サウジアラビア。
滅多に行けるところではないが、二回行く機会があった。
そのうち一回はラマダンの時期だった。
ラマダンとは「貧しいひとの気持ちをみんなで理解しよう」ということで、
陽が出ているあいだ、水ですら一切口にしない期間のことである。
日中はかなり辛いと思う。
が、しかし陽が暮れると様子が一変。
みんなぞろぞろと、サンローランなどの民族衣装が売られている
ショッピングセンターや、豚肉以外の肉(※注1)をたらふく食べられる
レストランなどに集まってくる。深夜になっても子供達は走り回っているし、
一夫零妻のヒゲ同士(※注2)が指を絡めながら手を繋いで、ルンルンと
散歩していたりする。
戦争などで夫を失った未亡人やその子供達ををリッチな人たちが金銭的に
面倒をみる、というところからスタートした一夫多妻の制度は、次第にその
趣旨から離れ、自分のための女性をたくさん娶るという風に変わって行った。
権力と精力の誇示にもなった。
最近は、一夫一妻というのも珍しくなくなったらしい。
外出中の女性はブルカをかぶり、男性と話をすることはできない。
だからといって彼女たちは虐げられている存在ではない。
「かかあ天下だよ」と嘆かれた。
「ワイフたちに秘密で、何人かの男性たちと借りているマンションが
あるんだ。これから集まるんだが、一緒に来てみる?」と聞かれた。
おっ、ミステリアス。そう思い、参加した。
購入した安い民族衣装を身にまとい、現地のひとに
「いる、いる」と言われるオレを含めたヒゲが8人ぐらい集まった。
絨毯が敷いてあり、座布団が散乱している部屋に通された。
壁にはテレビ。中央にテーブル。テーブルの周りにみんなで座る。
民族衣装は下の方がスカートみたいになっているので、小股で
座布団のところまで歩き、窮屈な胡座をかいた。
超甘いお菓子を食べながらブツに火を着け、みんなで
香ばしい煙を回し飲みする。
そのブツとは、現地でチチャとか、ハブリバブリと呼ばれている
水パイプだ。リンゴの皮を乾燥させたものにいろんな香り付けが
されている。プレーン、イチゴ、バニラなどだ。パイプを吸うと、
その煙が水の中をぶくぶくと通り、細いホース経由で口へと届く。
甘め。
壁のテレビで流れているのはサッカーゲーム。
みんな贔屓のチームがあったりして、熱いサッカー議論も交わされる。
アルコールが飲めない国の男たちの密かな息抜きだ。
ちなみにサウジにもノンアルコールビールはある。
とっても不味いしゅわしゅわっとした麦ジュースだった。
つづく
※注1:豚肉は汚れた肉。
日中のサウジアラビアは摂氏40度を超えることも珍しくない。
そんな環境で足の速い豚肉を食べて体調を崩すことは普通。
じゃあ食べないようにしよう、ということで「汚れた」肉に
なったのである。
※注2:誰かの紹介なしで女性に接することは犯罪である。
紹介してもらえる地位にいないヒゲたちは、自分たちで
くっついたりするのである。