2013年11月30日(土)

『緑衣の女』

テーマ:ミステリーとか

『緑衣の女』 アーナルデュル・インドリダソン/著、柳沢由実子/訳、東京創元社(2013)


アイスランド、レイキャビク周辺を舞台とした警察小説。

シリーズもの。その2作目。ドメスティック・バイオレンスが主題の物語。


新興住宅地で建設中の住宅の地中から60~70年前の人骨が発見される場面から始まる。

数十年もの間封印されていた悲しくて残酷な境遇にあった家族の物語が、捜査官エーレンデュルによって明かされる・・・。

(メインプロットには関係ないが、この人骨発見の場面が実にえげつない・・・。)


捜査の対象となる家族・親子の物語がメイン・プロットとしてあり、それと並行して、主人公警官エーレンデュルが抱える親子関係がサブ・プロットとして存在する。


前作『湿地』 もそうだったが、この作家は事件背景を丹念に描く。事件当時の時代の雰囲気や社会情勢、その頃の人心がどうであったか・・・。

人間の営みはそのようなことに影響される。だから、物語の背景を丁寧に語ることは、登場人物たちの存在や言動に説得力を与えることにつながる。

リアリティを得た登場人物たちによる物語は、フィクションでありながらも現実世界を生きる読者に何かを残す。読後わずか、たとえ一時的であっても、考えさせる・考えるべき事柄を与える。
この作家の作品は、そういった部類の物語だ。

お薦めです。


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2013年11月27日(水)

『縮みゆく男』

テーマ:ミステリーとか

『縮みゆく男』  リチャード・マシスン/著、 本間有/訳、 扶桑社ミステリー(2013)

1956年の作品。
主人公の男が放射能汚染と殺虫剤の影響で、日に日に身長が縮んで行く奇病に侵される。

仕事にも就けなくなり、世間の好奇な目に晒され、やがて妻とは不和になり・・・、幼い娘よりも小さくなってきてからは、様々な事件に巻き込まれることになる・・・。


フトした出来事から地下の物置小屋に閉じ込められたときは既に自力では脱出できないまでの身長になっていた。なんとか物置小屋でのサバイバルが可能になってきても、身長は徐々に縮む。小さくなるごとに問題が生じる。昆虫サイズになってからは冒険と戦いの日々が続く。

やがて・・・・・。


物語の初めから終わりまで、男は事あるごとに孤独と絶望に苛まれる。問題を解決した後、ほんのわずかな希望を見い出す瞬間も訪れるが、新たな問題の発生とともにまた孤独と絶望が・・・。

そして、物語の結末で男が見い出すもの、それは・・・・・・。



男の身長の縮む原因となったのが放射能ってところが、1956年作の時代性を感じさせるが、それ以外はまったく古さを感じない。

とにかく読ませる。

たたみ掛ける展開と、その展開に応じて変化する縮みゆく男の心理の描写。そのストーリーテリングは素晴らしい。


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2013年11月26日(火)

『荷風随筆集(上)』

テーマ:エッセイ・随筆とか

『荷風随筆集 (上) 日和下駄』 永井荷風/著、 野口富士男/編、 岩波文庫(1986)


荷風随筆集は上下2巻。この上巻は東京という都市(論)を描いたエッセイの集まり。

明治から昭和30年代までの東京の移り変わりの様が描かれている。


父親が実業家で金持ちだったからだろう。明治の世にあって、若き荷風は自費でアメリカとヨーロッパに行っている。

当時、外国に行くことのできたのは政府関係者や官費留学生など、使命を持って(持たされて)いた人がほとんどであったことだろう。そんな時代にあって、比較的自由気ままに外国の世情や文化を体験した人間は稀であったろうと思う。


西洋の文化・文明に触れ、それを称賛する荷風。

一方、明治文明開化によって江戸期の街並み・様相が大きく変貌してゆく(西洋化する)東京を、そして、その東京を変えようとする人情を嘆く荷風。

西洋の真似をしようとしても、しきれるものではない。風土や歴史などに依存せざるを得ない。そのことを良く判っていた荷風。

それでも、東京下町の裏道や横道に、人々の何気ない所作や言動に、未だ残る江戸文化・風情の残影を愛でる荷風。

社会や文明に対する諦念と、文化や芸術に対する気概。乾いていながら憂う気持ち。何事にも背反する二重性を持つ人格であったように思える。

そして、何故だかは良く判らないが、この作品だけに限らないが、いくつかの小説・随筆を読んでみると、荷風さん自身にハードボイルドっ気を感じる。



そしてそして、なにはともあれ、この文庫を持って東京散歩に行ってみたくなる。荷風さんの時代の東京と今の東京を比べてみたくなる。


読者にいろんな感情を表出させてくれるいい作品だなァ、としみじみ思う。

お薦めです。


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2013年11月25日(月)

『ハヤカワ・ステリマガジンNo.693 ポケミス60周年記念特大号』

テーマ:ミステリーとか

ミステリマガジン 2013年 11月号 [雑誌]/早川書房


「ポケミス60周年記念特大号」ってのに釣られてしまった。

ポケミス全作品のタイトルや概要が載ってる。カタログとして使うものだろうな。

まさかの2300円。


読みどころは、同じ1936年生まれの小鷹信光、権田萬治、仁賀克雄の3氏による鼎談。

ミステリ界の大御所たちによるブッチャケ話が実に面白い。


60周年記念で行われたポケミス全作品の特別展示会 も良かったが、3氏によるトーク・サロンのようなものが開催されていたら、料金を払ってでも聞きに行ってたのに・・・。


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2013年11月24日(日)

『夢幻諸島から』

テーマ:ファンタジー・SFとか

『夢幻諸島から』  クリストファー・プリースト/著、 古沢嘉通/訳、 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ(2013)


ドリーム・アーキペラゴ(=夢幻諸島)と呼ばれる仮想の惑星世界で繰り広げられる人間たちの所業を描いた短編物語の連作集。


各短編全体を通して、

●時間勾配のゆがみが原因で、精緻な地図の作成が困難な世界であること。

●国家は北の大陸に存在し、国家間の争いが絶えないこと。

●だが、物理的な戦争は南の大陸で行われていること。

●北と南の大陸の間の広大な海域にあるのが<夢幻諸島>であること。

●夢幻諸島は非戦闘区域であること。

・・・と、まァ、かような統一的な設定がなされている。


どの短編も何処かしら、何かしら関連している。

先に読んだ物語の謎が、数編後で読んだ物語で判明したり・・・。

その逆に、先に出てきた物語で語られたコトガラが、数十ページ後の物語の帰結であったり・・・。帰結が先に出てきて、原因が後に出てくるっていうね・・・。

つまり、物語の配列の順番とそれぞれの物語中で生じている時制が一致していない。


互いに少しづつ関連した物語が、時制の後先に拘らずに並べられている。それが、作品全体に不思議な雰囲気を与えている。

プリーストらしい幻想的な作品。


物語を深く味わうにはもう一度くらい読まないと・・・。

互いの物語の関連性に気づいていないことも結構ありそうだ・・・。


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2013年11月23日(土)

『流れとかたち』

テーマ:自然科学とか
御無沙汰だったブログ書き。
読み終わったままのが幾つかある(前の記事)。
・・・で、今夜から数日間、1冊ずつアップしていこうと思います。

『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』 エイドリアン・ベジャン/著、柴田裕之/訳、 紀伊國屋書店(2013)


少し前に話題になってた?


「すべてはより良く流れる形に進化する。生物、無生物を問わず、すべての形の進化は“コンストラクタル法則”にしたがう。」



紀伊國屋書店から出たポピュラー・サイエンスのベスト・ヒットと云えば、ドーキンスの『利己的な遺伝子』を思い出す。

はたして本書『流れとかたち』が、いまや進化生物学の古典ともなったドーキンス本に匹敵するような作品となるのか?(個人的には無理だと思うけど・・・。)


amazonレビューでもかなり高い評価がされているが・・・。


細かいところに引っ掛かった。

例えば、分岐構造一つをとっても、肺の気管支、木の枝、三角州の流線網、生物進化の系統樹などには違いがある。それらを一緒にして議論してもイイのだろうか?

著者は小さな違いに拘るなと何処かのページで言ってたようにも記憶してるが、小さな違いを無視することが、やがてこの理論に綻びをもたらしはしないかと・・・。

また、ボディ・デザインには大きさも関係するだろうと思われるが、サイズの有利/不利の法則がいま一つ明確にされていないようにも思った。それとも、流れ方の違いによって最適サイズも変わると云うことだっただろうか?


ともあれ、著者の云いたいことの概観は判った(ように思う)。

だが、30年前、ドーキンスを読んだ後のような昂揚感が訪れることはなかった。
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2013年11月23日(土)

読み終わった本

テーマ:メモランダム

サイエンス 「流れとかたち」

エッセイ  「荷風随筆集(上)」

SF     「夢幻諸島から」

ミステリ  「カルニヴィア 1 禁忌」  ← 10月に記事にしてた・・・。

SF     「縮みゆく男」
ミステリ  「緑衣の女」

雑誌    「ハヤカワ ミステリマガジンNo.693 ポケミス60周年記念特大号」

ミステリ  「イン・ザ・ブラッド」

マンガ   「鞄図書館 2巻」

SF     「地球の長い午後」

エッセイ  「花の大江戸風俗案内」

その他   「危機管理対応マニュアル」

エセイ   「いじわるな天使」

ミステリ  「ジャック・リッチーのあの手この手」

マンガ   「天の地脈 3巻」


どれも面白かった。

早く記事にしないと忘れてしまう・・・・・。


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