2008年06月25日(水)

『ザ・ロード』

テーマ:ミステリーとか
The Road (2006)
『ザ・ロード』  コーマック・マッカーシー/著、 黒原敏行/訳、 早川書房(2008)


最初の7、8ページを読んだだけで、とてつもない寂寥感に襲われた。

凄い舞台設定だ。そして、そんな世界に生きる人間を描く筆力もまた凄い。


舞台設定と言っても、著者がその舞台を明示的に表しているわけではない。読者が想像するのだ。だが、ほとんどの読者は、終末に向かっている世界を念頭に置くことになるはずだ。

モノクロームの世界。空からは灰混じりの雪が降り続く。太陽光が遮られ、一日のうち僅かな時間だけ薄い光が射し、ほんの少し気温が上昇する。だが、ほとんどの時間は暗く寒い。おそらくは核の冬。こんな世界になって数年、あるいは十年程度経過している・・・。

植物は枯れ、動物も死滅している。そんな世界だが、僅かに生き残った人間たちがいる。かつての住宅などに貯蔵・備蓄されていた保存食品を漁り、食い繋いでいる。だが、そんな食べ物も少なくなってきた。強者が弱者を、大人が子供を食う世界。

未来が閉ざされた世界。絶望に支配された世界。


そんな世界を旅する父と息子の物語。

少しでも生き残れる可能性が高い南の地を目指す2人。飢えに苦しみながら旅をする。父は、2人が生き残るため、用心深く、他人の目に付かないように歩を進める。それでも時には、他人の存在を感じることがある。そんなときには隠れ、逃げ、場合によっては銃で威嚇する。生き残るために、現実的に対処しようとする父。

世界が破滅した後に生まれた息子は、生命が溢れ、文明が栄えていた頃の世界を体験していない。父から聞いた話の中でのことしか知らない。終末世界に生きながらなお、息子は、他人を想い、他人のために涙する純真さを持つ。


読んでいる最中、この物語の結末が、父子の行く末が非常に気になった。こんな舞台設定の物語には悲惨な結末しか待ち受けていないのだろう、そう思っていた。

作者マッカーシーは、前作 『血と暴力の国』 と同じように、救いのない物語を淡々と描いているのだろうと思っていた。

違った。

長く苦しい2人の旅を250ページ読んだ後に待ち受ける結末・・・。目が潤んだ。

そうだよな、彼ら父子は、“火を運ぶもの”だもんな・・・。


今年一番の物語に出会った。

お薦めです。

コメント

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1 ■コーマック・マッカーシー

また、「なんだか怖い、虚しい話かな?」
と思いましたが、『今年一番の物語に出会った。』とあって、
ちょっとホッとしました。
nanikaさんのお薦めとあると、読んでみようかなと思います。


2 ■ザ・ロード

メモメモ(^O^)/

3 ■honyomi さま

この物語、最後の最後で揺さぶられました。
マッカーシーは、今後も外せない作家になりました。

4 ■しぇんしぇい様

読後の感想をお聞かせくださいね。

5 ■キター

お久しぶりです。
前作は、映画「ノーカントリー」かな?
この作家やばそう・・・
早速メモってます!

6 ■meisaikinokoさま

この作家、やばいです。
読んでみてください。

7 ■ああ、やっぱり…

新聞等の書評がみな絶賛なので、nanika さんならもう読まれているかも知れない、と確認にきました。
みなさんのコメントも含めて、背中を押されたような…。

8 ■ディックさま(ザ・ロード)

ラストもですが、途中もイイですよ、この作品。
マッカーシーという作家(翻訳家の方も含めて)は、特段難解な言葉を用いているわけでもなく、文章中に読点がないというのを除けば、非常にオーソドックスな文章であるにもかかわらず、不思議と響いてくる物語を描きますね。

9 ■火を運ぶもの

なぜか、こちらは一発でトラバが通りました…。
うーん、なんでだ。

「火を運ぶもの」。
ラスト、そう来るか~、という感じでした。
ある意味、これまでのマッカーシーらしくないのかもしれないけど、良かったですよね。
こちらも、映画化されるんですね。どんな映画になっているのかしら。

10 ■つな様(火を運ぶもの)

私が今まで読んだマッカーシーは全て良かったです。この作家の作品は今後も文句無く読んでしまいます。
「三部作」のうちの他の2作が文庫になってくれないかな~って思ってるんですけど・・・。
映画も、DVDになったら観ようかなと思います。

11 ■無題

こういう物語だろうな、と予想していたとおりでした。そういう意味では新味はありませんが、やはりこの人なりに徹底した描き方ですね。読むのがつらくなってきます。

12 ■ディックさま

>予想していたとおりでした。

私は、この作家の今までの描き方からはチョット違っていて意外でした。
最後まで淡々としたまま終わるのかと思っていたら、ラストで引っ繰り返された感じを強く持ちました。他の作家なら予想できたかもしれませんが、マッカーシー・フォーマットとしては新しいものであるように思いました。私の想い込みが強すぎるという気がしなくもないですが、それだけに、ラストにはやられました。

13 ■無題

つな さんも、nanika さんも、ラストをプラスに受け取っていらっしゃるんですよね。ぼくは必ずしもそうとは受け取らなかったのです。

14 ■ディック様(ザ・ロード)

どちらとも採れる結末。読み人次第。そういうのもイイです。マッカーシーが描いたのなら尚更です。(^-^)/

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