『マイナス・ゼロ』 | 本だけ読んで暮らせたら

『マイナス・ゼロ』


『マイナス・ゼロ  改訂新版』   広瀬 正/著、  集英社文庫・広瀬正小説全集1 (2008)


名作の復刊だとか。


やっぱり、物語の舞台が日本(東京)で、しかも日本語プロパーの作品はサクサク読めてイイね。

タイム・トラベルものは、少々めんどくさい理屈やプロットが捏ねられる場合があるんだけど、この作品もそうなんだけど、海外モノに比べて俄然判りやすい。

時代背景は違うものの、物語の舞台となっている場所の土地勘もアルし、登場人物たち(日本人)の感覚も何となく分かるしね。


確か以前にも書いた覚えがあるが、こういうタイム・トラベルものっていうのは落とし処が肝心だと思う。その点、この作品のオチは合格。あの人が、実はアノ人で・・・といった所など、読み進めているうちに薄々は感づいていたが、最後がそこそこハッピーなのは良かった。

ただ、アノ巡査のその後がどうなったのか? が気になるところではある・・・。


物語本筋の少々入り組んだプロットもなかなかだったが、個人的には、太平洋戦争前の昭和初期の東京の街の風景の描写がすごく良かった。あの時代に生きていた人達の息遣いも感じられたし。