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 で、あそこには酔っ払いがすんでいて、子供をいじめるんだ。
ゴリラもいる。ゴリラは、その近くを通る女のひとをさらっていくんだよ。


 小学校低学年の頃、4つ年上の近所の兄ちゃんに聞いた話の一部。
日本人会のイベントがあり、大人が活動しているとき外で遊んでいたオレらを
集めて、現在は歯科技工士になっている兄ちゃんに聞かされた物語がこれだ。
15人ぐらいの子供はいただろうか。みんなで真剣に聞いた。これは、兄が
たまに釣りに行っていた小川の奥にある、オレらがボスケ(bosque - 森)と
よんでいた場所のことだ。木が生い茂っている、地主がいるのかどうかも
当時のオレらには良く判らない一帯だった。

 ゴリラはいないだろう、さすがにそれは作り話だ。
そうは思っていても、酔っ払いの方はもしかしたらいるかも知れない。
創作と現実が交錯するなかでの好奇心。それじゃ、酔っ払いを見にいこう。
と、後日友達6~7人で確認することにした。探検だ。
酔っ払いがもし現れたら、みんなで逃げよう。


 小川まで行く。
流れが細いところを探し、勢いをつけてひょいと飛び越える。
ジャンプしきれないでハマったヤツらを笑いながら進む。
その先が、酔っ払いがいるかも知れないボスケだ。

 ボスケに入ると、見たことがない白くデカいキノコが生えている。
気温がぐっと下がったような気がする。ドキドキしながら歩いていると、
地面がどんどん抜かるんでくる。まるで湿地帯だ。木がたくさん生えているので
遠くまで見渡せないが、酔っ払いは見当たらない。そのうち、薄暗くなってきた。
何故かテンションが上がってきて、バカな話をしながらしばらく木々のあいだを
ぐちゃぐちゃと進むと、雨が降ってきた。雨具などもちろん準備をしていない
オレらは、当り前のようにそれを浴びるしかなかった。

 結局、酔っ払いにもゴリラにも会うことはなかった。
雨の中、一番近くに住んでいるヤツの家まで走って帰る。ちょいとした距離だ。
そこで、泥だらけのオレらはみんなでお風呂を借り、わいわい騒ぎながら入った。
緊張が解けた瞬間だ。これがその日の一番の思い出。


 「スタンド・バイ・ミー」を初めて観たときに感じたのは、懐かしさだった。
周りのものすべてが大きく、恐ろしく、そして美しく感じられたあの頃。
今、同じところへ行っても、多分ただの散策。

 久しぶりに冒険でもしてみたい気分だ。   どんな?

                    つづく
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