2014年08月17日(日)

『整形前夜』

テーマ:エッセイ・随筆とか

『整形前夜』  穂村弘/著、 講談社文庫(2012)



緩やかで,柔らかで,ぬく~いエッセイ集・・・・・の様相を呈している。


多くの読者が多少なりとも日常の生活や社会の仕組みや他人との付き合いに対して違和感を感じることがある。自分だけが違うんだろうか?? という感覚。

そんな,何となく感じている読者の想いを,ホムラは巧く表すことができる。だから,ホムラ・エッセイは受けるのだろう。


だが,ところどころ,意地の悪い視点から世の中を見ている著者が浮かび上がる文章がある。

一般読者が思ってもみなかった,ホムラ独自の感覚を披露する文章がある。

そんな文章には,“社会に上手に溶け込めない”と自らを評しながら,実は社会に溶け込みたいなどと全然思っちゃいない(ように見受けられる)ホムラが垣間見える。

そんな文章がイイ。


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2014年08月16日(土)

『ドキュメント豪雨災害』

テーマ:自然科学とか

職業柄,防災に関わる専門家の方々から話を聞く機会があるが,大抵の方達は「最近,気象の局所的異常の頻度・規模が増大している」と思っているようだ。


それが地球温暖化によるものか否かはどもかく,古今,震災と豪雨被害は日本人の誰もが気に掛けていなければならないことだろう・・・。




『ドキュメント 豪雨災害――そのとき人は何を見るか』 稲泉連/著, 岩波新書(2014)



2011年9月4日。東日本大震災の半年後,台風12号による豪雨に襲われた紀伊半島。

この豪雨災害によって100人以上の方が亡くなっている。

山は深層崩壊し,土石流は街や人を流し,川を塞ぎ堰止湖を出現させる。堰止湖の決壊の危険性は高まる。災害の爪痕は長期にわたって彼の地に暮らしていた人々の状況を変えてゆく。。。


本書は,その時,その場所にいて,その豪雨災害を体験した人たちへのインタビューを中心にして,台風12号による災害がどのようなものだったのかを記している。

このような災害ドキュメンタリー本にお目にかかることは少ない。貴重な内容の本だと思う。



職業柄,地震が起こった後,その都度,震災などに関する調査・分析報告書が回ってくるが,それらはいずれも専門家が専門家のために書いたものだ。そのような災害調査報告書は,各調査機関や企業のWEB上にPDFファイルとして収納されている場合もあるが,一般の人たちがそのようなものを時間を掛けて探し出すとは思えない。

日常からそういったものに触れている専門家・技術者と,災害後の一時期だけ興味・関心をもつ専門外の人達の間の防災リテラシー格差は大きいと感じている。


リテラシー格差をすこしでも小さくするためには,本書が採った新書や文庫形体にして,専門用語を排した簡易的な表現で記した災害報告書をコトある毎に世に出すのも必要な気がする。

売れる売れないは別として・・・。


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2014年08月15日(金)

『無双の花』

テーマ:ミステリーとか

『無双の花』  葉室麟/著, 文春文庫(2014)


九州への親和を抱く時代小説作家ハムロの作品。


主人公は筑後柳川の大名,立花宗茂。

ゲーム「戦国無双」では使い勝手の良いキャラで,私のお気に入りだった。

薄っぺらい設定のゲーム・キャラと比べること自体が無意味なのだろうが,本作のハムロ創作キャラはかなり魅力的だ。

主人公:宗茂はもとより,宗茂の正妻:誾千代も,後妻も,後後妻も,女性キャラがなんともイイ。


ブレない信念,その信念に基づく言動。おのれに強いからこそ,他者に優しくいられる。そんな男を描く本邦の時代小説は,海の向こうのハードボイルド小説と同類だ。

ハムロはハードボイルド作家なのだ。


関ヶ原での戦の際に西軍に付いたにもかかわらず,そのぶれない心情を徳川から認められ,領地に戻ることのできた唯一の武将。時代小説,キャラ小説としてのオモシロさも然ることながら,そんなチョットした歴史的事実を知ることができたのも収穫。

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2014年08月14日(木)

『アホウドリの糞でできた国』

テーマ:なんでも読んでみよう

20分もあれば読めちゃう本。

仙台で飲んで,ほろ酔いで新幹線に乗る前に,駅構内の書店で目に付いて衝動買いしたモノ。


『アホウドリの糞でできた国』  吉田靖/文, 寄藤文平/絵, アスペクト文庫(2014)

赤道付近の太平洋上に浮かぶ島国,ナウル共和国。

サンゴ礁に来たアホウドリの糞によってできた島。このアホウドリの糞が長年にわたって堆積した岩は燐鉱石という資源になった。


第二次世界大戦後,占領から解放され独立したナウル共和国政府は,この燐鉱石を採掘して世界中に売ることにした。

莫大な富を得た共和国。ナウル国民は税金なし,教育費や社会保障費なし,の生活が保障されることになった。

あげくの果てに食事はすべて外食。国外からお手伝いさんを雇い,共和国民は誰も働かなくなった。それでも国は富んでいる。


だが,鉱物資源には限りがある。そりゃそうだ。

しかも,枯渇は早くやってきた。20世紀中に。


国家の危機に直面したナウルの人々はどうしたか・・・。


日本人からみたら,行き当たりばったりの付け焼刃的な対処しかしない・・・。

そんな国はどうなるのか? 働くことを忘れ,怠け者しかいないナウルの人々はどうなるのか??


↑ かようなことが,ユル~イ調子の文章と絵で描かれている。そんな文調や画体からなのか,ナウルの人々には深刻さや悲壮さが窺えない。

ケセラ・セラ, レット・イット・ビー(ゴー),なるようになるさ,的な暮らしもイイのかも。。。



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2014年08月12日(火)

『春風のスネグラチカ』

テーマ:マンガとか

『春風のスネグラチカ』  沙村広明/著, 太田出版(2014)


沙村広明画伯の単行本最新作。


帝政ロシアの最後,ロマノフ王朝の滅亡をネタにした歴史改変ロマン。

車椅子の少女と彼女に仕える隻眼の青年の物語。


あいかわらず女性の描き方が巧い。画としてもキャラとしても。


学生時代,私の頭の中にあった情報の6~8割はマンガを切っ掛けにして獲得したものだった。だから,何事も断片的な情報しかもっていない・・・。

このマンガもまた,帝政ロシアの滅亡に纏わることを知りたいと思わせるトリガーになる・・・ような気がする。


お薦めです。

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2014年08月11日(月)

『つながる脳』

テーマ:自然科学とか
だいぶ前,1カ月くらい前? に読んだもの。

『つながる脳』  藤井直敬/著, 新潮文庫(2014)


脳科学関連本。


脳科学者自らが,脳科学の行き詰まりに対する率直な気持ちを書いている。


自分以外の外部とのつながりを指向する(社会的な)脳の反応に関する新しい実験,考察を試みている著者に新しさを感じた。


この学者さんの新作にはアンテナを張っておこう。

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2014年08月10日(日)

『リスクにあなたは騙される』

テーマ:自然科学とか
『リスクにあなたは騙される』  ダン・ガードナー/著, 田淵健太/訳, ハヤカワ文庫(2014)


名著。

読むべき1冊。


私自身の独断的所感も少々交えて,主だったところを抜き出しておく。



■ヒトは,客観的(理性的な)なリスク認知がなかなかできない。



■感情が先に立つのはヒトの進化の過程で生じたこと。感情は理性とは異なり,意識的に認識することなく働き,予感や直感として,あるいは不安や心配や恐れなどの情動として経験する瞬間判断の源泉である。



■こうした感情・情動による判断システムは,最近数百年のテクノロジーによって変容した現代世界を生きる上で生み出されたものではない。遊動性の集団の中で暮らし,動物を狩ったり植物を採取したりすることによって生き延びなければならなかった環境で(数万年の間で)鍛えられてきた判断システムである。


感情による判断は,単純な経験則の適用である。その経験則とは,何かの例が簡単に思い出されればそれは一般的なものだと自動判定する。また,正しい答えがはっきりせず推測する場合,感情による判断は最も手近にある数字や最近聞いた数字に飛びつくと言われる。理性はそうした感情による判断を調整しようとするが,調整は不十分になりやすく,最終的な推定は最初に連想された値に偏ることになる。


ヒトは,落ち着いていて,冷静で,慎重に考えているときでさえ確率に目を向けているわけではない。理性的な訓練された判断だけが,確率を気に掛けるが,ほとんどのヒトは感情を修正するために理性を働かせる努力をすることに慣れていない。ヒトは自然に直観的判断に従う。


確実性が確率の判断に影響を及ぼす。100%から95%の変化は,65%から60%への変化よりもかなり大きな重みを持ち得る。世の中を動かす現実的判断の色合いは常にグレーであるが,白か黒かで考える傾向がある。


ヒトは,「数字」と「物語」に対して異なる反応を示す。統計上の抽象概念である数字には出来ないやり方でヒトの心を動かすことが出来るのが物語やイメージ。物語やイメージは,数字に欠落している感情に満ちている。


■「予防原則」は,リスク規制に関する実際的な助言を与える原則になっていない。「予防原則」は行動を取ることと取らないこと,その中間を禁じ,身動きのとれない状態にする。予防原則は本来必要とする措置そのものを禁じることになりかねない。


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