大冒険と自由

テーマ:

私の小鳥は、みんなより羽根がはえそろうのが遅くて。

みんなと同じように飛び立つ練習ができない。

だから、羽根がはえそろうまでは、安全な私の手の中で守ろう。

「ぼく、みんなと一緒に飛ぶ練習がしたい」

と小鳥が言った。

「ぼくは、あと何枚、羽根がはえそろえば、みんなと飛ぶことができるというの?」

私は、あと何枚、小鳥の羽根がはえそろえば、安心して手の平を広げるつもりなのか?

 

息子が自分で決めたこと。

「中学校は普通クラスに行く。支援クラスは6年生で卒業する」

これは、私が一番避けたいと思っていたこと。

いつかは普通クラスへ移籍したい、けど中学校入学と同時の移籍は負担が大きすぎると思っていたから。

でも、息子はそれを選択した。

息子が普通クラスへ移籍できる準備ができていないことは、主治医にも学校の先生にも指摘があった。

 

羽根のはえそろわない息子、それでも飛びたいという息子。

今、私ができる最善とは何かを考えた。

実践をくり返し、経験と自信を積むことで不安を安心に変えることしかないと思った。

それは、卒業までの一か月前に支援クラスを卒業して、普通クラスでずっと過ごすことをさせたい。

そして、そのまま卒業すること。

この提案に、学校側は始め難色を示した。

通常発達の子でも卒業前は不安定になりやすいのに、こんなことをして息子が潰れてしまわないか、卒業前に学校に通えなくなるかもしれない、それが影響して中学校にも通えなくならないだろうかと学校は心配した。

学校と話し合いをして、もし学校が心配するようなことが起きた場合、全責任は私が負う約束で、このチャレンジに協力してもらうことになった。

 

チャレンジの日が近づくにつれ

「やっぱり、チャレンジをやめます!もし小鳥が地面に落ちたら、キツネやオオカミに見つかってしまうわ!もう少し私の手の中で育てます!」

と言いだしたい自分が何度も現れた。

だけど、チャレンジの日はやってきて。

私は手の平を開いた。

小鳥は、はえそろっていない羽根をはばたかせ飛び立った。

テイクオフは、ぎこちなく、危なっかしくて。

でも、すぐに自分の飛び方を見つけて、息子らしく飛び回った。

無理な力を入れることなく、息子の持っている羽根の飛び方を見つけた。

それは、とても誇らしげで。

ぎこちなくても息子の飛び回る姿は、大人が心配したことなんて、みんなくつがえしてくれた。

 

見事に卒業まで飛びきった。

「ぼく、本当は始め不安があったよ。でも、挑戦して良かった。頑張ってないよ。これで安心して中学校へ行ける」

と息子は言った。

チャレンジをやり切って、息子は中学校に向けて、大きな自信を手にした。

そして、私も息子の普通クラス進学に安心を得た。

 

卒業までのラスト一か月で、息子に何が起こるか、不安だったのは私の方で。

息子のこと以外にも、私が腹を決めなくてはいけないことがあって。

息子のチャレンジと私のチャレンジが同時期に重なって、切羽詰まっていた。

私の不安の影響を息子に及ぼさないように、自分の状態を整え続けた。

 

このチャレンジで学校と約束した、全責任を私が負うと覚悟したこと。

それは、私が決めて動いたことは、誰に頼るでもなく、何が起きても、責任を自分以外に転嫁しないこと、自分が生きていくすべての全責任を負う覚悟に繋がった。

 

腹を決めるまでは、重圧を感じたのに、覚悟してみると、時間に追われなくなって、好きな時間にやりたいことをして、好きなことを考えて実行する。

それは、おそろしくシンプル。

失敗も成功もなんでもOKで、結果なんてただの通過点に過ぎない。

それは、とても自由。

 

息子たちが持つ発達障害、その特性は私にも少なからずあって、この困難さを呪ったことはいくらでもある。

この困難さを肯定なんてできないと思っていた。

ポジティブを装って、キレイごとを並べていた。

 

でも、今は違う。

困難さをもつ息子たちと泣いて、笑って、怒って、戦って、大きな感動の冒険を共にして。

そして私は救われて、自由を手にしたのだ。

 

AD