えた。


「…なんだ?俺に用があったんじゃないのか…?」


チェスは、口許に笑みを浮かべていた。



「…いや…。…もう済んだ…。終わったんだ。」


イナの言葉に、チェスは、ハッとビルを見上げた。



「…何をした…?」


チェスは、目を見開きイナの襟首を掴み、詰め寄った。



「…お前は、気付いていたのか…?」



イナは、寂しそうな目でチェスを見据え、そう言った。チェスには、なんの事かさっぱり分からなかった。



「…シバゥという男が…お前を狙っていた事を知っていたか…?…」



イナの言葉に、チェスは、カッとなった。


「何を根拠にそんな事をいうんだ!?そんな事がある筈ないだろう!?」



だが、イナは、更に続けて言った。



「…チョンエも狙われていた。お前は…うすうす気付いていたんじゃないのか?」



その言葉に、チェスは、手から力が抜けたようだった。

するりと掴んでいたイナの襟首から、手を離した。



「…それは…イナの憶測だろう…?」

チェスは、否定したが、チェス自身もシバゥの動きが気にはなっていた。


「…俺が、こんな時期に憶測でここに来ると思うか…?」

イナが、そういうと、チェスは首を振った。


「…いや…。…俺を探してると聞いて、不審だと思ったさ。…チョンエに何かあるのかと。…認めよう…。俺もシバゥが何かしようとしてると思っていた…。」


素直にチェスが、そう認めるとイナは言った。


「…シバゥがファルコーネを狙っていた事を知っていたか…?」


イナが、そういうと、チェスは驚いた表情を見せた。


「…まさか…。そんな馬鹿な事を…?」

「お前を消し…ファルコーネを狙い…頂点に立とうとしていた。…俺は、ファルコーネの筋の情報を聞いた。…だから、お前を探していた。…しかし、もう…手遅れだ…。」

「…どういう意味だ…?…いや…分かった…。察しはついた…。」



チェスは、すぐにこれからどうなるか、分かっていたようだった。

唇を噛み締め、イナに言った。



「チョンエに謝っておいてくれ。仕事が片付いたら又行くと言ったが…どうやら、もう行けそうもないと…。」



「…逃げろよ…。…ファルコーネは、お前の事は反逆因子とは思っていない…。」


イナは、逃げる事を進めた。


「…そんな事ができる訳がないだろう。知らなかったからと…ボスが逃げる訳いくか!?…例え、犬死にでも…俺のファミリーを見捨てる訳には行かない…。そうだろう?」



チェスは、決心した様に、そう言った。


「…チョンエは…どうするんだ?」


チェスは、その名前を聞き、一瞬ためらいの表情を見せたが、すぐに

「…俺は、能がない男だ。…もともと住む世界が違い過ぎたんだ…。」

と、ふっきるかのように語った。


イナは、何も言う事が出来なかった。

一度、腹をくくったら、何を言っても無駄な事は、分かっていた。

チェスは、イナの言いたい事が分かったように頷いた。



「…イナ…。ありがとう。お前に会えて良かったよ…。」


チェスは、イナの肩をポンと叩くと笑顔で、ビルの中に入って行った。


イナは、そんなチェスの後ろ姿をしばらく見送り、テジュンの待つ車に向かった。




「…遅かったじゃないか…。心配したぞ?…チェスと何を話してたんだ?」


イナが車に乗り込むなり、テジュンは、話しかけて来た。


「…ちょっとな…。…」


イナは、座席に深く腰掛けると、小さく溜め息をついた。


「なんだよ?人が心配してるのに…。」


テジュンが、そう愚痴ると、イナが座っていた助手席側の窓ガラスがノックされた。

イナが、ふと顔を上げると、ジェニルが立っていた。


「…悪いが…ここで待っててくれ…。」


テジュンにそう言うとイナは、車からおりた。








「…お前の気持ちは、分かる…。」

と、ジェニルは言った。


「…何とか出来ないのか…?」


イナは、何も出来ない自分に歯がゆさを覚えていた。



「…すべては、ボスの決める事だ。」


ジェニルの言葉にイナは、溜め息を漏らしていた。


「…なんだか嫌な気分だ…。雨が降るかもしれないな…。」


曇った空を見上げたイナの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた——。









チェスは、エレベータを降りると、注意深く辺りを見回した。



…ちっ…


…いつもなら、煩いくらいに人が群がって来たのによ…



受付にも人の姿はなかった。



…一体、何処へ行ったんだ…?…



チェスがオフィスの中に入ると、シバゥの廻りには、人が群がっていた。



「今、帰った。みんな何をしけたツラしてるんだ?」


チェスは、何も知らない素振りで声を掛けた。


「…チェス。お前は、しばらく旅に出ろ…。」


シバゥは、チェスを見るなりそう言った。

チェスは、眉をひそめ、聞き返した。


「…何故だ…?…」

「…詳しく話している暇はない。…何処か遠くへ行くんだ…!」


シバゥらしくない言葉だった。


「嫌だね!俺は、シバゥの操り人形じゃない!俺は、ここのボスだ!何故、命令を聞く必要がある!?」

「チェス!これは、私の問題だ。…お前は、何も知らない事だ。…巻き込む訳には行かない。」

「…巻き込む訳には行かないって…俺を殺そうとしてた事?…女を狙ってたこと?…それとも…ファルコーネを狙っていたことか?」


さらりと、チェスがそう言うと、シバゥは、驚きを隠せなかった。


「何故、それを?」

「ここに来る少し前にイナに会った。…今のがファルコーネが掴んでいた情報らしい。その様子じゃ、俺を狙っていたと言うのも本当のようだな…?」


チェスが、そう言うと、シバゥは、深々と頭を下げた。


「すまなかった…。私の判断が甘かった…。」

「やっちまった事を後悔するのは、たやすい。問題は、それをどう乗り越えるか…だ。そうだろう?」


チェスは、そう言うとシバゥの体を起こさせた。


「…チェス。まだお前は、若い。人生いくらでもやり直せる。逃げるんだ。」

「はん?シバゥもイナと同じ事を言うんだな?俺は、ボスだ!みんなをおいて逃げる訳には行かない。シバゥを見捨てるような真似は出来ない。」


チェスが、そう言うとシバゥは笑いだした。


「…チェス。一つ良い事を教えよう。お前の兄をさらったのは私だ。さらって公園に捨てた。誰かが育ててくれたようだが…結末がどうなったのかお前は知っているだろう…?…」


シバゥの突然の告白にチェスは、当惑した。


「…何故…そんな事を…?」

「…イナさんの言う通り…私は、欲に目が眩み、廻りが目に入らなくなっていた。…生まれたのが、双子と聞いて、あとあと組織を乗っ取る事を考えると面倒だと思った。…だから、弱々しい泣き声だったお前を残し、強い泣き声だった兄貴の方を捨てたんだ。…私は、お前に恨まれて当然の男だ。」


「…でも、それでも、あんたは、俺に逃げろと言う。…あんたは、まだ、人の心を持っている証拠だろう?…違うか…?…俺は、俺を信じてくれる仲間を裏切る訳には行かないんだ…。」


チェスの言葉に、シバゥは、瞳を潤ませた。


人を威圧するような圧迫感とざわめきが聞こえ、人波がさっと引いたように、道が開いた。もはや、チェスのグループは、歯向かうのを止めたようにおとなしかった。


黒ずくめの男達と一緒にやって来たのは、ジェニルだった。


「…盛り上がってるところ、すまんが…」

と、ジェニルは、声を掛けた。


硬い表情のチェスと観念したような表情のシバゥに向い、ジェニルは、更に言った。



「ボスがシバゥを連れてくるように、との命令だ。屋上でヘリが待機している。…行こう。」



シバゥを守るかのように、チェスは、身を乗り出した。



「俺が行く!」


チェスが、そう言うと、シバゥは、チェスを押し退けた。


「行きましょう…。」


シバゥは、ジェニルの言葉に従い、屋上に向かった。

屋上では、プロペラの風圧でかなりの風が吹いていた。

シバゥは、後からついて来たチェスに言った。



「私の事は忘れろ。お前は、お前の思う道を行け。…今まですまなかった…。」



チェスは、瞳を潤ませ、すぐに、言葉には出来なかった。

シバゥが、ジェニルと一緒にヘリに乗り込もうと体を屈めた時だった。

チェスは、シバゥに向って叫んだ。




「誰が忘れるもんか!…あんたは、俺の中でこれからも生きるんだ!…あんたの人生は俺と生きるんだ!それをわすれるな!」




シバゥは、チェスにニヤリと笑うと、ヘリに乗り込んだ。

乗り込むとすぐにヘリのプロペラは、更に回転し、ゆっくりと上昇していった。

風圧にも負けず、チェスは、ヘリが遠ざかるまで、その姿を瞬き一つせず、黙って見送っていた。



うっすらと一番星が瞬き始め、星が流れた——。








「流れ星ですね。願い事をいいましたか?」

メンバーの一人がスヨンに声をかけた。

辺りは、すっかり暗くなっていた。夕方は曇った空だったが、雲も、いつしかすっかり消え去り、満天の星が光輝いていた。


「馬鹿な事言ってないで、早くやりましょう。…皆さん、これが終わったら帰りますから、真剣に頑張りましょう…。では、私の演説から…」


スヨンは、そう言うとスピーチの真似ごとを始めた。



「…それでは、ごゆっくりお楽しみ下さい…。」


言葉を締めくくると、背後から花火が打ち上がった。

それを合図にするかのように、左右からも連続して花火が上がった。


打ち上がる花火の光から、何故かイナの姿がスヨンの脳裏に浮き上がった。



何故か悲しそうな瞳をしたイナだった。

スヨンの心の中は、焦りで一杯になっていた。




…これは、何かの記憶…?…



悲しげなイナの顔と、イナの姿を求めて探していた自分…。

結局、見つからなくて…

それで、その後は…?




そこから先が思い出せなかった。




…でも、イナさんの姿を思い出せたのは、初めてだわ…



スヨンは、打ち上がる花火を見ながら、嬉しさと悲しさと、寂しさと、いろんな感情を噛み締めていた…。


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第45話 オールイン









イナは、チェスが登記簿上、会社だという住所のビルの中に入って行った。

エレベーターで、最上階を目指した。

イナが、エレベーターを降りると、フロア全体に真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。



…自分達で敷いたようだが…

…趣味を疑うな…



イナは、目に写り込む真っ赤な色に、げんなりしていた。

目の前に案内板があり、イナは、それにそって進んだ。

見た目は、いたって何処にでもあるような普通の会社だった。


イナは、受付に声をかけた。

「社長の…チェスさんに、お会いしたいのですが…?」

受付の女性は、
「まだ、出社しておりません。」
と、答えた。

「何時頃になりますか?」

イナが、質問すると、受付嬢は、何処かに内線をかけた。

すると、
「副社長がお会いしたいそうです。どうぞ、お入り下さい。」
と、そのまま、会議室と思われる部屋にイナは、案内された。




「少々お待ち下さい。」


案内してくれた受付嬢は、そう言うと一礼して出て行った。



イナは、軽く部屋中を見回した。
すぐに4~5台の隠しカメラの存在に気付く事が出来た。



…カメラなんて…
…なんのつもりだ…?




イナが訝しげに思っていると、5人の男達が入って来た。
白髪交じりの背の高い男は、イナの前に立った。



「キム・イナ君だね?私は、副社長のジョン・シバゥだ。」



そう言って、白髪交じりの男は、イナに右手を差し出した。

イナは、眉をひそめながらも口許を緩めた。



「どうして、俺の名を?」




イナが、そう言うと、シバゥは、差し出した右手を引っ込めた。


「…これは失礼。…あらかじめ貴方の事は、調べさせて貰いました。ビジネスの基本は、まず『相手を知る』事です。情報がすべてを握ると言っても過言ではない。…気分を害されましたか?」

穏やかに笑い、シバゥは、話しているが、イナは、瞳の奥の殺意を感じていた。


「…いえ…。それなら、俺の性格とかもご存じですね…?」

「…もちろん…。…貴方が、かつて、ファルコーネの下で働き、今でも絶大な信頼を得ている事もね…。」



シバゥは、そう言うと、ほくそ笑んだ。





…そんな事まで、調べあげているのか!……





イナは、顔色こそ変えなかったが、内心、不安がよぎった。





…当然、スヨンの事も知っているだろう…






…いや…違う…


…ひょっとしたら狙いは…!?






「イナさん。今日の来訪の意図は?」


シバゥが、そう言うと、イナは、言った。


「…その前にお聞きしたい。…チェスは、ここには、いないんですか…?」

「はい。先ほども受付の者が申した通り、まだ、出社しておりません。」

「…では、何処に行けば会えますか?」

「…さあ?…私共も、ホトホト手をやいております。」


シバゥは、そう言って笑った。

「…では…、出直す事にします。」



イナは、そう言うと、シバゥの横をすり抜け、立ち去ろうと出入り口に向かった。

すると、出入り口の前に大男2人が立ちはかだった。

イナは、大男達を睨み付けた。



「…どういうつもりだ…?」

「イナさん…せっかくだから、もう少し話しましょう。」


シバゥは、イナの背後に、すっと立ち、声を掛けた。


イナは、背中に向けられた何かを感じ取っていた。

それが、何かイナは、知っていた。



ゆっくりと手をあげ、振り返り、シバゥを見た。



「…まったく…なんのつもりだ…?」








「…あら…?…そういえば、もう会わないんじゃなかったの…?」

チョンエは、ニヤけた顔のチェスに向かって言った。

「…いいじゃないか。又、会いたくなったんだから…。」


チェスは、照れながらそう言った。

すると、チョンエは、思い出したように言った。


「…そういえば…今日は、いつもより、遅かったじゃない?…どうして?」

「ああ…。仕事にね。早く俺に会いたかったのか?」


嬉しそうに、答えるチェスに、チョンエは、言った。


「違うわ!イナとテジュンが、チェスに会いたいって、来てたよ。」

「…イナとテジュンが…?…」



チェスには、テジュンなら、何となく理由が分かるが、イナが尋ねてきた理由に検討がつかなかった。




「…それで、今、イナは何処に…?」

「まったく…。イナと同じ事を聞くのね。そんなに、急ぎの用事なの?私が知る訳ないでしょう?」



チョンエの言葉に、チェスは、ハッとした。





…急ぎ…?…


…今、この時期に…


…明日、結果が出るというのに、イナが俺に会いに来る理由は、一つしかない…。





…チョンエだ…!…





チェスは、自分がイナだったら、次は、何処へ行くか考えた。

行き先は、一つしかなかった。

何故なら、他の情報は、すべて公開していないからだ。



…間違いない。…会社だ!…




「…悪い。帰るよ。」


チェスは、そう言うと、来た道を戻ろうとした。



「…待って…!…みんな、おかしい。何かあたしに、隠してるの…?」


チョンエは、チェスに鋭く迫った。


チェスは、返事に迷ったがすぐに
「…仕事が…やり残した事を思い出したんだ。」
と、答えた。



訝しげに見つめるチョンエに、チェスは、言った。



「用が済んだら、又来るから…。寂しいかもしれないが、それまで、待っててくれ。」


チョンエは、
「…別に寂しくなんてないわよっ!!」
と、言い放った。



チェスは、ふっと笑うと、乗ってきた車に乗り込んだ。





…イナは、チョンエに、何も話してないようだ…


…だとすると…


…シバゥが、絡んでいるのか…!?






チェスは、急いで車を走らせていた。








「ジェニルさん…こんな事は言いたくないけど…イナが大変な時によくラジオなんて、聞いてられますね?」


チョンウォンは、イナが心配で、ジェニルの側にいた。



…本気で、助けるつもりがあるんだろうか…?…




チョンウォンは、何を聞いても答えないジェニルに苛立っていた。


「一体、何を聞いてるんだ!?」

チョンウォンは、ジェニルがしていたイヤホンを奪い取ると耳に押し当てた。



イナの声が聞こえた。


「…なぜ…?」

チョンウォンは、驚きを隠せなかった。

ジェニルは、チョンウォンからイヤホンを取り返し、再び耳に押し入れた。


「…盗聴器だ…。」


ジェニルは、ぽつりと言った。


「イナに、取り付けたのか?」

「ああ。…やつらに取っては、イナは、最高の獲物だ…。」

「…なんの話だ…?」


チョンウォンには、訳が分からなかった。



「…素人は、これ以上、首を突っ込むな。イナは、大丈夫だ。心配いらない。…やつらの狙いは、会話の内容から察しはついた。」


「さっきから、なんの話をしているんだ!?…何故、イナは無事だと言い切れるんだ!?」


「…狙いは…ファルコーネ…ボスだ。…シバゥは、ファルコーネをおびき出す餌にイナを使おうとしている。」

「…なんだって…?」

「ボスは、用心深い方だ。又、警備も厳重で、そうそう近寄る事も出来ない。ただ、イナにだけは心を許し、警備も付けなかった事もある。だから、イナを使ってボスを狙っているんだ。ボスを殺ったとなれば、シバゥの知名度も、ぐっと上がる筈だ。…だが…ボスを狙うなど、許されない事だ。」



ジェニルは、そう言うと、部屋を出て言った。


チョンウォンは、呆然と立ち尽くしていた。


ふと、さっきまで、ジェニルが聞いていた盗聴器の内容が気になり、ジェニルがそのまま置いて行ったイヤホンを耳に押し当てた。


知らない声の男の声が聞こえてきた。


「…イナさん…貴方の協力がなければ、今回の私の計画は失敗に等しいのです。ですから、なんとしても、私は、貴方を味方に引き込まなければならない。…分かりますよね…?」

「…どうするつもりだ…?」

「貴方は、とても友情に厚い方だ。大切な人も沢山、いらっしゃる。しかし…それがネックになるでしょう。…賢い貴方なら、この意味が、理解していただけるでしょう…?」

「…言いたい事はそれだけか…?」



イナは、ニヤリと笑い、聞き返した。

驚いたのは、シバゥだった。



「…随分と余裕そうですが…何故なんです?」



シバゥは、当惑した。何故なら彼の思い描いていた態度とは、イナは120%違った態度を示したからだ。



…何故なんだ…?



シバゥは、首を傾げた。



「…俺が何故、驚かないのか…気になるか…?」


イナが、そう言うと、シバゥは、ほくそ笑んだ。



「貴方が何をしようとしてるか分からないが、はったりでしょう…?」



シバゥの言葉に、イナは、笑った。



「分からないのか?…あんたは、…手に負えないものを手に入れようとしてるんだ。」



イナの言葉に、シバゥは、反論した。



「何を言う。私の計画はいつだって、完璧だ。」

「…あんたの狙いは、バレバレだ。俺とファルコーネの関係を知っていると聞いて、ピンと来た。…あんたは、終わりだ…。」



イナは、付けていた盗聴器を外してみせた。


「『情報がすべてだ』と、あんたは言った。まさに、その通り。…ファルコーネは、すでにあんたの不穏な動きを、掴んでいた。…必要なのは、証拠だった。…あんたは、たった今、その証拠を積んだんだ!!今ごろ、本拠地はおろか、支部もすべて壊滅状態だろう。」

「馬鹿な…!」

「馬鹿はあんただ。欲をかきすぎて、まるで、廻りが見えていない。だから、足元がすくわれるんだ。…ファルコーネが、何故、畏れられているか、あんたは知らなすぎる。…相手の手の内も知らずに、あんたは、戦う前にオールインしたんだ。…分かるか!?」



愕然とした表情のシバゥを余所にイナは、部屋から出て行った。


この後のシバゥ達の運命がどうなるか、ファルコーネの下でボスの為に働いた事があるイナには、簡単に予想がついた。


愕然と肩を落とすシバゥを横目に、入口に立っていた大男達を軽く片付けて、イナは、部屋を静かに出た。

イナがビルから出てくると、チェスと偶然出くわした。




「…イナ…。」




チェスは、イナを見るなり言った。

イナは、チェスがいない間の出来事をチェスが知った時の事を思うと胸が痛んだ——。










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第44話 一人じゃない










チョンエは、涙を浮かべて笑っていた。
その横で、顔には出ていないが、ナイーブなテジュンは、心が激しく傷ついていた。


「楽しそうだな…。」

その声の方に、振り向くとイナが立っていた。

「イナ!…どうしたんだ?仕事は?」

テジュンが、そういうと、イナは、言った。

「…ちょっとな。…ここに来れば、チェスに会えるかと思ったんだが…。」

「…イナも、チェスに用があるのか?」
「…も…って?…テジュンもか…?」

イナは、驚いたように聞き返した。

「…ああ…。昨日、チェスが気になる事を言い出すから、真意を聞こうと思ってね…。」
「…気になる事…?」
「ああ。…『組織を潰す方法をサツなら知ってか?』…ってね。」

テジュンが、そういうと、チョンエも
「…あたし…『一緒に屋台やるか?』…って、言われた…。」
と、話した。


…やはり、そうか…。


イナ達の中で、疑惑が確信へと変わっていった。


「…ところで、イナは…?…何があったの?」

チョンエは、そういうとイナを見た。

「…いや…。何もない。虫の知らせ…かな…?」

イナは、そう答えた。
チェスの身に危険が迫っているかもしれないとは、イナは、チョンエに告げる事が出来なかった。
それどころか、チョンエの身も危ないと知れば、テジュンも黙ってはいないだろう。


「…チェスが、何処にいるか知らないか…?」

イナが、聞くと
「知らないわ。いつも、この時間には来るもの。…今日は、どうしたのかしら…?」
と、チョンエは、ふと、気付いたように答えた。


「…そうか…。…わかった。じゃあな。」

イナは、そう言うとイナは、歩きだした。

…会えるかどうかわからないが…

…会社に行ってみよう…


イナが、歩いていると、後から車のクラクションが聞こえた。

イナが振り返ると、テジュンが、車の運転席の窓から身を乗り出していた。

「イナ。乗れよ。チェスの会社に行くんだろ?俺は、休みだから、トコトン、付き合うぜ。」

テジュンは、そう言った。

イナは、テジュンを巻き込んでしまうのではないかと、躊躇していたが、それを見透かしたように、更にテジュンは言った。

「…相変わらず、水臭い奴だ!…また、一人で何かしようとしてるだろ?…いいから乗れよ!」

テジュンの言葉に、イナは、吹っ切れたように笑うと、車に乗った。

「…よく俺の考えてる事が分かったな…?」

イナが、そう言うと、テジュンは、
「…なんの!現役刑事のカンをなめるなよ!」
と、笑顔で答えた。

「…きっと、後悔するぞ…?」
「…イナ一人で危険な目に合わす訳にはいかねぇよ。…なーに、現役刑事のパク・テジュン様がついてるんだ!心配いらねぇよ!」

何処までも陽気に答えるテジュンだった。

イナは、嬉しい気持ちと不安な気持ちに包まれていた。



「…ところで、…この車はどうしたんだ?今日、休みなんだろう…?」

イナの問い掛けに、テジュンは、今頃、気付いたようであった。

「あっ!…うっかり覆面、(パトカー)乗って来ちまった!…また、始末書が増えちまったな。…ま、いっか…。3枚が4枚になったからって大した問題じゃないさ!」
テジュンは、無理やり、自分を励ましていた。




「スヨンさん。」
その頃、スヨンは、チョンウォンにロビーで呼び止められていた。
「はい。なんでしょう?」
振り返ったスヨンの顔を見て、チョンウォンは、
「今日は…随分と幸せそうだね?」
と、言った。

「えっ!?…どうして分かるんですか…?」
驚いたように、スヨンは尋ねた。

「顔に書いてあるよ。…ところで、イナは…?」
「はい。朝、一緒に来て…入口の手前で、ジェニルさんが待っていたので、私は先に入りました。…まだ、来てないんですか…?」

スヨンは、心配そうに尋ねた。
しかし、チョンウォンは
「ずっと一緒だったのかい?」
と、スヨンの心配とは別の事を言ってきた。

「…えっ!?…朝、一緒に来ただけです!」

スヨンは、驚いたように、慌て答えた。
すると、チョンウォンは、スヨンの狼狽ぶりに、ふっと笑みをこぼした。


「何を慌ててるの?…僕は、一晩一緒にいたの?…とは聞いてないでしょ?」

それを聞くと、スヨンは、顔を赤らめた。

「…スヨンさん、今、幸せなんだね。…良かった…。」

チョンウォンは、瞳に憂いを含んでいた。
スヨンは、嬉しそうに頷いた。

「…ところで、急な話なんだが、今日、今からここに行けるかい?」

チョンウォンは、スヨンに、一枚の地図を手渡した。

「デモの予行練習の場所だ。湖の大きさも、立地条件もそれほど変わらない。…明日の結果を貰う前に、すぐデモの日時を提案できるように、テストしておいて欲しいんだ…。行けるかな…?」

「はい。…大丈夫です…。」

スヨンは、そう答えると、一礼して、プロジェクトルームに戻って行った。

立ち去るスヨンの後ろ姿が見えなくなると、チョンウォンは、ジェニルの姿を探した。



…僕に何も言わないで…
…イナは、一体、何をしに出かけたんだ…?




チョンウォンは、嫌な胸騒ぎを覚えた。


チョンウォンが辺りをキョロキョロと見回していると
「…誰を探してる…?」
と、声を掛けられた。

振り返ると、ジェニルがいた。


「…イナが何処に行ったか知ってるんだろう…?」

チョンウォンは、ツカツカとジェニルに歩み寄った。

すると、ジェニルは、突き放すような口調で言った。

「…知ってどうする?…知った処で、お前に何ができるんだ…?」
「…それは、どういう意味だ…!?」

チョンウォンには、ジェニルの言いたい事の真意が分からなかった。
ただ、分かるのは、イナが、又、危険な何かに関係しようとしているって事だ。

チョンウォンは、ジェニルの襟首を掴んだ。

「頼む!知ってるなら教えてくれ!イナは何をしようとしている!?イナを助けたいんだ!」

チョンウォンの懇願にジェニルは、
「…聞いたら…後悔するかもしれない。…むしろ、知らない方がいい事もある…。…それでも聞きたいのか?」
と、低いトーンで答えた。

「イナは…友達なんだ。…僕は、後悔なんかしない!」

チョンウォンは、強い意志を示した。



ジェニルは、ふっと笑みをこぼすと
「…本気なんだな…?」
と、念を押した。


チョンウォンが、大きく頷くと、ジェニルは、重い口を開いた。






その頃、スヨンは、テストのために、チョンウォンの指示した湖に来ていた。

地図を見ていたスヨンに、プロジェクトのメンバーが、声を掛けた。

「スヨンさん。準備出来ました。」
「ありがとう。…では、もう少し暗くなるまで待ちましょう。その前に、明るいうちに、動作の確認を通しでやってみましょう。もう一度、流れを確認します。まず、挨拶があって、…後方から花火が上がる…それを合図に、他の花火とライトを照らして…、ラストは…アレを離す…いいですね?皆さん、本番と同様に頑張って下さい。」

軽く一連の流れを確認の為にスヨンは、説明した。

「…では、動作の確認に移ります。…実際に今打ち上げる訳には行かないので、自分のパートの番になったら、何をするか言って下さい。…いいですね?」

スヨンは、そう言うと、メンバーの顔を見回した。

「…それでは、やってみましょう。…これが一回で出来たら暗くなるまで自由時間にしますから。…合図は、私が、そこで挨拶をしますから終わったら、そこから始めます。じゃあ、やりましょう!…配置について下さい。」

スヨンは、そう声をかけた。
明るい未来を予想させる張りのある声だった。






「…なんだって…!?…どうして…行かせたりしたんですか…?」

チョンウォンは、ジェニルの話を聞いてヨロヨロと壁に寄り掛かった。

「…知らない方がいい事もあるって事が分かっただろう…?…」

ジェニルは、冷静にチョンウォンに、そう語った。


「…ジェニルさんは…イナが心配じゃないんですか?何故、一人で行かせたりしたんです!?」

チョンウォンの言葉に、ジェニルの表情は、途端に険しくなった。

「もちろん、引き止めたさ。…だが…イナの決意を変える事が出来ないのは…分かっているだろう?イナが一人で行くのは、誰も巻き込みたくないからだ。…一人の方が相手を下手に刺激しなくて済む。…それが、イナの判断だ…。」

「…僕は…何も出来ないのか…?」

チョンウォンは、うなだれ、その場にへたりこんだ。


「…今は…神に祈ろう…。何かあれば…その時は、自分が行く。」

ジェニルは、そう言うと、遠い眼をしていた。




「イナ!ここか?」

ある一角のビルの手前でテジュンは、車を止めた。

「…テジュン。ありがとう。…ここで、待っていてくれ。」
「ここまで来て、何をいうんだ!?俺だって刑事の端くれだぞ!?」

「…だからだ…。…俺は、喧嘩をしに来た訳じゃない。話し合いにきたんだ。…下手に相手を刺激したくないんだ…。」

イナが、そう言うと、テジュンは、唇を噛んだ。

「…くそぅ…。…俺は、足手まとい…って訳か…。」

「…いや…。そうじゃない。俺が、中に入って…もしもそのまま、戻って来れなかったら…その時は…任せるよ…。」

イナは、そう言うと、笑みを見せた。


「…じゃ…行って来る…。」

イナは、助手席から降りるとジャケットに手を通した。


一度も振り返りもせず、イナは、ビルの中へ吸い込まれるかのように入って行った…。









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